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映画・演劇のレビュー

『シークレット・オブ・モンスター』

2016-12-03 15:14:21 | 映画
「これだけ」さりげない見せ方をして、ラストでいきなり「あれだけ」を見せて終わり、というのは、ちょっと大胆すぎないか?
これでは、何が何だかわからないというクレームもきっと出たはずだ。現に今日も何人かの観客が途中で劇場から退出していた。そんな不親切な映画である。だが、この緊張感の持続はただ事ではない。見終えた時にはぐったりとした。疲れる。でも、これは凄いというしかない。



少年期の3つのエピソードが描かれる。彼が起こす3つの「癇癪」である。それが彼のその後の人生に与える影響を説明しない。その意味には一切触れないのだ。ただ、さりげなく、提示しただけ。教会に対して、父親に対して、母親に対して。彼はこの世に神なんかいないと思う。信心深い母親や、まるでフランス語を話さない父親。優しそうで無関心な神父。幼いながらも、世界に対して絶対的な拒絶を示した少年は、大人になり、独裁者として、この世界を支配するモンスターとなる。



1918年ヴェルサイユ条約締結のためにアメリカからフランスにやってきたアメリカ政府高官。彼の幼い息子が見たもの。少年の見た小さな世界からやがて、彼が作り上げようとする大きな世界が見えてくる。第1次世界大戦終結という世界戦争に終止符を打つことが、やがて起こる次の世界戦争の序曲となる。ひとりの少年のヒステリーが世界を揺るがす。



モンスターがどうして生まれたのか、が描かれるのではない。幼少年期の出来事がひとりの人間にどれだけ大きな影響を与えるのか、が描かれる。これはどこにでもある、誰にでもあることなのだ。しかし、それが歴史を動かすことになったとき、それはホラーとしか言いようがない。
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