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映画・演劇のレビュー

劇団往来『ナイル殺人事件』

2019-06-27 09:16:41 | 演劇

アガサ・クリスティーのミステリーを取り上げるのなら、なんでオリエント急行ではなく、ナイルなのだろうか。まず、そんなことを思った。映画化作品ではシドニー・ルメットによる『オリエント急行殺人事件』が一番有名だが、あの時の2本目として、この『ナイル殺人事件』が映画化されたように、数年前のリメイクの成功の後、今回もこのナイルが映画化される。だから、まずオリエント急行から、と思うのだが、でも、往来は『ナイル殺人事件』をまず取り上げる。舞台としてはナイルの壮大な風景を描けない以上、閉ざされた空間を舞台にするオリエント急行のほうが芝居向けではないか、と考えるのだがそうは思わないようだ。

この芝居はアガサ自身の脚色による戯曲らしい。なんと名探偵エルキュール・ポアロは登場しない。アガサは舞台化するにあたって、エンタメとしての、ミステリとしての側面よりも人間関係を前面に押し出したかったのだろうか。往来は当然絢爛豪華な大作仕立てで見せるのだけれど、作者の意図を組み込んで遊びを抑えて、きちんと人間関係を前面に押し出す。一癖も二癖もある乗客たちも絞り込んであるから、ストーリーもシンプル。2部構成2時間40分の大作というのはいつもの往来スタイル、それが今回は効果的。じっくり無理なく、見せていこうとする姿勢がしっかり伝わってくる。オリエント急行ではなく、ナイルでなくてはならないのは、豪華客船という空間で見せる華やかさだけではなく、このお話のもつ人間ドラマとしての側面もしっかり見せて、満足のいくエンタメとして仕上げるためだったのかもしれない。

何はともあれ、第50回記念公演にふさわしい往来のよさを十二分に生かした作品になっていたのがうれしい。

 

 

 


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