いったいここから何が始まるのだろうか、先の読めない展開がドキドキ感を高める。14歳の少女のひと夏の物語なのだけど、冒頭の小さな事件(夏休みの初日、クラブでチームメイトにケガをさせたことで、クラブを謹慎させられる)からスタートして、スケールの大きなお話へとシフトしていく。2人の少年との出会い、そこから壮大な冒険が始まるのだが、そんなお話が、よくあるパターンへとシフトしていかないのだ。彼女と一緒になって僕たちも驚きの連続のいざなわれるのが面白い。まったく知らない物語を見せてくれる。
ただ、終盤、ほとんど言葉のない世界で展開されていくクライマックスのスペクタクルが、なんだかよくわからないまま終息を迎えるのはいかがなものか。別に説明を求めているのではないけど、少し拍子抜けした。えっ? それで終わりですか、って感じ。もちろん、そこが意図するところなのかもしれないけど、それで「一番大切な約束は言葉では交わさない」というメッセージだから、とか言われても納得はしない。少なくとも僕は。少年と少女の旅の決着はどこか。そこを明確にしないと、映画は終われない気がするのだ。
少女の生活圏でお話は展開していく。でも、それは壮大なドラマで、人類の存亡とか、未来とか可能性だとか、なんだか少女の夏休みのスケッチには収まるわけもないドラマだ。大好きだったクラブ活動を封印された彼女の退屈だった夏休みのお話なのに、とんでもないこととなる。でも、映画が描くのは彼女の日常である。その落差がこの映画の魅力だ。そんななんだかちぐはぐな感じが、この映画のドキドキする理由なのだけど、曖昧なまま、終わることが、肩透かしを食らった気分にさせられるのも事実で、やはりなんだか納得いかない。見たことのない映像を展開してくれるし、驚きの連続なのに、なんかものたりない。
ポスターにもあるが水族館でその巨大な水槽を向き合う少女の姿が象徴する圧倒的な「何か」がこの映画の魅力だ。それは言葉にはならない。だけど、それを感じさせるものが映画で描けなくては意味をなさない。