いつものことなのだが、とってもくだらなくて、たわいもないことを、あまり一生懸命ではなくやっている。そのくせやる気がないわけではない。見ようによってはとても必死になってそれをしている。これもいつものことだが、あまり役者たちが上手くない。だがそんなこともなぜかこの芝居にあっては好ましい。これを上手い役者がやっていたなら、きっと嫌味になる。そして「おまえら、こんなくだらなこと、するなよ」と思うだろう。 . . . 本文を読む
予想した以上によく出来ていて嬉しかった。前田哲監督は今までいつも中途半端でもどかしい映画ばかりで、それでもなぜか見棄てきれないまま見続けてきたのだが、ようやくここにきて報われた気分だ。
原作となったドキュメンタリーは残念ながら未見だが、この素材は映画としてより実際にドキュメンタリーで見たほうがずっとインパクトもあるはずだ。なのになぜ敢えて映画化しよとしたのか、そのへんの彼の真意はこの映画を見 . . . 本文を読む
下巻に入って話が急展開を遂げる。ゆっくり何かが起こる予感のようなものを描いた上巻とは全く趣を変えて、主人公も兄である崇に限定し、容疑者として拘留さてた彼が刑事の尋問のなかで何を思い何を感じていくのかが描かれる。
そして、事件は犯人の目論見どおりに潜在的に人々の心に中にあった闇を刺激し、連鎖反応を起こす。続々と新しい殺人を呼び込んでいく。「悪魔」はどこにいるのかはわからないまま、警察はなんとか . . . 本文を読む
大林宣彦監督。70歳の最新作。大林さんはもう自由自在だ。70になり、でも瑞々しい映画を作る。それは若ぶるなんてことではない。それどころか依怙地になってるのではないかと思わせるくらいに自分スタイルに拘る。最近になって禁じていた「A MOVIE」を再開したことも、彼の中の何かが変化したからだろう。
もう少しで死んでしまうかもしれない。老いは誰にでもやってくる。たとえ大林さんであろうとも、である。 . . . 本文を読む
「全世界、失明。」だなんていう扇情的なコピーをタイトルよりも大きく掲げたフライヤーが凄い。フエルナンド・メイレレス監督最新作。彼のデビュー作『シティ・オブ・ゴット』も衝撃的な作品だったが、今回もまたスケールの大きなパニック映画をハリウッドの大味な作品とはまるでテイストの違うものとして見せてくれる。正直言ってかなりの不快指数だ。だが、これから目をそむけれない。
冒頭の伊勢谷友介が失明するエピソ . . . 本文を読む
『三国志』の<赤壁の戦い>の映画化。ジョン・ウーが前後半計5時間の大作として『三国志』前半のエポックであるこのエピソードを壮大なスケールで映像化してみせる渾身の超大作。今回のPart1は開戦前夜までで、だから本当の戦いは次の後半で描かれる。だが、そんなこと関係ない。これだけを見てもこの作品の気魄は十二分に伝わる。
制作費100億円なんていうことが売りになっているが、ハリウッドの大作ならそのく . . . 本文を読む
作:樋口美友喜、演出:池田祐佳理のコンビネーションが最高に上手く機能した傑作だ。毎回はずれがないアグリーなのだが、今回はいつもと違い、とても単純な筋立てなのに、それがこんなにも心地よく素直に胸に届く。樋口さんがここまでシンプルなドラマを書いたことって今までなかったことではないか。シンプルさが力となっている。そんな台本を池田さんが何の衒いもなくストレートに見せた。これって正直言って怖いことだろう。 . . . 本文を読む
このなんだか不思議なタイトルといつもと一味違うフライヤーに心惹かれた。なんとなくこれは元気になれそうな芝居に見える。そんな三枝希望さんの最新作である。だが、芝居はいつもながらの三枝カラーの作品だった。
家族の崩壊と再生をテーマにして、重く厳しい世界が展開していく。もっと軽やかに見せてもいいのに、といつも思う。時代のニーズなんかに応じたりはしない。自分のテイストを変えることもない。三枝さんの見 . . . 本文を読む
ロシアの新鋭、アンドレイ・クラフチューク監督によるとても小さな映画である。自分を棄てた母を求めて孤児院を脱走した6歳の少年ワーニャの切ない旅が描かれていく。2005年の作品なのだが、なんだか昔のロシア映画を見ている気分だ。お話自体も実に古色蒼然としたものでとても現代の映画とは思えない。
冒頭の車が極寒のロシアを行く場面がいい。途中でガス切れで車が止まる。するとガイドの女性が携帯で連絡を取る。 . . . 本文を読む
これは凄い。平野啓一郎はあまり好きではないのだが、今回はちょっといつもとは違う。まだ「上」を読み終えたところなので、詳細は書けないが、事件が起こるまでのここまででも充分この作品の凄さは伝わってくる。
冒頭の弟の帰郷から鷲摑みにされる。なんでもない描写なのかもしれない。だが、何かが起こる予感がする。家族が集まる。父親はなんだか鬱状態にあり、母親はどうしたらいいのか、心痛めている。 . . . 本文を読む
こんなにも心に痛い映画はない。ただ優しいだけの映画にはならない。だが、ただ悲しいだけの映画にもならない。子供を主人公にした映画の陥る甘えはここにはない。だがただ厳しい現実を突きつけるようなものでもない。
ここには痛みと優しさがきちんと同居している。アミールとハッサン。2人の少年たちが生きた時間。それが壊れていくさまが痛々しい。悪いのはアミールではない。だが、彼は自分のせいでハッサンという生涯 . . . 本文を読む
長澤雅彦監督の映画は全部劇場で見ている。特に『青空のゆくえ』が大好きだ。前作『夜のピクニック』も原作とは違うけど、もうひとつの長澤ワールドを展開していて大好きだ。スピン・オフ作品の『ピクニックの準備』も含めてひとつの世界が出来ていて、そんな世界にすっぽり嵌り心地よい時間が過ごせた。
彼のよさはそんな世界作りがしっかりなされているところにある。『青空のゆくえ』の子供たちの成長を見守る連作を作る . . . 本文を読む
これもバカな映画だ。もちろん『トロピック・サンダー』とは別のタイプのバカさ、である。同じ次元では語れない。でも同じようにバカで楽しい。
どうしてこんな無邪気な映画が作れるのだろうか。見ていてなんだか幸せな気分になれる。栃木の田舎町の高校生が、暇で、いたずらばかりしている。でも、いいかげんバカはしないほうがいいよ、と思う。とても高校3年生がすることではない。小学生並の低脳さ。(こんなふうに書く . . . 本文を読む
ただのバカである。ここまで悪ふざけをした映画はなかなかない。しかも中途半端な悪ふざけではない。本気の悪ふざけである。ベン・スティラーはずっとこんなバカ映画の企画を諦めずに温め続けてきたのか、と思うと何だか頭が下がる。あんたはバカだが偉い。そんな彼の熱意にほだされて熱い仲間たちは結集した。彼らも同じようにバカである。こんな映画に出てもなんのためにもならない。それどころか恥である。なのに、協力を惜し . . . 本文を読む
この芝居は寺田夢酔さんの代表作である。代表作というのは人が決めるものではない。彼が胸を張ってそう名乗るからこれは彼の代表作となる。彼は本当にこの作品が好きなのだ。もちろん周囲の人たちもそう認めるから、代表作となるのだろうが、でも例えみんなが認めなくても彼は「これは俺の代表作です!」というのだろう。そんな潔さすら感じさせる。なんでこんなまどろっこしいことを言うのかというと、寺田さんのこの作品に対す . . . 本文を読む