こんなお芝居を見るのは初めてだ。何が初めてかというと、こんな「恋愛演劇」が、である。ふつうなら、絶対にここまではしない。どこかテレてしまって、どこかに何か他の物を入れてしまう。ここまでやれないし、やらない。でも、上野友之さんはそうはしない。これは最初から最後までやる。それだけやる。だからこれは純度100パーセントの恋愛劇なのだ。
ここに登場する人たちは恋愛以外何もしないし、考えない。仕事をしていても、恋愛のことを考えている。そんなバカな話はない。だが、彼はそんなバカを実現してしまった。しかも、それはふざけているのではない。大真面目だ。
人生のすべては恋愛で出来ている、とでも言わんばかりの勢いだ。で、それが見ていて嘘くさいか、というと、そうではない。なんだか潔いくらいに心地よい。こんなのもありだ、と思わせる。そこにリアリティを感じさせるのだから、恐れ入る。
2024年から始まる。そして、2014年、2004年という3つの時間が交錯する。彼と彼女の物語だ。そこに、彼を好きになる女の子、彼女が好きな3人の男女が絡んでくる。さらにはその周辺の人たちもまた彼らのドラマを彩る。3つの時間のそれぞれの彼らを行き来して、お話は展開していく。2時間の長尺だが、まるで飽きさせない。ずっと彼らの恋物語だけしか描かれないのに、である。驚きの1作だ。