正直言ってこれには参った。戒田さんらしい作品なのだが、そのあまりの真直ぐさが、作品の力になりきれていない。象徴的なドラマのひとつひとつはとても興味深く、それらがひとつに重なっていくこともなく、別々の方向を向いたまま、この1本の作品の中に混在しているというのも、作者の意図どおりなのだから、問題はない。しかし、それが作品の力になっていかないところが、痛い。
目標となるものがなにもないただ広いばかりの芝生の上で彼らは立つ。ここは墓地だというのだが、墓石もない。だが、ここは確かに墓地でありここにはたくさんの死者が埋葬されているはずなのだ。そんな場所にやってきた彼らは、ここで死んでしまったものたちのことを考えていく。どんな人生を送り、こうして土に還っていったのかを。
四角に区切られた舞台には何ひとつ装置はない。ただ、そこには本物の芝生が敷き詰められてある。そして、例えばある男はここに立ちずっと動かないでいる。自分を1本の樹だと彼は言う。だから、動くことなくずっとここにある。例えば女は、ここに命を落としてしまったと言う。だから、みんなは動かないで、と言う。落し物を見つけるまで。私の命を踏み潰さないで。
この2人だけではなく、たくさんの人たちがここにはいる。そのひとりひとりのエピソードが細切れに綴られていく。ストーリーとしての大きな展開はない。しかも、同じ事が、何度となくヴァリエーションをつけて繰り返されていく。見ていてその単調さに、眠りに誘われてしまいそうになる。そんなことすら、実は計算の上で作られてあるのではないか、と思うくらいだ。
夢と現の境界線上で、見た幻としてこの作品は成立している。とても心地よく美しい作品だ。しかし、その心地よさが生ぬるい印象を与えることも事実だ。
きっと狙い通りに完璧に作られたこの作品に文句を付けるのは、お門違いであることは、充分承知に上で、それでももう少し《何か》を見せることは出来なかったのかと悔やまれる。
目標となるものがなにもないただ広いばかりの芝生の上で彼らは立つ。ここは墓地だというのだが、墓石もない。だが、ここは確かに墓地でありここにはたくさんの死者が埋葬されているはずなのだ。そんな場所にやってきた彼らは、ここで死んでしまったものたちのことを考えていく。どんな人生を送り、こうして土に還っていったのかを。
四角に区切られた舞台には何ひとつ装置はない。ただ、そこには本物の芝生が敷き詰められてある。そして、例えばある男はここに立ちずっと動かないでいる。自分を1本の樹だと彼は言う。だから、動くことなくずっとここにある。例えば女は、ここに命を落としてしまったと言う。だから、みんなは動かないで、と言う。落し物を見つけるまで。私の命を踏み潰さないで。
この2人だけではなく、たくさんの人たちがここにはいる。そのひとりひとりのエピソードが細切れに綴られていく。ストーリーとしての大きな展開はない。しかも、同じ事が、何度となくヴァリエーションをつけて繰り返されていく。見ていてその単調さに、眠りに誘われてしまいそうになる。そんなことすら、実は計算の上で作られてあるのではないか、と思うくらいだ。
夢と現の境界線上で、見た幻としてこの作品は成立している。とても心地よく美しい作品だ。しかし、その心地よさが生ぬるい印象を与えることも事実だ。
きっと狙い通りに完璧に作られたこの作品に文句を付けるのは、お門違いであることは、充分承知に上で、それでももう少し《何か》を見せることは出来なかったのかと悔やまれる。