中学生くらいの頃、この小説を読んだ.当時はとても面白かった、と思ったのだけど、実は今ではもうあまり記憶がない。というか、当時の僕はなんでこんな地味な本を読んでいたのか、それも今では謎だ。それに台本スタイルで書かれた小説なんて、生まれて初めてだったから、そこにも面食らった。最初はとても読みづらかったのを、覚えているような、いないような。そんなこんなを思い出す。
さて . . . 本文を読む
NGRの芝居でこういう小さな会話劇を楽しむ日が来るなんて思いもしなかった。しかも、今回は女たちだけのお話である。もちろん浦部さんのフットワークはいつも軽やかで、今までだって、どんな題材にも好き嫌い無く取り組んでいた。だが、25年にわたるテント芝居(スケールの大きな作品を作らねばならない、というプレッシャー)を終わらせてからは、より意図的に小さな会話劇にこだわっているようだ。
&n . . . 本文を読む
応典院の広い舞台を自在に使って、夜の闇に取り込まれた男の孤独を描く。この大竹野正典の傑作戯曲の初演にも出演し、初期の大竹野作品に関わってきた昇竜之助が、三部作の最後として取り組む。若いキャストを率いて、彼らが生まれる以前の作品を今の芝居として見せる。大竹野家庭劇は、人間の抱く根源的な不安や孤独をテーマにしているから時代を経ても古びない。いつの時代、どこであろうと変わらない。
この . . . 本文を読む
なんだか、とても残念な映画。こういう爽やかな映画はめったにない、と、とても心地よく見てたのだけれど、終わり方がなんだかなぁ、である。あの少女は何だったのだろうか。そこの決着を曖昧にして、なんとなく終わるのは納得いかない。
主人公の大学生、純(橋本愛)は、いきなり訪ねてきて居座る高校生ハル(永野芽都)に導かれて、50年前のこの公園を旅することになる。これは公園を舞台 . . . 本文を読む
『トゥルーグリット』の少女、ヘイリー・スタインフェルドが高校生になって帰ってきた。これは単純に自分に対して自信のない女の子を主人公にした映画ではない。イヤミでゴーマンな女の子でもない。
ある種のパターンには収まらない。破天荒な女の子だ。いろんな意味で面倒くさいヤツであることは確かだけど、この子はある意味でとても正直。しかも素直。自分の気持ちに嘘がつけないから傷つく。周りとも折り合 . . . 本文を読む
このセルフパロディはとても自虐的で露悪的だ。わざと過剰にそうしていることは明白なのだが、それでも読んでいて、胸くそ悪い。カバーの自分の顔写真もうざったいし、羽田圭介というドンファン気取りの気色の悪い作家を殊更強調している。本人はしてやったりであろうが、それにつきあっている読者はたまったものではない。しかし、この先に何があるのか気になり、このまま終わるわけがないと、期待させ、ページを . . . 本文を読む
最近の坂本さんはなんだか、とてもおとなしくなった。以前はあんなにめちゃくちゃだったのに。それって、彼が大人になったからなのか。
確かに今回も、内容も表現も大胆だし、めちゃくちゃだ。そういう意味では以前とかわらないのかもしれない。だいたいチラシ見ても、そこに芝居のタイトルがないし、と思ったらよく見たらあの長いタイトルが。「りゅう君のベイビー産んじゃってゴメンね&hellip . . . 本文を読む
深夜のコンビニ。そこで働く人たちと客。深夜放送のラジオ。「オールナイトニッポン」のリスナー。生きていくためには何が必要なのか。ほんのささやかな喜びが、生きていく糧となり、人と人とをつなぎ、もう光なんか射さないと思っていたのに、そこから未来が見えてくる。明るい夜ってコンビニのことだったと後で気付く。
夜が明るいのではない。コンビニの明かりが、その光が明るくしているの . . . 本文を読む
これは「カラフルコレクション」と銘打たれた短編集の第1弾。いつものオダさんの作品とはひと味違った仕上がりになっている。とても穏やかで、優しい。もちろん、僕はいつもの重くて暗くて、不条理なオダタクミ作品の方が好きだけど、これはこれで悪くはない。カンパニーのメンバーの原案を元にして集団創作していく、という今回のスタイルもいい。そして役者たちは、この20人ほどで満席になる小さな空間(谷町 . . . 本文を読む
このタイトルがとてもヘン。そして、ここに収録された18の短編は、みんなそれぞれとてもヘン。ほんのちょっとのヘンが重なっていき、気付くと、ヘンばっかりで、何が何だか。
例えば表題作。葬儀の話ではないし。死んだ父親が知り合いの女性に、妻と娘のことを頼むという手紙を送ったから、彼女は彼の娘と月に2回会う。それを続ける。ただそれだけ。ぼくの死体はどうでもいいし。妻は無視。
. . . 本文を読む
原発を人質にとって(原子力発電所は人ではないけど)テロを行うクライマックスから一転して、たった一人の少年が、年上の恋人と過ごす夜の時間まで、とても静かで寂しいこの小説を読みながら胸がいっぱいになる。人間って何なのだろうか、と改めて思う。
2045年、北関東の小さな町に核処分場が作られることになる。戦後100年を迎える日本は、再び戦争に突入していく。そんな時代が背景 . . . 本文を読む
プロトテアトル『MARCH 行進曲』
とても爽やかで気持ちのいい作品だ。大切な人の死を通して、生きる道を見失ってしまった男が、友人たちの助けを借りて再生していく姿を描く、なんて書くと、なんかベタで臭いヒューマンドラマみたいだけど、それを象徴的な舞台空間で、こういうふうに抽象的に描くと、なんだかとても素直に受け入れられる。
主人公の男は、どこにいこうとしているのか、わからない道の . . . 本文を読む
唐組は唐十郎が唐十郎を演じるセルフコピーだった。しかし、唐十郎が抜けてしまった今、唐十郎を演じるのは久保井研となり、彼が演出も兼ね、唐組の屋台骨を支える。しかし、そこには確かに今も本家本元の唐十郎がいる。幻の唐十郎を背負って、今年も唐組が大阪にやってきた。ここをスタートにして花園神社を経て全国を巡る。
25年ぶりとなる『ビンローの封印』はとてもシンプルな幻想劇で、 . . . 本文を読む
3月から4月にかけて見たDVDの中で、特に興味深かった3本について少し触れる。これ以外にも、忙しくて見たままにしている映画や小説がたくさんあるけど、何も書いてない。せめて少しでもメモしておきたい。
1本目はタイのティワット・タラートン監督作品『すれ違いのダイアリーズ』。海上小学校を舞台にして、生徒たちとたった一人の2人の先生との日々を描く。前任者と . . . 本文を読む
『何者』の続編。短編連作によるアナザーストーリー。最近よくあるパターンで、『何者』の主人公たち(あれは群像劇だった)を別々にして、主人公、または脇役に設定しての6つのお話。前作を読んでからかなり日が経つから誰が誰だかあまりよくはわからない。だから、ほとんど単体の短編を読む気分。でも、それぞれ面白いからいい。
タイトルロールの『何様』は企業の面接官を主人公にした話で、就活をする大学 . . . 本文を読む