今日のような熱い日には、トマトソースでもなくクリームソースでもなくシンプルなオリーブベースのパスタが食べたい。
オリーブベースのパスタとはペペロンチーノの応用である。
さて、一般的にペペロンチーノと呼ばれるパスタだが“アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノ”と呼ぶのが正しい。
アーリオはニンニク、オーリオはオリーブオイル、ペペロンチーノは唐辛子のことだ。
少し長い名前なので、略してペペロンチーノと呼ぶ。
この料理法はイタリアのマルケ州あたりで考えられた料理である。
今日の初夏のような気候が似合うイタリア南部の土地の料理だ。
イタリア半島をブーツに例えるとふくらはぎに当たる場所にある。
このあたりは、忘れられた土地とも呼ばれ観光的に見るところは少ない。
農村地帯であり食材には事欠かない。
その恵まれた食材の持ち味をいちばん表現出来る料理法がこのアーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノである。
フレッシュなオリーブオイルを熱し、ニンニクと唐辛子の風味を移す。
そこへ茹であがったパスタを茹で汁を切りすぎないようにして加える。
ここからが勝負なのだが、オイルとゆで汁や旨味を素早く乳化させる。
もともと水と油の相反する性格のものを一体化させることが乳化である。
そのようにして出来たソースは、たっぷりのオイルを使いながらも、さっぱりとしていて美味しい。
そしてオリーブオイルの持つ香りも立っていることも付け加えよう。
初夏の爽やかな陽気に、白ワインとペペロンチーノ、群青のアドリア海が遠くに見える気がするものである。