なんと27分の短編映画なのだ。それが劇場公開である。(15分ほどの短編を併せて公開されたが、それでも上映時間は45分)ありえない。以前、新海誠監督の『言の葉の庭』が同じようなケースで劇場公開された。あの時の衝撃が頭にはあったから、これにむやみに根拠のない期待してしまったのだ。
新鋭、新井陽次郎の劇場作品監督デビュー作。予告編がよかった。ポスターも趣味がいい。だから、期待した。なんだか雰囲気もいいし、もしかしたら凄い映画が見られるかも、と。だが、撃沈。せめて、60分の尺が欲しい。これでは、何も描けない。映画自体が予告編のような作品で終わっている。ファンタジーとしても、不発。何が描きたかったのか、と言われてもきっと、答えられないのではないか。
中途半端な内容に終わる短編映画はたちが悪い。それならちゃんと長編にするべきなのだ。ノルダが何者で、彼女と出会う2人の少年の関係性。彼女を含む3人のドラマがどこに行きつくのか。台風一過。そこに何が残るのか。去って行った少女。残された少年たち。台風のために学校に閉じ込められた一夜。不安と緊張。そんな特別な時間をどれだけ描けたか、というと、おぼつかない。これは短編向けの素材ではなかったのだ。
冒頭の部分とか、悪くないし、引き気味の絵作りも、いい。それだけに消化不良に終わったドラマ部分が悔やまれる。単なるスケッチ程度で終わらせてはならない。少なくともこれはちゃんとした劇場公開映画なのだ。その矜持だけは守って欲しかった。