「カプチーノってシナモンかかってますか」
たまに年配のお客様に聞かれることがある。
喫茶店でナポリタンが食べられた頃に、やはり全盛を極めていたのがこのシナモンを使った“カプチーノ”である。
当時の正しいカプチーノには、深入りのコーヒー豆・イタリアンローストを使う。アイスコーヒー用のコーヒー豆だが、極深入りの豆だ。売れ残った豆を集めて二度焼きにした豆という噂も流れていた。とにかく、この豆は苦みが強く酸味が少ない。
さて正統派カプチーノの作り方を伝授しよう。
まず温めたコーヒーカップに砂糖を一杯入れる。そこへイタリアンローストから濃いめに抽出した熱いコーヒーを注ぐ。ここで砂糖を混ぜてはいけない。砂糖はカップの底へ沈めておく。
次に、八分立てにした生クリームをフロートする。生クリームはしっかりと甘くしておく。
生クリームによって白く覆われた表面に、シナモンパウダーを振る。
そして、シナモンスティックを添えたものが正統派カプチーノである。
飲むときは慎重にカップを口に運ぶ。鼻孔にはシナモンの香りが漂い、舌には冷たくて甘い生クリームの後から熱くて苦いコーヒーがやってくる。
次に、おもむろにシナモンスティックで全体を軽く混ぜる。ここで混ぜすぎてはいけない。おおよそ三回転半ぐらいが適当である。
こうすることにより、シナモンと生クリームとコーヒー液と底に沈めた砂糖が微妙に絡み合いながら、このカプチーノという飲み物の醍醐味を楽しませてくれるのである。
これほどに、奥の深い昔カプチーノであるが、現在一般的に飲まれている泡立ちのミルクがエスプレッソにフロートされた本物カプチーノを昔の日本人が形をまねて創作したものである。
オリジナルをコピーしてオリジナル以上のものを創作する日本人の知恵と云えるのではないだろうか。
そしてナポリタンなるものも同様なのである。さて、その奥が深いであろうナポリタンに果敢にも挑戦するクアトロである。
※ここに登場する昔カプチーノに対する見解はあくまでもクアトロの父の個人的な見解であって、なんら読者に強要するものではありません。