こんな乱暴な映画はない。ストーリーの作り方もむちゃくちゃだし、何がどうしてどうなったのやら、よくわからないまま話はどんどん進む。もちろん複雑な話ではないから、別に気にする必要はない。しかも、派手なアクションばかりなので、セリフもほとんどないし、ドカーン、ドカーンと爆発して、刀で斬り合いがあって、そんなこんなで、どうでもいい。
だからテンポよく話が展開する、のではない。でも、すごいスピードだ。 . . . 本文を読む
この2つの短編は、いずれも、本来なら長い時間をかけて培っていくものが描かれる。欲望を巡るお話である前者も、愛について語る後者も、それまでの、人生。これからのこと。すべてがそこに包括される。短い時間も長い歳月も同じようにこの30分の芝居に包みこまれ語られる。
姉と妹。友人。三者の関係性を物への執着、お金を通して、描く。3人はあまりに違う別々の存在だが、それなのに、そのことが反対にひとりの人間の . . . 本文を読む
今、劇場で公開中の『極道の妻たち NEO』を見た時の衝撃は忘れられない。ここまで、つまらない映画はない。香月秀之監督はどうしてしまったのだろうか、とショックでしばらく立ち直れなかった。あれは映画とは言わない。これまで15本も作られてきたヒットシリーズの約10年振りの新作という触れ込みだったが、僕はもう岩下志麻が辞めた時点で、このシリーズは終わってしまったと思っていた。だから、高島礼子には悪いけど . . . 本文を読む
前半の緊張感は普通じゃない。芝居を見ながら、こんなにもドキドキしたのは、久しぶりのことだ。シンプルなのに、先が読めない。それほどの意外性はないのに、その異常さに引きずり込まれる。これはいつものサリngROCKで、今回殊更特別なことをしているわけではない。だが、従来のスタイルを踏襲しながら、それに磨きがかかった。
舞台美術も、これ以上簡単なものはないほど、単純。でも、ゴテゴテ飾り付けるよりも断 . . . 本文を読む
蓬莱竜太の第53回岸田戯曲賞、受賞作品を取り上げる。劇団大阪がシニア対象にして活動している演劇講習会の公演だ。シニア劇団の芝居は活発化しているが、僕は今回初めてそういう芝居を見た。初体験である。舞台の上の役者も初体験の人もたくさんいたのかもしれない。お年寄りになって、芝居を始めるって、それだけで凄いことだ。世の中にそういうものを受け入れる風潮が出てきたのは素晴らしい。それより何より、芝居に挑戦す . . . 本文を読む
初期作品のテイストがよみがえる。初めて『蛇を踏む』を読んだ時の気持ち悪さ。でも、それがなんだか心地よかったりもする。あの感じ。よくわからないものがあって、それをそのまま受け入れている。時間は延びたり、縮んだり、ふわふわしているようで、でも、怖い。特に最後の作品がそう。
最初の『aqua』はそうでもなかった。同じ名字の2人の女の子の友情物語、なんていう分かりやすいパッケージングも可能だ。でも . . . 本文を読む
キタモトさんによる泉鏡花シリーズ第8弾である。前作『戦国茶漬』も、凄かったが、今回は3時間半の大作だ。2時間10分のところで、15分の休憩が入るけど、オリジナルをそのままカットせず見せきる。この話なら戯曲を再構成して2時間ほどにすることは十分に可能だ。だが、そんなことをキタモトさんがするはずもない。原文に忠実に、鏡花が見せたかったものを、再現する。もちろん、そこはキタモトさんの視点から、だが、キ . . . 本文を読む
スマトラの大地震による津波で、甚大な被害を受けたタイのプーケット島を舞台にした人間ドラマ。すさまじいスペクタクルシーンが描かれるが、もちろんこれはパニック映画ではない。ただ、津波のシーンは凄すぎて、あれを再現するのに、どれだけのお金と技術が必要だったかと思うと、なんだか映画って改めて凄いと思わされる。これだけの労力をつぎ込んで、この映画を作ろうとしたスタッフ、キャストの苦難は想像に難くない。使命 . . . 本文を読む
この人を食ったような小説は、車がしゃべる。もちろんその声は人間に聞こえるわけではない。車は車同士しゃべるのだ。彼らのおしゃべりが描かれていく。そんな小説。でも、残念だがそれだけで400ページほどの話を作るのは難しい。車の中で人間たちがしゃべったことを聞いて、そこから話を展開していくから、無理が生じる。ストーリーを綴るだけでも困難なのに、彼らの目線からしか見えないので、そこで完結するように無理から . . . 本文を読む
これは重い。横山拓也さんは、この重い話から目を逸らすことなく、見つめていく。40歳前になり、ひとりで生きていく女をとことん追い詰めていく。峯素子さんがこのヒロインを演じる。だが、芝居全体は、アンサンブルプレーだ。ことさら彼女を際立たせることはない。登場したところからは、ほぼ出ずっぱりとなる5人によるアンサンブルがこの作品世界を作る。
姉と妹の話でもある。妹は姉への屈折した愛ゆえ、彼女を追い込 . . . 本文を読む
4組の夫婦が巻き込まれる事件。彼らはある夫婦の結婚10周年の記念パーティーに集まった。なのに、主催者がいない。パーティーの準備は途中で投げ出されたまま。最初に訪れた夫婦が聞いた銃声。そこから始まる。最初に訪れた夫婦は、耳を撃たれて血を流すこの家の主人の介抱をする。
70年代、その戯曲が次々と映画化され一世を風靡したニール・サイモンだが、その後はあまり日本には入ってこなかった気がする。なんだか . . . 本文を読む
これではあまりに無茶苦茶すぎないか。話は完全に破綻している。こんないいかげんな話で納得する観客はいないだろう。キム・ギドク完全復活と期待させた本作はベネチアで金獅子賞を受賞して、大絶賛されたようだが、審査員は一体何を見て、この作品を押したのか、僕にはまるでわからない。これは明らかに失敗作だ。過去のキム・ギドクのエッセンスを残しながらも、ただのB級映画でしかない。もともと彼の映画はエロ・グロで、刺 . . . 本文を読む
昨年のウイングカップで最優秀賞を受賞したがっかりアバターの受賞後第1作。今回も過激な内容で、驚かせてくれる。坂本アンディさんは、こけおどしとか、下ネタとか、大好き。とても下品で、でも、それがさわやか。チンコを連呼しても少しもいやらしくは聞こえない。要するに子供がうんこ、ちんこ言ってるだけ。
とある病院で同時に生まれた4人の赤ちゃん。でも、ひとりは淫乱で、ひとりは死産(この作品の語り手)で、ひ . . . 本文を読む