習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『7月24日通りのクリスマス』

2006-11-06 22:20:38 | 映画
 思ったほど面白くない。それは当然かもしれないが、あの『電車男』のチームなら吉田修一をコメディーにするなんていうとんでもない企画を成立させれるかもしれない、と一瞬信じてしまったのだ。しかも、原作の精神は生かした形で映画化しようとする(まぁそれって、当たり前の事だが)なんて言葉も信じてしまった。しかし、結果的にはうまくいってない。だいたい吉田修一のどこをどう読んだらコメディーになるのか?疑うべきだった。

 まず笑いの装置が機能しない。もちろん僕にはそんなことどうでもいい。(笑いに来たのではないからね。)この仕掛けを通して、ヒロインの切ない気持ちがしっかりこちらの胸に届きさえすればいいのだ。それさえうまくいけば、ラストの絵に描いたようなハッピーエンドを幸福なものとして受け入れられ、これは思った通りの映画になる。なのに、中谷美紀がこんなにもキュートにヒロインを演じてるのにうまくいかない。村上正典は前作『電車男』とリバーシブルな映画としてこれを発想したようだが、あまりに安易すぎた。

 原因ははっきりしている。ヒロインの王子様への気持ちにリアリティーがなかっつたからだ。この子がどんな想いをしてあの男を愛してきたか、映画は、その1点に関しては一切嘘をついてはならない。ありえないような作り話と展開を平気で連打する強引さの中で綱渡りのように作り上げられた物語において、そこだけは信じられるように描かなくては成立しない映画なのだ。

 夢が現実になる奇跡を見せて欲しかった。長崎の街からリスボンの街に彼女を連れて行く瞬間の幸福、それが描けたらいい映画になったはずだ。実は中谷美紀を見てるだけでも幸せになれるが、彼女をこんなに可愛く撮ったのに映画がこれではもったいない。

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