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映画・演劇のレビュー

『未成年だけどコドモじゃない』

2022-08-01 13:08:20 | 映画

夜中に目が覚めて、眠れないからたまたま見た映画だ。緩い(軽い)映画で、途中でやめてもいいもの、という基準で選んだのだが、これがなかなかの作品で拾い物。英勉監督作品はつまらない、とずっと思っていたけど、ここに及んでそれなりに面白いと思い始めた。昨年の『東京リベンジャーズ』で初めて悪くないやん、と思えたけど、この映画もなかなかの出来だった。こちらは5年前の作品。『ヒロイン失格』や『貞子3D』(2作ある)があまりにくだらなさ過ぎて、そこを基準にしていた。彼の作品はなんでもありで、しかも、ものすごい多作。それはそれですごい。ウイキペディアで調べると、彼がタッチするのはバカバカしい映画ばかりだ。そしてなぜか、ほぼすべてを見ている。

今回は徹底している。そのバカバカしさは普通じゃない。ここまでバカバカしい設定をとことん極めてやり切れる人はなかなかいない、かもしれない。彼はやり出すと妥協なし。トコトンする。それがうまくいく場合もあるけど、コケることもある。そんなの当たり前の話だ。だからギャンブルだね。失敗したら目も当てられない。でも、大丈夫。1本1本の出来なんか気にしていないようだから。特異な設定で突き抜けるとき、成功するパターンが多いようだ。そういう意味では『映像研の手を出すな』も数少ない成功例だろう。男二人が裸で走り回るだけの映画『ぐらんぶる』も彼の仕業だ。

今回、後半でだんだんふつうの映画になっていくのがもったいなかった。ヒロインの世間知らずがどこまでもエスカレートして描かれていき、突き抜けると、反転してバカ女ではなく神々しいとか、そんなレベルに至るといい。高嶋政宏演じる父親のはじけ方が凄くて、そこが基準。みんながあれくらいにやってくれたら凄いのだけど、なかなかできそうもない。そんな中、ヒロインの平祐奈が素晴らしい。彼女は今年の『恋の光』や以前の『10万分の1』でも輝いていたけど、まずこの作品でブレイクしていたのか。彼女の天然ぶりは高嶋同様突き抜けている。お相手の中島健人は、最初のいささかミステリアスな部分はいいけど、後半、ふつうになってしまい、残念。受けの芝居だから仕方ないのかもしれないけど。

ここからは余談だが、この映画を見た後、彼が主演した『ウソコイ』というのも見たのだが、ここでもバカバカしいお話のなかで、健闘していた。この人はこんな映画にばかり出ているようだ。同時期に作られたこちらの映画は、傑作『俺物語』の河合勇人監督作品なので、少し期待したのだが、あきれるほどつまらない。アホ(それが、あまりに幼児化し過ぎているところも)は同じなのに、テンポが悪く、大事な要因であるアホを信じ切ってない。

資産家の令嬢が、16歳の誕生日に、なんと誕生日プレゼントとして、高校の先輩を貰う。彼は運命の人と彼女が思った超イケメンで(なぜか、それがたまたま父親が選んだ男!)結婚して、始める新婚生活。だが、なぜか新居は超貧乏な借家暮らし。貧乏の体験学習のためらしい。もちろん学校には結婚は隠して通うとか、いうのはよくあるパターン。その他めちゃくちゃな設定のてんこ盛り。バカバカしさ無限大。そんな映画を平祐奈はラストまで走り抜ける。

ふざけることなく大真面目でこういうバカな話を見せきる覚悟が英勉には自然と備わっているようだ。最後までぶれることなく、バカ一直線。この作品で、彼を見直した。今後は期待してもいいな、と思う。


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