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映画・演劇のレビュー

津村記久子『ポトスライムの舟』

2009-09-06 21:45:52 | その他
 今年上半期の芥川賞受賞作。ようやく読んだ。だいたいもう次の受賞作が決まり本も出てるのに、半年前の話題作を今頃読む。まぁ、小説は話題で読むもんではないから、かまわないでしょう。と、言うか、本当はこのくらい少し距離を置いた方がよい。それか誰も読まない前に読むとか。まぁ、ほんとうはどうでもいいことなのだが。

 それにしても、津村さんの小説はいつも同じだ。このタッチが好きになれない人もいるはず。ぜったいメジャーにはなれない作家だ。まぁ、小説は売れなくても、いいものはいいから、だなんて言うと、やっぱり問題あるかぁ。

 この貧乏臭さ。いつもただだらだらしてるだけ。生活に疲れてる。今回も同じだ。というか、今回の作品には今まで以上に彼女のエッセンスがぎっしり詰まってる。仕事をやめるまでを描く『十二月の窓辺』。会社での陰湿ないじめ。卑屈になり気持ちが鬱になる主人公が描かれる。『ポトスライムの舟』はOLの仕事を辞めてから、工場で働く主人公が描かれる。彼女と彼女の3人の仲間たち。それぞれの今を背景にして描かれる。毎日のなんでもない日々のスケッチだ。本当になんにもない。これで小説だ、なんてよく言えたものだ、とか言いたくなるくらいだ。だが、ここまでさりげなくどうでもいいことを自然体で書けるなんて、なかなか出来ることではない。ピースボードの世界一周旅行168万円(くらい、本を見て確認してない)のポスター。どこにでも張ってあるあれである。それを見て1年間で168万を溜めて世界一周をしようと夢見る。まぁ、半分以上本気ではない。だが、そう思うことが生活の張りになるそうだ。母親と2人暮らし。築30年(くらい)のもうかなりガタがきた家。将来のことなんか、わからない。ただ、今を暮らしているだけ。

 悪い小説とは思わないが、なんだか読んでいて暗い気分にさせられる。それは彼女の小説を読んでいたらいつもそんな気分にさせられる。自閉的で、なんの展開もない。ダラダラ書かれた日常。そこがいいのかもしれないが、なんだかなぁ、とも思う。

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