武田綾乃の『世界が青くなったら』とセットで考察したい映画だ。このお正月見た前作『スパイダーマン ノーウェイホーム』の続き。こんなインターバルで連続して新作が作られるって、なんだか昔の日本映画みたいだ。もちろんお安く作られた安直な映画ではなく、気合十分の大作である。それはわかっているけど、ヒットを見込んでどんどこ作るっていうところがなんだか安易で、もういいかげん、見るのをやめれば、と自分に言い聞かせてもいいのだけど、でも、ついつい見てしまう。まぁ、今回はこれがサム・ライミ作品だから見たのだが。
それにしてもさすがに食傷気味だ。サム・ライミらしい、と言えばまぁ、確かに「らしい」けど、ディズニー、マーベルの新作超大作映画なので、さすがに彼も自分の個性を抑えているようだ。そこは少し残念だ。ドクター・ストレンジ・ゾンビが出てきて、大暴れ(でも、ないけど)するなんていう展開は笑えたけど、描かれる「マッドネス」がなんだかお上品。ディズニー・テイストを意識したのかな。先日見たDCの(というか、ジェームズ・ガーンの)『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』と較べるとおとなしすぎてがっかりだ。破天荒で何でもありのはずのサム・ライミがメジャーの御用監督に成り下がったのか。暴れん坊将軍ジェームズ・ガーンを見た後では、この作品ではなんとも分が悪い。しかも『スパイダーマン ノーウェイホーム』であれだけ散々奇策を弄した後である。何をしても勝てないだろう。
マルチバース(まぁ、よくあるパラレル・ワールドですな)世界を縦横に駆使して、ハイテンションで奇想天外なお話を見せる、という使命はなんとか全うした。だから、悪い映画ではない。今回はカンバーバッチがちゃんとタイトルロールで主役だけど、でも実質は前作(もちろん『ドクター・ストレンジ』ではなく『スパイダーマン ノーウェイホーム』ね。ややこしい)同様、脇役で、狂言回しに準じた。実質の主役はアメリカ・チャベス(ソーチー・ゴメス)で、彼女(写真の後ろ姿の少女)が前作のスパイダーマンの立ち位置に付く。
ゾンビが主役になり、暴れて、笑わせる映画にはできないだろうけど、昔のサム・ライミが懐かしい。また、低予算でいいから、荒唐無稽な笑える恐い映画を作って欲しい。そういうマッドネスが見たい。