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映画・演劇のレビュー

笑の内閣『非実在少女のるてちゃん』

2012-10-12 20:32:23 | 演劇
前作では「右翼」をテーマにして過激な芝居を作った高間さんが、今回は青少年健全育成条例をテーマにして作った作品を再演し、4都市巡業に挑んだ。今回もまた時事ネタで、笑わせるのだが、とてもよく出来ているし、完成度も高い。ツレウヨの浅薄なドラマと違って、テンポもよく、構成もとてもよく練られてある。勢いだけで作った前作とはアプローチは同じだが、時間のかけ方が違うからだろう。

 もともとこういうコメディータッチの芝居は、難しい。前作の失敗はバランスの悪さだ。政治的で危険な問題を扱いながら、本当は笑わせたいだけ、という不謹慎とも思われかねないアプローチは、大胆だが、作り方ひとつで、誤解を生む可能性もある。いろんな意味で難しい。だが、高間さんはそんなこと、恐れない。怖いもの知らずの押しの一手で挑戦する。

 漫画のアイドル、ノルテちゃんが、悪を正す、という単純なストーリーに、条例をごり押しで通そうとする政治家たちと、何の力もない高校生たちの戦いを重ねて見せる。終盤ノルテちゃんも高校生も出なくなって、条例擁護組と反対組の討論会になる。延々それを見せていく。さらには、ラストでいきなり、エヴァンゲリオンのラストのパロディーになる。話がどんどんスライドしていく。意外な展開というよりも、焦点がどんどんずれていくことの快感。高間さんの目指す演劇は過激な内容をいかにしておもしろく見せるのか、というエンタメである。へんなテーマとか独りよがりなメッセージなんかは一切ない。でも、つまらないギャグをしょぼく見せるのでもない。きちんとバカバカしい出来事を見せきるのだ。そういう姿勢がなんとも実に潔い。



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