6年振りのシリーズ第4作。3部作として完結した作品をもう一度復活させるのは、勇気がいることだ。しかも、1年1作3作品を高校生活3年間の出来事として描いた以上、その先も同じパターンで大学生活を描くには6年のブランクは大きい。もちろん小説なのだから、作者さえその気になり、1作ずつまたふたりを追いかける覚悟さえあれば、大丈夫だろうけど、マンネリに陥る可能性も大だし、高校時代のような輝きは描き難い。
で . . . 本文を読む
1年かけて上演してきた「死神シリーズ」の最終編だ。昨年12月、シリーズ第1作となる『ツキカゲノモリ』の再演から初めて3カ月単位で5本を連続上演するというとんでもない企画。しかも、最後の本作のみ新作で、これまで作り続けてきた4部作を振り返りつつ、最後に決着をつける。そして、本作がその最新作にして最終編となる。
この1年改めてこのシリーズを見てきて、この連作を通して戒田さんが目指したものが明確にな . . . 本文を読む
「原爆詩人、峠三吉」そう書いてしまった時点で、この芝居の方向性が定まった。そうとしか、書けないから、彼は苦悩した。しかし、それでも、そう書かれたい。自分の人生は「原爆」とともにあったからだ。原爆なんかなかったなら、詩人として自分はもっと違う生き方も出来たはず。だが、それでも、彼は詩人としての足跡を歴史に残せたか。原爆が生きる、創作するモチーフとなった。原爆のことを世界に知らせたいから、詩を書く。 . . . 本文を読む
すごいスケールの映画だ。この作品を作ることの困難は想像を絶する。「戦後70年特別企画」という冠も納得する作品ではないか、とも思う。だが、「特別企画」ってなんだ? 日本テレビが制作しているからかもしれないが、それってなんとなくTV的な発想ではないか。そんな冠をつけることで、1本の映画としてこの作品が貶められるような気がする。まぁ、そんなのはどうでもいいことだけど。
まず、出来上がった映画自体を述べ . . . 本文を読む
この手の青春映画は食傷気味で、もう見る前からお腹いっぱい。しかも、映画本編の前の予告編では、来年公開の漫画原作の同じような学園物の青春映画が連発。そのオンパレードにはげっぷが出る。そんなこんなで、いささかシニカルな目で見始めたのだが、これがなんとも実に面白い。これだから止められない。もしかしたら、と期待していたのだ。当たりである。よかった!
今回これを見たいと思った決め手はその上映時間だ。通 . . . 本文を読む
なんだかわからないけど、ドキドキする。芝居だからこそ味わえる快感に浸る。理屈で見るのではなく、感覚的に受け止める。ザワザワする。舞台から目が離せない。この緊張感が好きだったのだ。アングラ演劇の流れを汲む橋本匡市の最新作は、そんな不穏な空気を体現する。タイトルからしてそれらしいではないか。「箱舟」の話で、それが「苔生す」。まさにそのままの芝居だ。
壊れていく家族の話。いや、もう壊れている。3人兄 . . . 本文を読む
このさみしい映画を見ながら、なぜか、心がどんどん澄んでいく。生きていく足場を失い、ホームレスとして海岸の駐車場で暮らす男。車だけしかない。ロンドンからダブリンに戻って来たが、仕事はない。家族もいない。住む家もない。失業保険の給付もできない。住む家がないかららしい。
たまたま同じように車で暮らす青年と親しくなる。彼もまた、行き場がない。同じ駐車場で暮らす。ドラッグ中毒で、ヤクザから多額の借金をし . . . 本文を読む
前作『文明ノ獣』は今年一番の作品だった。それだけで十分満足なのに、年末にもう1本レトルト内閣の新作が見られる。そんな僥倖はそれが『智恵子抄』を題材にした作品と知り、ほんの少し不安になる。もちろん智恵子と光太郎を主人公にした「ただの文芸作品」だなんて思わない。だが三名刺繍さんが真正面からラブストーリーを紡ぐなんて、そんな王道をレトルト内閣がするなんて、「いやなんです」と思わず、書いてしまう。
で . . . 本文を読む
本当に久々に田口さんが別役実の2人芝居に取り組む。一体いつ以来になるのか。もう思い出せないくらいに久々だ。以前はずっとやっていた。毎年何回か、見た気がする。80年代終わりから90年代にかけて一体どれほど見たことか。そんな気がする。(でも、実際はそれほどではなかったかもしれないけど)条あけみさんと田口さんのコンビの別役作品を見た昔からスタートしてさまざまな組み合わせの芝居があった。
今回その流れ . . . 本文を読む
年に2回の公演ペースを頑なに守り続ける邂逅のクリスマス公演。6月の本公演は、「大阪春の演劇まつり」参加作品なので毎回欠かさず見ているけど、この冬の公演はなかなか時間が合わずに、見る機会が取れなかった。今回うまく時間が合い見ることができてよかった。彼女たちが本公演とは違って肩の力を抜いて挑む作品は、本公演以上に自分たちらしい作品になっている。90分というお手頃な上演時間もいい。
リラックスして、 . . . 本文を読む
ラストで後藤(たぶんこの字でいいだろう。要するに普通の「後藤」である)が帰ってくる。『ゴドーを待ちながら』をなぞりながら、そこに、とどまらない。というか、ただ、設定をパくっただけ。
天王寺のあべのハルカスが見える公園。天王寺公園ではない。ベンチのあるどこにでもある小さな公園。ゴトー(やっぱりここは「後藤」ではなく「ゴトー」にしよう!)の家の近くまで来た。3年前東京から大阪に行ってしまったゴトー . . . 本文を読む
月舟町シリーズの完結編。3部作ということだが、僕は番外編である『つむじ風食堂と僕』も含めて4部作だと思いたい。それぞれがまるで独立していて、まったく違う個性を持つ。だから、ぼんやりしていたらこれらがシリーズだなんて気付かないかもしれない。でも、それくらいの緩やかさがいい、と思う。今回は月舟シネマが舞台だ、と聞いていたのに、あまり映画館の話はない。これなら『それからはスープのことばかり考えて暮らし . . . 本文を読む
2時間半、2部構成の大作だ。小劇場の芝居を見る、というよりも、ふつうの商業演劇を見ている気分だ。最初からそういう芝居を作る覚悟だろうし、というか劇団往来ならそんなこと簡単に出来る。贅沢な舞台は普段見る小劇場の芝居とは違う。よくある商業演劇仕様の作品なのだ。(僕は、そういうのはほとんど見ないけど)
確かによく出来ている。お話も悪くはないし、堂々たるタッチでラストまで飽きさせない。バイロン卿とシェ . . . 本文を読む
これはとても真面目な映画である。誠実に事実を伝えようとしている。フィクションとしての映画ゆえ事実にいくらかの誇張や編集はあるのだろうが、実話をいびつに歪めることなく、そこに込められたひとりひとりの想いに忠実に描こうとしたはずだ。
しかし、あまりにストレートすぎて物足りない。事実をそのまま加工せずに再現することのみに腐心する。その禁欲的な姿勢は評価されていい。しかし、そこには映画としての面白さはな . . . 本文を読む
『スパニッシュ・アパートメント』『ロシアン・ドールズ』に続くセドリック・クラピッシュ監督によるシリーズ第3弾。それにしてもこのタイトルがおもしろい。なんで巴里夫=パリジャンなんていうのをタイトルにしたのか。
2人の子供に恵まれ、小説家としても活躍する40歳の主人公グザヴィエが、妻に別居され、なぜか彼女を追うようにしてニューヨークに行くことになる。彼女はアメリカ人の恋人がいるからだけど、彼は子供に . . . 本文を読む