小嶋陽太郎の小説は好き。『おとめの流儀』で出会って、それからすべての作品を読んでいるけど、はずれはない。というか、すべて最高にいい。読みやすいし、読むだけで元気になれる。今回の短編連作も、素晴らしい。5つのお話がどこかでリンクしているのも楽しい。いささかいびつな設定であろうとも、それを納得させるだけの強引さで引っ張っていく。大胆だけど、説得力がある。
最初のお話からもう最高だ。こんな女の子が好き。周囲と折り合いをつけなくてもいい。自分のペースで生きていける。孤立することを恐れない。というより、気にもしない。ひとり、を大切にする。というか、ひとりでいい。でも、それは人を拒絶するというのではない。まず、自分を大事にすることだ。周囲の視線に頓着しない。
とんでもないことでも、それを彼女がやると、納得。だいたい「蹴り男」ってなんだ。不幸を蹴り飛ばすなんて。彼女は自分のペースを守り抜く。周囲に影響されない。でも、周囲を拒絶するというわけではない。この最初の作品である『空に飛び蹴り』が一番いい。
この1作で一気に作品世界にはまり込む。いずれのお話も結局は同じ話で、なかなかうまくいかない現状をなんとか乗り越えていく勇気を与えてくれる。そんなお話ばかり。読んでいると、それだけで元気にさせられる。実をいうと、結構辛い話ばかりなのだけど、周囲の人のちょっとした言葉や行動に助けられて、乗り越える。綱渡りもある。いや、危険な綱渡りだらけ。ドキドキする。だから、面白い。