湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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☆リャプノフ:交響曲第2番

2017年04月26日 | Weblog
◎ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィル(MELODIYA/BMG)1950/12/28・CD

初演直後のスタジオ録音とのこと。これの初演をスヴェトラーノフとしているものがあるが、年代からスヴェトラーノフは若すぎるし、ムラヴィンスキーが発掘初演したと考えるのが妥当だろう。ロシア革命の年に国民楽派への熱い想いを込めて1年をかけて作曲されたというリャプ2だが、ムラヴィンスキーで聞くとまた趣が違う。ここには非常に目の詰まったぎゅっと凝縮された音楽があり、録音に難はあるものの、とくに弦楽器のめまぐるしい動きがほぼ完璧に表現し切られていることに驚かされる。あまり弦楽器の特性を考慮しないピアニスト作曲家の典型のようなところがあるのだが、レニフィルの弦奏者は部分的には多少必死さが出てはいるものの凄まじい技巧を駆使してトリッキーな場面を乗り切っている。ヴァイオリンが薄く聞こえるなど音響的な不格好さは悪い録音のせいだろう。スタジオ録音と言いながらぷつぷつ雑音が最初から入っているし、30年代の録音のようなセピア色のモノラル録音は返す返すも残念だ。速い速度で颯爽と飛ばすムラヴィンスキーの解釈は膨張しがちな曲をシェイプアップして構造的な面白さを浮き彫りにしている。こういうきちんと弾き切った演奏で聞くと、楽曲の特異性がよくわかる。これはロシア国民楽派の皮を被った世紀末音楽であり、根底にはあきらかに長大なワグナー作品への憧憬が存在している。それゆえしばしば民族音楽的な要素を覆い隠すように半音階的で生ぬるい黄昏時のようなパッセージが鳴り響く。ディーリアスが好きな人は案外聞き込めるかもしれない。多様な、雑多な要素をごっちゃに混ぜ込んで作り上げられたきわめて20世紀的な交響曲と言える。ムラヴィンスキーのシャープな指揮ですっきり聴きましょう。これを◎にしない手はない。凄演。

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