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映画・演劇のレビュー

『たぶん悪魔が』

2022-05-01 14:24:16 | 映画

ロベール・ブレッソンの未公開映画が、劇場公開されたので見てきた。僕が初めて見たブレッソンは『白夜』だ。あれはなんとも不思議な映画だった。お話はある。でも、何も起こらない。突き放したような描写。感情移入なんかできない。ただただ冷静に見守るだけ。でも、そこに心惹かれる。静かなスクリーンに釘付けされた。その後、遺作となった『ラルジャン』まで。作品自体は少ないけどリアルタイムですべて見た。といっても3本ほどだけど。やはり同じ印象だ。同時に彼の初期作品『スリ』や旧作を追う。こんな映画があるのかと思った。あれはもう40年以上前のことだ。20代になったばかりだった僕は魅了された。

久々に見るブレッソンは、やはり変わらなかった。だけど、今の僕はこの映画に心惹かれない。あの当時だったら、大絶賛したのかもしれない。でも、今の僕は醒めてしまう。自分がまるでこの映画に乗れていないことに驚く。自殺願望の主人公やその仲間たち。彼らに感情移入できないだけではなく、映画自体も、なんだかよくわからない。

そしてあの突き放したようなあっけないラストシーン。これはブレッソンらしさ全開の映画なのだろう。だがそれがなんだか、ただただよそよそしいばかりなのだ。頻繁に挿入されるニュース・フィルムもそうだ。あれは唐突すぎるし、お話と連動しない。描かれる環境破壊への警鐘はわかる。直接的すぎるそっけなさ、も。でも、それを憂う彼らの不安や憤りは、なんだか空々しい。見終えたとき、何を見たのか、と思った。97分、スクリーンを見ていたはずなのに、何も残らないことが衝撃的だった。

 

 


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