今年もNGRが大阪城公園でテント興行を行う。もう20年続く秋の風物詩だ。昨年に引き続き古代を舞台にした壮大なロマンを奏でる。エンタメ性を追求し、でも、そこで自分たちのテイストを大事にして、チープだけど豪華な芝居を目指す。大劇場で上演するようなスケールの大きい話を、数々の仕掛けを駆使して、見せるにもかかわらず、なんだか笑ってしまうような安っぽさがある。それはこの作品を貶すのではない。そこがNGRらしくていいと思うのだ。ある種の緩さが、作品のカラーやタッチになる。なかなか出来ないことだ。今まで彼らが築いてきた積み重ねがあるから可能なことであろう。
古代史を勉強する必要はない。当然、難しい芝居ではない。ただ目の前の出来事を楽しめばいい。ありきたりなお話でしかない。笑いを交えて、2時間楽しませてくれる。テーマとか、感動とか、そういうものとは無縁だ。でも確実に楽しめる。大事なことはそこである。しかも、いろんな意味で、ゆるゆるなので、途中から見ても、大丈夫だし、途中でおしゃべりしていても、いい。居眠りしても話についていける。緊張感はない。いい意味でTVドラマ的なのだ。でも、それは浦部さんが最初から意図したものではないか。
国造りにまつわる様々な謎を解明するとか、このお話を通して今まで見たことのない歴史の真実を描くとか、そんな大それたことではないのだ。ただウェルメイドのエンタメを目指す。心地よく2時間を過ごし、ああ、おもしろかった、と言えること。それだけ。でも、それって結構大変な作業なのだ。
ふたつの時間が並行して描かれるのだが、現代のパートが弱い。そこでは妄想プロデュースのふたり(舵竜矢とあまのあきこ)が夫婦を演じる。書けない劇作家とその妻の日常生活を描くのだが、この部分がお話の大部分を占める本題である古代の物語とリンクしない。彼らのつつましい日常描写と、神話の世界の人々の壮大なロマンはひとつになることで、「生まれる」という意味が伝わるといいのだが、そこにまでは至らない。
ふたつの世界を自由自在に行き来するアマテラスとそのしもべの話が、二つの世界をどうつなぐのか、もう少し書きこんでもよかったのではないか。ヤマト(関住直子)が目指す世界と、彼が利用するハヤブサ(細川愛美)との関係も、もう少し書き込みが必要だ。全体的にお話が書き割り然としてしまって、だから、話自体に入り込めない。エンタメだから、この程度でいい、わけではない。反対にエンタメだからこそ、ちゃんと人間を描かなくてはならない。ふたつの世界、2組の男女の恋物語、それが全体とうまくつながればよかったのだが。
もちろん浦部さんはそんなことも重々承知の上だ。だが、あまりに欲張りすぎたなら作品としてのバランスを欠くことになる。その点を一番恐れたのだろう。だから、深入りはしない。大体、もともとは1時間45分のコンパクトな尺を目指したはずなのに、2時間になっているのだ。それだけでも、意図からずれている。各人の関係性や、掘り下げをしたなら、2時間半以上のものになる。それは、今回望んだものではない。
火や水という飛び道具、借景を利用したお決まりのエンディング、今回はなんと宙吊りもある。セットもどんどん変わるし、仕掛けはたくさんある。でも、それらがあまり作品の内容とは噛み合わない。わかりやすい話だからこそ、そこにうまく乗りかかって、説明がなくてもわかる部分ときちんと心情に寄り添って、泣かせる部分のバランスを保って、全体をまとめることが出来たならよかったのだが、今回はそこまでは至らないのが残念だ。
古代史を勉強する必要はない。当然、難しい芝居ではない。ただ目の前の出来事を楽しめばいい。ありきたりなお話でしかない。笑いを交えて、2時間楽しませてくれる。テーマとか、感動とか、そういうものとは無縁だ。でも確実に楽しめる。大事なことはそこである。しかも、いろんな意味で、ゆるゆるなので、途中から見ても、大丈夫だし、途中でおしゃべりしていても、いい。居眠りしても話についていける。緊張感はない。いい意味でTVドラマ的なのだ。でも、それは浦部さんが最初から意図したものではないか。
国造りにまつわる様々な謎を解明するとか、このお話を通して今まで見たことのない歴史の真実を描くとか、そんな大それたことではないのだ。ただウェルメイドのエンタメを目指す。心地よく2時間を過ごし、ああ、おもしろかった、と言えること。それだけ。でも、それって結構大変な作業なのだ。
ふたつの時間が並行して描かれるのだが、現代のパートが弱い。そこでは妄想プロデュースのふたり(舵竜矢とあまのあきこ)が夫婦を演じる。書けない劇作家とその妻の日常生活を描くのだが、この部分がお話の大部分を占める本題である古代の物語とリンクしない。彼らのつつましい日常描写と、神話の世界の人々の壮大なロマンはひとつになることで、「生まれる」という意味が伝わるといいのだが、そこにまでは至らない。
ふたつの世界を自由自在に行き来するアマテラスとそのしもべの話が、二つの世界をどうつなぐのか、もう少し書きこんでもよかったのではないか。ヤマト(関住直子)が目指す世界と、彼が利用するハヤブサ(細川愛美)との関係も、もう少し書き込みが必要だ。全体的にお話が書き割り然としてしまって、だから、話自体に入り込めない。エンタメだから、この程度でいい、わけではない。反対にエンタメだからこそ、ちゃんと人間を描かなくてはならない。ふたつの世界、2組の男女の恋物語、それが全体とうまくつながればよかったのだが。
もちろん浦部さんはそんなことも重々承知の上だ。だが、あまりに欲張りすぎたなら作品としてのバランスを欠くことになる。その点を一番恐れたのだろう。だから、深入りはしない。大体、もともとは1時間45分のコンパクトな尺を目指したはずなのに、2時間になっているのだ。それだけでも、意図からずれている。各人の関係性や、掘り下げをしたなら、2時間半以上のものになる。それは、今回望んだものではない。
火や水という飛び道具、借景を利用したお決まりのエンディング、今回はなんと宙吊りもある。セットもどんどん変わるし、仕掛けはたくさんある。でも、それらがあまり作品の内容とは噛み合わない。わかりやすい話だからこそ、そこにうまく乗りかかって、説明がなくてもわかる部分ときちんと心情に寄り添って、泣かせる部分のバランスを保って、全体をまとめることが出来たならよかったのだが、今回はそこまでは至らないのが残念だ。