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映画・演劇のレビュー

山本幸久『ある日、アヒルバス』

2013-01-12 23:07:47 | その他
 これはバスガイドを主人公にした「青春小説」だ。このたわいもない小説を読みながら、なんだか、心がドキドキした。こういう甘くて、緩くて、どうでもいいような小説って、しばらく読んだことがなかった気がした。最近は、なんだか、もっと切実で、ある種のテーマが垣間見えて、重いばかりの小説を読んでいた気がする。もちろん、僕の読むような小説なのだから、そんな難しいものはない。でも、このノーテンキは、あまり類を見な . . . 本文を読む
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重松清『ブランケット・キャッツ』

2013-01-12 22:47:36 | その他
 7話からなる短編連作だ。こういう小説を読むと、ほっとする。あたたかい。予定調和だけれど、それでいいじゃないか、と思う。先日の『月と雷』のような、人間のいやな一面をほじくりだしてきたような小説の後には、こういう清涼剤のような小説がいい。もちろん角田光代は大好きだし、『月と雷』が悪いというのではない。それどころかあれはとても凄い小説だと思う。ただ、とても冷徹で、人の心の底にある醜いものを見透かすよう . . . 本文を読む
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『星を追う子ども』

2013-01-10 22:39:05 | 映画
 『秒速5センチメートル』の新海誠監督作品。彼の作品だというだけで期待出来る。それくらいに『秒速5センチメートル』は凄かったということだ。今回は多分に宮崎アニメを意識したらしいが、彼にはわが道を行ってもらいたい。これは『天空の城 ラピュタ』へのオマージュらしい。確かに意図するところはわかるのだが、やはりまるで別物だ。宮崎アニメの最高傑作のひとつでもある『ラピュタ』への新海監督からの挑戦状と考えた方 . . . 本文を読む
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『贖罪』

2013-01-06 20:22:34 | 映画
 黒澤清監督の新作だ。5時間の大作である。一気に見るためには、まとまった時間が必要で、なかなか勇気が出なかったけど、お正月に、1日家にいる日があったので、思いきってレンタルしてきた。この作品は、5話からなる連作長編というスタイルを取る。ひとりの少女の死に向き合うこととなった4人のクラスメートの女の子たちと、その殺された少女の母親(小泉今日子)が主人公だ。  なんでもないようなシーンも、怖い。そん . . . 本文を読む
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角田光代『月と雷』

2013-01-05 22:25:22 | 映画
 今年最初の小説なのに、こんなにも暗い話を読まなくてもいいじゃないか、と自分で自分に突っ込みを入れてしまう。もちろん、読むまでは、これがこんなにも、嫌な気分にさせられる小説だなんて思いもしなかったから、心の準備も何もなかった。でも、先に書いた2012年ベストワン作品『紙の月』でも、大概な目に合わされたのだから、最新の角田光代には要注意だったのだ。警戒心が足りなかった自分の未熟をわびるしかない。(で . . . 本文を読む
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『ワンピース フイルムZ』

2013-01-05 21:26:42 | 映画
 これは年末に見た映画だ。でも、なぜか、今まで書くこともなく、置いていた。なんだか、何をどう書けばいいのか、よくわからなかったからだ。マニアの人とは、まるで違う感想になるだろうけど、でも、まぁ、正直に思いつくままを書いてみよう。  まず、とても面白かった。前作以上に面白い。それは誰もが認める事実だろう。『ワンピース』の映画版は、前回から、リニューアルして、それまでのタッチとは趣を変えたようだ。タ . . . 本文を読む
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2012 映画ベストテン

2013-01-03 23:08:30 | 映画
 劇場で見た映画の本数は138本。昨年よりかなり増えた。というか、昨年の僕はあまりに映画を見なさすぎた。この35年でいちばん少ない本数しか見なかった年だったのだ。20代の前半には300本位見ていた時もあったけど、今は150本くらいが限界だ。芝居を見なければもっと映画を見れるのだが、それもなぁ、と思う。  ということで、映画も芝居と同じで10本だけ、リストアップする。2012年も面白い映画はたくさ . . . 本文を読む
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2012 小説ベストテン

2013-01-03 22:56:59 | その他
 2012年に読んだ本は153冊。9割は小説だが、その中で特に面白かった作品を10篇リストアップするのは、映画や演劇よりも困難を極める。すごく面白かった小説でも、時間が経つとどんな話だったのか、忘れているからだ。面白かったという記憶のみが残っていても、細部が定かではない。かといって、ひとつひとつ調べるのも、なんだかなぁ、なので、とりあえず、インパクトが強かった作品を優先しながら、10冊リストアップ . . . 本文を読む
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2012 演劇ベストテン

2013-01-01 22:02:53 | 演劇
 昨年見た演劇作品は143本。本数はここ10年どんどん減少していると思ったが、それほどでもない。ただ、新しい劇団はあまり見ることがなくなった。最近は、呼んで貰わなくては自分から見に行くことがないからだ。(それに、知らない劇団から、見に来て欲しいなんて、なかなか言われなくなったからね)春の演劇まつりとか、キャンパスカップで出会う従来なら見ることのない集団の作品も、減少しているし。そんなこんなで、あま . . . 本文を読む
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『秒速5センチメートル』

2013-01-01 19:10:15 | 映画
 三話からなる連作アニメーション作品。たった63分の世界が、なぜかこんなにも豊穣で、永遠と思えるほどに奥行きがある。これは、ほとんど奇跡のような作品である。  小学校の頃からスタートして、出逢いから再会までの10数年間のドラマが綴られていく。でも、再会は永遠の別れでもある。こんなにも切ない恋物語を見せられるとは思いもしなかった。映像のワンシーン、ワンシーンがため息が出るほどに美しい。それは、綺麗 . . . 本文を読む
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『ボーン・レガシー』

2013-01-01 18:01:35 | 映画
 ジェイソン・ボーンシリーズ3部作のスピン・オフ作品なのだが、ボーンシリーズ3部作の脚本家、トニー・ギルロイが初めて監督に挑み、お話はボーン・シリーズの同じ時間、同時進行していたもっと巨大なプロジェクトを描く、というのが、企画の骨子。「ジェイソン・ボーンは氷山の一角でしかなかった!」とか言うのがキャッチコピーになっているのだが、お話自体は、確かにその通りなのだが、だからといってこの映画が、前3部作 . . . 本文を読む
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