湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

※旧ブログの一部コラム・記事、全画像は移植していません。こちらのコンテンツとして残します。

ヴォーン・ウィリアムズ:カンタータ「光の子たち」

2019年02月03日 | ヴォーン・ウィリアムズ
ウィルコックス指揮LPO&バッハ合唱団、王立音楽院cho.(lyrita)CD

初録音か、ライナーはヴォーン・ウィリアムズ夫人が書いている。1950年に若い合唱団のために作られた威勢よい曲だ。音響は南極交響曲以降のものだが、合唱メインで進んでいく明るく平易な大曲(20分)というと海の交響曲をむしろ想起する。海原に漕ぎ出すようなアポロ的な一曲目「闇と光」に比して二曲目「黄道帯の歌」は陰りがある。神秘主義的な面を出してくるが南極とホルストを想起するくらいのレベルで聴きやすさは維持される。三曲目「言葉の伝令者たち」で音楽は水晶の輝きを取り戻し、少しの民謡調もまた南極の終盤を思わせる。すぐに入ってくるという意味で演奏効果は高くボールトによる初演は喝采を受けたという。録音はほぼこれが唯一だろうから何も比べようがないが、RVWの秘曲の紹介者だったウィルコックスのバランス良い演奏記録とおもう。
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ヴォーン・ウィリアムズ:タリスの主題による幻想曲

2019年01月24日 | ヴォーン・ウィリアムズ
モントゥ指揮ボストン交響楽団(eternities)1960/8/7タングルウッド音楽祭live

既発とは別録だと思う(環境雑音が耳障り)。モントゥらしい揺れないテンポ、ニュアンスの少ない太い音の流れ、しかし、この曲はそれでも威力を発揮する。宇野功芳はかつてワルターを第一に推したがこれはワルターの系譜と言っていいかもしれない。クライマックスにかけて押し寄せるロマンチシズム。ここぞというところでの力強い慟哭。そのあとも諦念をきたさず力を抜かず、オルガン的な調和した響きを保ち、コンマスソロでさえ力んで音が不安定になり、この音楽を彼岸に送るのではなく、天に飛翔させる。技術を保ちアンサンブルさえこうじられれば誰でもできるような名曲であるが、表現によって幅が出る。RVWらしさはなく、むろんタリスでもないが、盛大な拍手がこの演奏の成功を伝えてくれる。私は好き。ステレオ。メインのブラ4も同傾向で、解釈は無いがオケの迫力が凄い。
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ヴォーン・ウィリアムズ:交響曲第2番「ロンドン交響曲」

2019年01月17日 | ヴォーン・ウィリアムズ
エルダー指揮ハレ管弦楽団(ho)2010/10/14live・CD

優秀録音。自主制作のライヴ盤だが最近の正規盤にひけをとらない。演奏は曲に適した繊細な音色と透明なダイナミズムに彩られたバランス良いもの。この曲は一般にヴォーン・ウィリアムズの代表作とされ、とくに英国では今も演奏頻度の高い曲だが、意図はどうあれ結果はロンドンの一日を表題性をもって描いた音詩であり、用いられる音要素〜ビッグベンにはじまりビッグベンに終わる〜にはローカリズム色濃く、主題も3番以後用いた民謡よりむしろ同時代の俗謡ふうで馴染みがない異国人には民謡とは別種の恥ずかしさを感じさせるというか、腰の落ち着かない心地がする。精緻さと手際の良さにより円熟期前特有の明るさを維持し軽やかさに持っていくことでロマンティックな重みを際立たせずすんなりまとめるエルダーは見識だが、それでもヒコックスなど長い原典版を用いて冗長な部分にあらわれる真のヴォーン・ウィリアムズ的な、心象的なものを浮き立たせて対比的に表現しており、どちらが良いのかは聴く人の好みにもよるか。私はこれは聴きやすかったが、何も残らない感じもした。
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ヴォーン・ウィリアムズ:チェロと管弦楽のための暗い牧歌(マシューズ編)

2019年01月06日 | ヴォーン・ウィリアムズ
イッサーリス(Vc)ダニエルズ指揮BBC交響楽団(放送)2010プロムス初演live(映像)

ネットで観ることができる。録音はどうしても悪くなるのでチェロの低音が聞こえづらく、またさすがに編曲初演のため硬さも否めないが、オケがオケだけにバックアップは万全で美しい。プロムスではしばしば雑な演奏もあるので、ちゃんと名の通ったオケ、指揮者そしてソリストということで安心もある。小規模作品だが重く沈潜するような雰囲気はRvwとして独特でもあり、演奏機会も増えるのではないか。
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ヴォーン・ウィリアムズ:交響曲第6番

2018年12月31日 | ヴォーン・ウィリアムズ
ノリントン指揮サン・フランシスコ交響楽団(放送)1997live

webで聴ける。ノリントンのアクの強さが出ておりダイナミック。誇張されたアゴーギクが戦争交響曲に実にぴったりなのは三楽章。ヴォーン・ウィリアムズの書いた最も悪魔的な(カッコいい)楽章だが、響きを整えるよりもささくれだったダイナミズムを煽ることに主眼を置いて度肝を抜く。こんなにカッコいい作曲家だったのか。ノリントンのRVWの読みは深い。これも単なる客受けを狙ったものではなく、すべての生きとし生けるものを蹂躙していく国家の「躁状態」を糾弾している。四楽章を味わうにはノイジーなステレオだが、ノリントンは田園的な音楽より都会的な音楽が似合う。バルビのように感傷を加えるのではなく、なんの味わいもない(ノリントンらしさかもしれないけれど)音の羅列を素っ気なく提示している。漫然とやらず構造を抉り出しホルストとの共通点を炙り出す。前の楽章でも軍隊がラッパを吹き鳴らし(三楽章ではジャズ風の乱暴なフレーズを皮肉に撒き散らし)キャタピラが地面を踏み均していくさまを、抽象化して決してそれと聴こえないようにしていたが、四楽章もまた抽象的だ。しかし音楽としてかなり良い線をいっている。さらにオケに恵まれている。派手で技術レベルも高いアメリカオケはなぜかこの曲に合う。なかなかです。
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ヴォーン・ウィリアムズ:四季のフォークソング(ダグラス編曲)

2018年12月24日 | ヴォーン・ウィリアムズ
イエイツ指揮ロイヤルスコティッシュ国立管弦楽団(dutton)CD

四季と名付けられているが5曲あり、民謡の標題をもつが主題が四季の順になっているわけでもなく配置は自由である。曲的には短い。四、五楽章は静謐な場面で5番交響曲を思わせる響きを伴いRVW特有の単純な民謡編曲ではない(ダグラスの編曲かもしれないが)。フォルムがやや弱いというか、いつもの明快な調子でもない。演奏はソリストが良く、このオケらしい美質を伝えている。
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ヴォーン・ウィリアムズ:セレナーデ イ短調(ラッシュトン編)

2018年12月24日 | ヴォーン・ウィリアムズ
イエイツ指揮ロイヤルスコティッシュ国立管弦楽団(dutton)CD

1898年作品ということで、ラヴェル師事前の中欧的なカッチリ古風な様式による。しかし実に清澄で耳に優しい作品だ。グリーグなど国民楽派の流れにありながら高貴な雰囲気が漂い、しかもオーケストレーションが上手い(編曲の腕だろうか)。面白く聴ける音もありブルッフで停滞しているわけでもない。演奏もやりやすいのか、とくにRVWらしいロマンス(四楽章)やその前の楽章は美麗で聴き応えがある。これは良いトラック。
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ヴォーン・ウィリアムズ:交響曲第4番〜Ⅲ、Ⅳ(コルバーン吹奏楽編曲)

2018年12月20日 | ヴォーン・ウィリアムズ
コルバーン指揮アメリカ海兵隊吹奏楽団"The President's Own"(marineband)CD

自主制作でYoutubeにイギリス音楽アルバム"Hope and Groly"全て公式アップされている。いささか堅く前に向かわないスタイルだが精度はそのぶん高く、拡散的になりがちな弦楽器をともなうオーケストラよりも、ヴォーン・ウィリアムズの転機となる立体的な書法を細部までしっかり音にして真価を問うてきている。盛り上がりどころであまり見栄を切らず、尻すぼみの構成もそのまま音になってしまっているが、最後は派手に〆るし、ブラスだけによるヴォーン・ウィリアムズというのをこれだけ聴かせられるのは編曲もさることながら合唱と弦楽器で聴かせてきたようなヴォーン・ウィリアムズの意欲作だった証だろう。そしてこのあとヴォーン・ウィリアムズが色々な楽器に取り組み賛否はあるがブラスにおいても確かな腕を発揮していくことになるのを、改めて実感させてくれる実験的な取り組みとも言えると思う。おそらくほとんどの非RVWマニアのリスナーが原曲との区別がつかないのではないか。管楽器のみのアンサンブルという点での緊密さ、がっちりとした組み合い方が聞き物。なかなかでした。コメントにあるようにゴールドブラムがスタートレックに翻案したり、日本でもビールのCMに剽窃されたりとても格好のいい、しかし独特の悪魔的なスペクタクル音楽で、これ以後の作品が自作も含め映画音楽と関係付けられていくのがよくわかる。録音は新しいので大丈夫。
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ヴォーン・ウィリアムズ:クリスマス序曲(イエイツ補筆編曲)

2018年12月16日 | ヴォーン・ウィリアムズ
イエイツ指揮国立ロイヤルスコティッシュ管弦楽団(dutton)CD

CDのラストにびっくり箱。こんな珍曲、きっと二度と録音されまい。管弦楽の響きは素晴らしい。1934年の民謡編曲手腕が遺憾なく発揮されている。メドレーの選曲もいい。真ん中繋ぎ方は乱暴だが自身の完成版ではないのでそこは置いておく。いや重要なのは最初と最後なのだ…大管弦楽による気宇壮大なクリスマス・キャロル「世の人忘るな」。
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ヴォーン・ウィリアムズ:An Efds Masqueのための音楽(イエイツ編)

2018年12月16日 | ヴォーン・ウィリアムズ
イエイツ指揮国立ロイヤルスコティッシュ管弦楽団(dutton)CD

英国民族舞踊民謡協会の前身にEFDS(舞踏の方)があるが、そこで演奏するための民謡編曲ということなのだろうか。ややアカデミックな手堅い書法である意味ヴォーン・ウィリアムズらしい直球民謡編曲。「フォークダンスメドレー」「小行進曲組曲」の2曲にまとめられている。初曲の末尾は祝祭的な行進曲調の印象がある。立体的な書法も英国式行進曲を想起させる。2曲めは田舎風。旋律の中にグリーンスリーブス風の耳馴染みよいものがある。1934年の作品。
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ヴォーン・ウィリアムズ:管弦楽のための変奏曲(ヤコブ管弦楽編)

2018年12月16日 | ヴォーン・ウィリアムズ
イエイツ指揮国立ロイヤルスコティッシュ管弦楽団(dutton)CD

亡くなる前年に手を付け没後編曲されたが録音はこれが唯一か。序奏と11の変奏からなる。ヴォーン・ウィリアムズの変奏曲は長々しくなるが、これは比較的短い。昔の田園風の平穏な音楽から始まるが、南極交響曲くらいの綺羅びやかな響きを伴う後期的な変奏により一気にモダンに変貌してゆく。なかなかヴォーン・ウィリアムズふうに仕立てられた美しくキャッチーな音楽で、演奏も過不足なく楽しめる。
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ヴォーン・ウィリアムズ:田舎風組曲(ラッシュトン編)

2018年12月13日 | ヴォーン・ウィリアムズ
イエイツ指揮ロイヤル・スコティッシュ国立管弦楽団(dutton)CD

珍しい作品を集めた一枚から。冒頭こそ後年のヴォーン・ウィリアムズを彷彿とさせる民謡を全面に打ち出した剥き出しの音だが、ラヴェル師事前のドイツロマン派ふう音楽に引き戻されそのまま進行してゆく。僅か新しげな和音進行の入るほかはブラームスだ。しかし古風だからといって旋律の扱いや管弦楽の過不足ない捌き方には円熟した技が遺憾なく発揮され、何より透明感があって明るいところは同じである。いや編曲があったとしても上手い。人によってはこのヴォーン・ウィリアムズも楽しむことはできるだろう。漲る力感とか、常に強い発音といったところのない、英国的な慎ましやかさは軽やかでブラームスの木管より板についた牧歌を感じ取れる人もいるだろう。ごめんなさい、達者な演奏なのでなおさら曲が剥き身で迫り、、、飽きてしまった。三楽章間奏曲は暗いと言えなくもないがロシアやフィンランドの国民楽派のように素直で、派手な音響と繊細な音響の交錯もそれらに近い。四楽章フィナーレはどこかで聴いたような嬉遊曲。いやこれもグラズノフぽいか。とにかく幸福で穏やかで、ブーコリックというのは牧歌とか田園風という意味があるが、ヴォーン・ウィリアムズの牧歌や田園風ではない。ブラ1。
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ヴォーン・ウィリアムズ:幻想五重奏曲

2018年12月12日 | ヴォーン・ウィリアムズ
ミュージック・グループ・オブ・ロンドン(EMI)CD

ラヴェル後のRVWがシンプル化を極めた作品で、室内楽では最も著名か。弦楽五重奏曲ではあるが、RVWにしては珍しい五楽章制の四楽章では四本しか弾かない(そういうところもシンプルだ)。楽器は生でむき出しになり、ソロの掛け合いや完全伴奏とメロディのような形になりがちで、逆に清澄なハーモニーを整えるのにさほど工夫はいらず個人技を磨くだけでちゃんとなるとも言えそうだ。奏者は、達者な楽団なので全く問題はない。譜面にも忠実で、力強くも雑味はなく曲に向いている。同曲、ひなびた田舎素材による室内楽ではあるが、ディーリアスのカルテットのようにほんとの田舎音楽にはならず、フランスの洗練をへて当時の現代音楽に昇華された作品として、素材そのものを除けば今でも気恥ずかしさを感じない。
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ヴォーン・ウィリアムズ:ヴァイオリン・ソナタ

2018年12月12日 | ヴォーン・ウィリアムズ
ビーン(Vn)パークハウス(P)(EMI)CD

ヴォーン・ウィリアムズ後期の異色作で新古典主義の体裁をとりながらバッハ無伴奏風の重音、あげひばり風の走句などかつての自身を含む各種作曲様式をちりばめた、特に終楽章変奏曲はとらえどころのない、しかしRVWには珍しいほどの清新な色彩に満ちている。2番カルテットに似たところもあるが、それは部分にすぎず、あのように一つの様式で各楽章を統一することはない。とにかく民謡調以外「らしくない」作品といえ、メロディもとっつきづらいが響きはわかりやすい。終楽章さいご1楽章冒頭の回想からなぜか謎めいた変奏で終わるところには、後年のRVWの冒険的な姿勢が表れている。この演奏は総じて荒く雑味があるが、後半になるにつれ良くなる。1楽章は速い。ちょっとびっくりするが粗さも気になる。2楽章のトッカータ的なダッシュは素晴らしい。速いパセージでも安心して聴くことができる。常に弓元や下半分で飛ばすようなところはちょっと重い感じもするが、音は迫力が出る。このあたりから変奏曲まで、滑らかさが増し耳なじみがよい。変奏曲は曲がトリッキーなので、途中で飽きなければ楽しめるだろう。
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ヴォーン・ウィリアムズ:ノーフォーク狂詩曲第2番(ホッガー補筆編集2001年版)

2018年12月07日 | ヴォーン・ウィリアムズ
イエイツ指揮王立スコティッシュナショナル管弦楽団(dutton)CD

この曲は一番と同時に構想されたが放置され、管弦楽としてまとめられてはいない。従って本人が後年管弦楽曲としてまとめた一番と趣がかなり異なるのは、編曲だけの問題ではなく、それなりの理由があったことは想像に難くない。美しくまとめられているもののヴォーン・ウィリアムズ風の響きを伴いながら明らかすぎるメロディの、初期ディーリアスに遡ったような雰囲気の連環は、何も発見がないし、一番とのつながりもない。モダンな工夫の痕の見られる部分はヴォーン・ウィリアムズとしては違和感がある。まったくヴォーン・ウィリアムズと考えずに聴けば楽しい。演奏は達者で雰囲気がある。
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