岩井俊二監督久々の新作は全編アメリカロケで、アメリカ人キャストで撮られたアメリカ映画。でも、映画の製作母体は日本なのだろうけど。製作規模は小さくて、自主映画のようなスケールなのだが、自主映画の安っぽさはない。日本人キャストは蒼井優だけ。(後で調べると、アメリカではなく、カナダだった。)
別にどうということのない話なのだが、最初から最後まで、緊張感が貫く。岩井俊二とよく似た男が主人公を演じている。彼がヴァンパイア男で、女の血を吸う。というか、採取してから飲む、って感じ。でも、これはホラー映画ではない。どちらかというと、恋愛もの、って感じ。
孤独な青年が、孤独な女たちと心中を繰り返す。でも、先に女を死なせて、自分はちゃっかり生き残る。死体から血を摂取するためなのだ。だが、女たちを騙すという感じではなく、彼の行為はなんだか誠実そうに見える。ただ、自分は死なないけど。彼は認知症の母親の面倒を見ながら暮らす高校教師だ。なぜ、彼がヴァンパイアなのか、とか、何を求めているのかとか、そんなことに対する説明は一切ない。ただ、淡々と彼の行動を追いかけるだけだ。説明なんかいらない。映画にそんなものは必要としないだけの緊張感があるからだ。『I'M FLASH!』もこんなふうに作れていたなら、なんら文句はないのだが、なかなかそれは難しい。
彼がどうして女たちの血を求めるのか。ラストで蒼井優のために自分の血を与え、貧血になるとか、集団自殺から逃れて、一緒に生き延びた女から、私の血を飲んで貰っても構わない、と言われたり、とか、結構意外な展開もあるのだが、そこで、ストーリーが大きく動くのではなく、そんなこんなも含めて、静かに破局を迎えるのがいい。ヴァンパイアというものがちゃんと暗喩になっている。終盤の森のシーンがとても印象的だ。生き残った2人がただ彷徨い歩くだけなのだが、そこにこの映画全体のイメージが、ちゃんと集約されている。
これはきっと、ささやかな映画でしかないのだが、そんなささやかさがこの作品の魅力になっている。とてもいい映画だ。透明感のある撮影と、感情をむき出しにはしない役者たちの演技が相俟って、とても清冽な空気を醸し出す。
だが、待ちに待った岩井俊二の新作として、これを見たら、これでも、ちょっと物足りないことは事実なのだけど。
別にどうということのない話なのだが、最初から最後まで、緊張感が貫く。岩井俊二とよく似た男が主人公を演じている。彼がヴァンパイア男で、女の血を吸う。というか、採取してから飲む、って感じ。でも、これはホラー映画ではない。どちらかというと、恋愛もの、って感じ。
孤独な青年が、孤独な女たちと心中を繰り返す。でも、先に女を死なせて、自分はちゃっかり生き残る。死体から血を摂取するためなのだ。だが、女たちを騙すという感じではなく、彼の行為はなんだか誠実そうに見える。ただ、自分は死なないけど。彼は認知症の母親の面倒を見ながら暮らす高校教師だ。なぜ、彼がヴァンパイアなのか、とか、何を求めているのかとか、そんなことに対する説明は一切ない。ただ、淡々と彼の行動を追いかけるだけだ。説明なんかいらない。映画にそんなものは必要としないだけの緊張感があるからだ。『I'M FLASH!』もこんなふうに作れていたなら、なんら文句はないのだが、なかなかそれは難しい。
彼がどうして女たちの血を求めるのか。ラストで蒼井優のために自分の血を与え、貧血になるとか、集団自殺から逃れて、一緒に生き延びた女から、私の血を飲んで貰っても構わない、と言われたり、とか、結構意外な展開もあるのだが、そこで、ストーリーが大きく動くのではなく、そんなこんなも含めて、静かに破局を迎えるのがいい。ヴァンパイアというものがちゃんと暗喩になっている。終盤の森のシーンがとても印象的だ。生き残った2人がただ彷徨い歩くだけなのだが、そこにこの映画全体のイメージが、ちゃんと集約されている。
これはきっと、ささやかな映画でしかないのだが、そんなささやかさがこの作品の魅力になっている。とてもいい映画だ。透明感のある撮影と、感情をむき出しにはしない役者たちの演技が相俟って、とても清冽な空気を醸し出す。
だが、待ちに待った岩井俊二の新作として、これを見たら、これでも、ちょっと物足りないことは事実なのだけど。