劇団大阪のシニア演劇大学の卒業生が新たに立ち上げたプロジェクトの第1弾。「朗読詩劇」というのがいい。『広島第二県女二年西組』という素材もいい。今自分たちが出来ること。無理しない。でも、妥協しない。やりたいことをしないで、なんの意味があるのか。そういう姿勢がすばらしい。
シニア世代が演劇に挑むという、その最初の一歩からして素敵なのだ。さらには、彼らはそれを持続しようとする。芝居の魅力に嵌ってしまい . . . 本文を読む
こういうシンプルな作品が、なぜかとても心地よい。2人の作家が、リレー方式で、メイルのやり取りをする、というスタイルがいい。手紙ではなく、メイルというのが、今風、というか、実に安易。表面的には。でも、そんな簡単なところが、ここでは上手く機能する。今の気分を代弁する作品になる。もともとこれは「TOKYO FM」でオンエアされたラジオドラマだったらしい。それを再編集して読み物にした。
昔、同じようなラ . . . 本文を読む
駅前でのヘイトスピーチ。日本以外のルーツを持つ若者によるスピーチコンテスト。この二つからスタートして、「在日への差別、反日運動」という問題へと至る。さらには、強制連行、朝鮮戦争という歴史的事実の意味を問うことまで含めて、それらを「今ある現実」として描き、それと向き合う。とてつもなく野心的な試みで勇気のある芝居だと思うが、いろんなことがあまりに図式的で、少ししんどいことも事実だ。
これを、とある . . . 本文を読む
サム・メンデスが監督になって、007は今までの映画から大きく飛躍した。今回のシリーズ第2弾も、期待に違わぬ秀作である。しかも、前作とは微妙に違う切り口を提示した。やられたなぁ、と思う。ちゃんと前作を引き継いだ上で、そうなるのが憎い。うますぎる。ただ、作品自体の完成度や好みで言わせてもらうと、やはり、前作『スカイフォール』には及ばない。2番煎じが前作を凌ぐはずもない。だから、それでいい。奇跡は1度 . . . 本文を読む
とうとうこのシリーズも佳境に入ってきた。そして、次回は最終回。今回はその直前。だから、こうなると思っていた。それはタイトルを見たときから、一目瞭然だ。暴れるな、と思ったのだ。そして、その通り大暴れしてくれた。ここに至ってたかせさんが大人しくしているわけがない。だって、もうゴールが見えてきたのだから、何しても大丈夫。そんな安心感から、今回は好き放題。(というか、ずっと好き放題しているけど)
まず . . . 本文を読む
久しぶりでいちびり一家を見た。変わらず、素敵だ。方向性を変えることなく、頑固に自分たちのスタイルを守り、その中でしか表現できないものを提示する。ほかでは不可能な不思議な世界を見せる。
だいたい、僕に言わせると、阪上さん(もちろん、作、演出、主演で主宰者の阪上洋光)の存在自体が摩訶不思議だ。彼の圧倒的な存在感、ではない。彼のとてもひそやかな存在感だ。温かく包み込むような作劇。舞台上での出しゃばらな . . . 本文を読む
3部作構成のアニメ映画の第1章。最近、こういうタイプの映画が多いけど、それはあまり好きではない。映画はその1本だけで完結して欲しいからだ。だが、大きな話をダイジェストにして見せても仕方ないから、丁寧に内容に見合う尺を用意するのは誠実なやり方なのかもしれない。ただ、商売を考えて引き延ばすだけの映画もあるから、いろいろだ。実写版『進撃の巨人』なんてどう考えても3時間の映画だろう。それを2本に分割して . . . 本文を読む
劇団の若手である日高良基のオリジナルを彼の演出で見せる。この夏の『ついてる部屋』に続く第2作。前回は見逃したので、今回はぜひ、見たいと思った。新撰組が新しい座付き作家を得て、どんな展開を見せてくれるのか、楽しみだったからだ。ベテランを要所要所に配して、若手中心の劇を作る。そういうスタンスって、なんだか微笑ましいし、悪くない。
日高さんはとてもまじめで、自分のやりたいことを素直に劇化したようだ。 . . . 本文を読む
とても小さなお話だ。3・11以降のドラマという体裁を取るけど、別にそういう設定はいらない。ことさらそこに焦点を当てたことが無意味なくらいにどこにでもあるようなお話だ。だからこそ、反対に敢えて3・11を視野に入れたのかもしれない。普通の家庭を突然襲う家族崩壊。思いもしないことが堰を切ったようにやってくる。それって山田太一の傑作ドラマ『岸辺のアルバム』もそうだった。洪水によって家が流される、という設 . . . 本文を読む
こんなにも痛い映画はない。小さなお話だけど、彼らの痛みと寄り添うことで、生きていくことは困難だけど、素敵だ、と思うことができる。そんな映画だ。
双子の姉弟の話だ。姉が自殺しようとしているところから始まる。そこに電話がかかってくる。10年間、音沙汰がなかった弟が自殺して病院に運び込まれたという知らせ。彼女は自分のことはさておき、彼のもとに駆け付ける。
そこから始まるふたりのドラマだ。姉は弟をしば . . . 本文を読む
短編小説の映画化は足し算することの魅力にある。なのに、この作品は短編から、さらに引き算することで1本の映画を作り上げる。大胆にもほどがある。ほとんど説明がない。それどころか、もう少し説明すべきところすら、故意に省いている。そうすることで、映画の中に、果てしなく余白が生まれる。
登場人物も少ない。ほぼ、主人公(佐藤浩市、本田翼)の2人のみ。彼らの数日の描写に終始する。タイトルまでは(結構長い)主 . . . 本文を読む