◎アンゲルブレシュト指揮フランス国立放送管弦楽団(TESTAMENT/DUCRET-THOMSON/LONDON/WING他)1955/2/24・CD
かつてオケをシャンゼリゼ劇場管としているものがあったが、テスタメントで正式復刻リリースされるにあたってフランス国立放送管と表記されるようになった。契約関係の模様。あえて避けてきたのだがこの曲には少々複雑な事情がある。まず、ラヴェルの多くの管弦楽作品がそうであるように、原曲はピアノ連弾曲で、1910年にかかれている。「眠りの森の美女のパヴァーヌ」「親指小僧」「パゴダの女王レドロネット」「美女と野獣の対話」「妖精の園」の5曲である。管弦楽版のマ・メール・ロアはその翌年に編まれたものだが、曲数・曲順は同じである。一般的
にはこれがマ・メール・ロア組曲と呼ばれるものである。しかしさらにこれを本人がバレエ組曲として再編したものが存在する。曲数は7曲に増え各楽章間に5つの間奏曲が加えられ、さらに順番も変えられている。「前奏曲」~「紡ぎ車のダンス」、間奏曲、「眠りの森の美女のパヴァーヌ」、間奏曲、「美女と野獣の対話」、「親指小僧」、間奏曲、「パゴダの女王レドロネット」、間奏曲、「妖精の園」というもの。バレエとしては12年に初演されている。マ・メール・ロア全曲というとこれをさすと言っていいだろう。個人的には「パヴァーヌ」からいきなり始まる原曲版は馴染めない。全曲で慣れ親しんできたからであり、むしろ邪道なのだが、それでも序奏なしで本編に突入するような感じは否めない。さらに間奏曲を全てカットした版も存在する。これはアンセルメが編んだもので、アンゲルブレシュトなどはそれに倣っている(但しアンセルメは5曲版の録音しか遺していない)。私はあまり違和感なく聴ける。さて、この盤(ダフニス全曲とのカップリング)はかねてよりマニアの間で超名演として語り継がれてきたもので、モノラルではあるがしゃきしゃきした歯ごたえで結構構築性のある半面夢見ごこちな雰囲気にも欠けず、非常に充実している。ただ、テスタメントで復刻されたものを聴くと、ロンドン盤のような少々篭もった重心の低い音に聞こえる。いかにもドイツ・ロマン派ふうの復刻音なのだ。デュクレテ・トムソン盤のシャンシャンいうような硝子のような何ともいえないまばゆい明るさと幻想的な雰囲気がそうとう抜けている。ま、舞台上の雑音まで拾う良好な録音ではあるのだが、もっと抜けのいい明るい音にしてほしかった。デュクレテの印象を含め、◎としておくが、テスタメントでは○程度。もっと浸らせてくれい。ウィングのCDは板起こしのままの音で、比較的デュクレテの音に近い解像度であるものの雑音がかなり耳障りである。もっともLPに比べればマシか。
※2004年以前の記事です
かつてオケをシャンゼリゼ劇場管としているものがあったが、テスタメントで正式復刻リリースされるにあたってフランス国立放送管と表記されるようになった。契約関係の模様。あえて避けてきたのだがこの曲には少々複雑な事情がある。まず、ラヴェルの多くの管弦楽作品がそうであるように、原曲はピアノ連弾曲で、1910年にかかれている。「眠りの森の美女のパヴァーヌ」「親指小僧」「パゴダの女王レドロネット」「美女と野獣の対話」「妖精の園」の5曲である。管弦楽版のマ・メール・ロアはその翌年に編まれたものだが、曲数・曲順は同じである。一般的
にはこれがマ・メール・ロア組曲と呼ばれるものである。しかしさらにこれを本人がバレエ組曲として再編したものが存在する。曲数は7曲に増え各楽章間に5つの間奏曲が加えられ、さらに順番も変えられている。「前奏曲」~「紡ぎ車のダンス」、間奏曲、「眠りの森の美女のパヴァーヌ」、間奏曲、「美女と野獣の対話」、「親指小僧」、間奏曲、「パゴダの女王レドロネット」、間奏曲、「妖精の園」というもの。バレエとしては12年に初演されている。マ・メール・ロア全曲というとこれをさすと言っていいだろう。個人的には「パヴァーヌ」からいきなり始まる原曲版は馴染めない。全曲で慣れ親しんできたからであり、むしろ邪道なのだが、それでも序奏なしで本編に突入するような感じは否めない。さらに間奏曲を全てカットした版も存在する。これはアンセルメが編んだもので、アンゲルブレシュトなどはそれに倣っている(但しアンセルメは5曲版の録音しか遺していない)。私はあまり違和感なく聴ける。さて、この盤(ダフニス全曲とのカップリング)はかねてよりマニアの間で超名演として語り継がれてきたもので、モノラルではあるがしゃきしゃきした歯ごたえで結構構築性のある半面夢見ごこちな雰囲気にも欠けず、非常に充実している。ただ、テスタメントで復刻されたものを聴くと、ロンドン盤のような少々篭もった重心の低い音に聞こえる。いかにもドイツ・ロマン派ふうの復刻音なのだ。デュクレテ・トムソン盤のシャンシャンいうような硝子のような何ともいえないまばゆい明るさと幻想的な雰囲気がそうとう抜けている。ま、舞台上の雑音まで拾う良好な録音ではあるのだが、もっと抜けのいい明るい音にしてほしかった。デュクレテの印象を含め、◎としておくが、テスタメントでは○程度。もっと浸らせてくれい。ウィングのCDは板起こしのままの音で、比較的デュクレテの音に近い解像度であるものの雑音がかなり耳障りである。もっともLPに比べればマシか。
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