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映画・演劇のレビュー

『るろうに剣心 最終章 The Final』

2021-04-27 17:31:25 | 映画

コロナ禍で公開が延期されていたのだが、ようやく公開が始まったにも関わらず公開2日で、緊急事態宣言が発令され、日曜日から東京、関西での上映がストップしている。この映画だけではなく、映画界は大打撃であろう。特にこのGW大動員が期待されていただけに大きな痛手だ。

50億円の巨費を投じた日本映画としては最大規模の超大作である。ここまでの3作品はとても好きだ。こういうタイプのスケールの大きな時代劇アクション映画に日本映画が挑むのはかってなかったことだろう。今回の最終章は先行する3作品のさらに上をいくのは、当然の責務だったはずだ。

すさまじい迫力の圧倒的なアクション巨編に仕上がっていることは認める。冒頭から想像を絶する壮絶なアクションを見せてくれる。2時間20分怒濤のつるべ打ちだ。だが、見終えたときに残るのは虚しさである。アクション先行で、お話があまりにしょぼくなりすぎたのだ。

ドラマとアクションのバランスが絶妙だった1作目から、少しずつアクションに比重が傾きすぎていた気がしたが、本作では完全にそのバランスを崩してしまったようだ。これではどんなに凄いアクションシーンを見せようとも、心躍らされない。映画はあくまでもまずはお話であり、見世物ではない。そんな当たり前のことは大友啓史監督だって十分わかっていたはずである。でも、肥大化する映画を前にして、気付くと肝心のドラマをおざなりにしてしまっていたようだ。アクションのためのアクションは、それがどれほど見事なものであろうとも空しいばかりだ。

姉を殺された恨みからの復讐という基本設定に説得力がないから、せっかくのこの壮大な大河ドラマの幕引きを見誤ることになった。きっと原作には私怨だけではなく、幕末から明治へと移行した中で失われてしまったものへの哀惜が、ただ政府の味方になってしまった剣心への怒りとして描かれていたのではないか。これは幕府を倒したことで平和な世界が実現した、という単純な話ではないことはここまでのお話のなかでちゃんと描いてきたはずだ。その先にこの作品はある。そこに対してのちゃんとした落とし前をこの映画はつけるべきであった。なのに、これではただのチャンバラである。それはない。


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