なんだか、とても残念な映画。こういう爽やかな映画はめったにない、と、とても心地よく見てたのだけれど、終わり方がなんだかなぁ、である。あの少女は何だったのだろうか。そこの決着を曖昧にして、なんとなく終わるのは納得いかない。
主人公の大学生、純(橋本愛)は、いきなり訪ねてきて居座る高校生ハル(永野芽都)に導かれて、50年前のこの公園を旅することになる。これは公園を舞台にした映画。
井の頭公園100周年記念映画。50年前の父の遺品。オープンリールのテープに秘められた密かな恋物語。60年代の青春を、今の若者たちが探し出す。二つの時代をつないで、伝説の恋が失われた歌とともによみがえる。スケッチのような映画。瀬田なつき監督のフットワークの軽やかさに乗せられて、とてもささやかで不思議な世界の冒険が始まる。
ここでは、用意されたお話が大事なのではなく、この空気感がすべてなのだ。すばらしい緑が美しい公園のロケーションを最大限に生かして、なんだか、ふんわりとした夢のような話を楽しみたい。過去と現在が交錯して、3人の公園遊びを堪能した。桜の頃からスタートして再び桜の季節まで、橋本愛が自転車で走り抜けて行く姿が素敵だ。彼女と染谷将太が全く恋愛感情を持たないのもいい。こんなに長く一緒にいるのに、友だちのラインを踏み出さない。それは臆病だからではなく、そんな気はまるでないからだ。性を超えた友だちという立ち位置が心地よい。いいところはたくさんある。
それだけにあの決着の付け方がなんだか腑に落ちないのは、残念としか言いようがない。
これはお話を見せる映画ではないのだ。それだけに、あんなふうに、心地よさに水を差すのはなんだかなぁ、である。それにどうしてラストで作った歌を歌わせないのか。失われた歌をどう受け止めたらいいのか。さらには、ハルは何者なのか。突然いなくなってしまうし、50年前の父、というけどあまりに年が離れすぎているし。過去と今をつなぐ妖精のような存在なのだけど、映画全体のテイストにはそぐわない。