神聖な舞曲と世俗的な舞曲(1904)
○グランジャーニ(hrp)ハリウッド四重奏団ほか(CAPITOL/EMI)
ハープ独奏のためのアンサンブル集は録音当時としては珍しかったことでしょう。ラヴェルの序奏とアレグロ、グランジャーニ自身の作を含むソロ曲が併録されています。線が太くて耳に迫る音。ギター並みの迫力は、アメリカ録音のせいだけでもないでしょうね。はっきりした表現ですから好き嫌いはあるでしょうが、ラスキーヌのように透徹したアプローチとは異なるドビュッシーが妙に真に迫っています。この人については余り調べていないので、このレコード以外知りませんが、面白そうですね。ハープのイメージが少し変わりました。ドビュッシーと個人的に親交もあったとのことです。
○グランジャーニ(hrp)シルバン・レビン指揮ビクター弦楽合奏団(ANDANTE)1945/3/12・CD
作曲家ゆかりの男性ハーピスト、グランジャーニの旧録。野太く力強い音はやや悪い録音のせいか幾分後退し、寧ろロマンティックなニュアンスの微妙な揺らぎさえ感じさせる雰囲気あるものに仕上がっている。テンポは幾分速く爽やかさに拍車をかける。なかなか普通に聞ける佳演。
○グランジャーニ(hrp)F.スラットキン指揮コンサートアーツ弦楽合奏団(CAPITOL他)
しっかりした演奏、といってもドイツ風の重い堅牢な演奏ということではなくて骨組みのしっかりした緩くならない演奏という意味である。グランジャーニのまったく安定した表現は曲と時代と作曲家そのものを知り尽くした人ならではというものか。バックオケもしっかりしている。スラットキン父のおかげだ(自分も弾いているみたい)。グランジャーニは指がしっかりしていて、とにかくパキパキいうのが心地いい。品性の溢れるセンスあるエスプリに満ちた音色にも惹かれる。技術的にはずいぶんと余裕があり、もっとバリバリ技巧をひけらかしてもいいくらいなのに、ここが品格というものなのだろう。世俗的な舞曲の最後はちょっとテンポを落としてスケールを大きめに表現しているが、最後まで品は失わない。素晴らしい。録音マイナスで○。ハリウッド四重奏団共演盤と同一の可能性あり(スラットキンはハリウッド四重奏団のファーストヴァイオリン)。(2005以前)
同じ音盤を何度書くんだって話だが、こんかいは再生機器によって印象がこうも変わるかという話。ギタリスティックで男らしい演奏と書いていたけれども、わりと自然な環境で聴くと気にならない。音色が比較的モノトーンではあるのだが音楽が音楽だけに、それそのものの色は明らかに聴こえてくるし、野太さというのはマイクセッティングの問題のようだ、聴取環境によって不自然さは十分吸収できた。ラスキーヌらのような女性ハーピストならではの軽やかな幻想は無い。しかし、律動と緊密さの中に香気が程よく漂う細やかさで、アングロサクソン的なアンサンブルの中にあるからか、英国の演奏を聴いているような、穏やかで、サロン的過ぎない純音楽的感興をおぼえる。技巧的には完璧。○。 (2009/10/8)
○グランジャーニ(hrp)ブダペスト弦楽四重奏団(BRIDGE)CD
いかんせん古くて音が悪いがこのハーピストの芯の通ったリリシズムを存分に味わえる佳録だ。完全にハープを前面に押し出した録音となっており、グランジャーニの同曲の記録中でも最も細かいところまで聴くことが出来るものになっている。全く素晴らしい技巧と音楽性のバランスで、どこにも淀みも重さもなく、かといって軽く透明感だけしかない類の演奏とも違う。改めてドビュッシーの現代ハープの書法の素晴らしさにも感銘を受ける。また雰囲気がいい。ブダペストも表立ってはこないが完璧な音響を響かせている。世俗的な舞曲における彼らの急くように煽るテンポと、それに応えてハープの魅力を存分に振り撒くグランジャーニの極めて自然でなおかつ覇気のある演奏ぶりにかつてないカタルシスをおぼえた。録音マイナスで○にしておくが、今まで聞いた中でも第一級の演奏である。古い録音に慣れているかたには是非お勧めする。
○メイソン・ストックトン(hrp)F.スラットキン指揮コンサート・アーツ弦楽合奏団(CAPITOL)LP
遅めのテンポで確かめるように進むが決して表現が強くはならず比較的繊細にできているほうである。金属的な音がやや耳につくが(ハープ)ストレートに楽しめるものとは言えるだろう。とつとつとした印象すらあたえるソリストではあるが決して技術が無いわけではないと思う。味が無いだけだ。○。
○バートレット(HRP)バルビローリ指揮NGS室内管弦楽団(NGS)1927/1/3・SP
バルビローリ指揮活動初期の録音群のうちのひとつで、前にCD化していたと思うのだが・・・別記したWEB配信元によればバートレットはピアノとの表記があるがハープ。演奏は時代なりの纏綿としたフレージングを多用しそうなものだがそれは世俗的な舞曲の最後だけで、それ以外はテンポ設定もそれほど遅くは無く、音色はいいのだが解釈的には寧ろ無個性にも感じる。特に後年有名となった弦楽器の連綿と繋がるボウイングはここでは聴かれない。SP期ならではのやり直しのきかない、そのあたりの多少のアバウトさは仕方あるまい。全般私は普通に楽しめた。○。
サバレタ(HRP)フリッチャイ指揮ベルリン放送交響楽団(DG)1957/1
明瞭な輪郭の音楽は少しあからさますぎる感もあるが、サバレタのハープは一つの個性を示していて面白い。ラスキーヌのような完璧さはないし、グランジャーニのような表現力もないが、古代楽器のような、太鼓に弦をつけたような響きや実直な演奏ぶりは面白い。ともあれちょっと繊細さが足りない(オケ含め)からここでは無印としておきます。
ハリウッド四重奏団他(CAPITOL他)CD
やっぱり繊細さが欲しい、ドビュッシーには。まばゆく柔らかく儚いひびきが必要だ。舞曲表現も優等生的で確かに正確だが音楽を浮き立たせるような「揺らし」がない。いいんだけれども、私はよくある演奏、という聴後感。無印。
フィリップス(HRP)ストコフスキ指揮フィラデルフィア管弦楽団(ANDANTE)1931/4/4
変な演奏。なんだか妙に分厚い。雰囲気は悪くないし、音楽も流れて聴き易いのだが、録音の悪さもあって幻想が足りない。典雅な雰囲気の無い独特の演奏。
○ドゥローワ(Hrp)ガウク指揮ソヴィエト国立放送交響楽団のメンバー(MELODIYA/brilliant)CD
輪郭が明確な演奏だ。しかしガウクとは思えないほど表情付けが巧い。フランス的というか、少なくともハリウッド四重奏団あたりがやっていたくらいのレベルには達しているのである。ラスキーヌを思わせる力強いハープの音にドライヴされ、楽曲は至極まっとうに気持ちをドビュッシーの旋律と響きの「はっきりとした美しさ」を浮き彫りにされていく。そう、この曲は印象派でもなんでもない、まったく明確な旋律と構造をもった不明瞭のかけらもない曲なのであり、プロがまとめれば失敗しようがないのである。◎でもいいくらいだが、○にしておこう。何しろ、ガウクとは思えないくらいアメリカ的なニュートラルさがあったのだから。うますぎます。。
○ピエール・ジャメ(Hrp)キャプドヴィエル指揮室内楽協会管弦楽団(TIMPANI/ducretet thomson)1952/6/16・CD
P.ジャメの演奏はどこか地味である。だから逆に静かな曲には調和して美しくやわらかい光彩をはなつ。ただ・・・録音が悪すぎる。悪録音の場合よほどの個性を発揮していないと「ぱっとしない」以外の印象が残らないものである。けして悪演奏ではあるまい、しかし静かで穏やかという以外の感想はまったく出なかった。○にはしておく。
~断片
ピエール・ジャメ(Hrp)ブーレーズ指揮アンサンブル・アンテルコンタンポラン(AIH)LIVE、DVD
死の一年前のインタビュー映像をまとめた回顧的な企画で、私的な弟子の演奏会風景をまじえた最後に、「これで私は音楽人生を終えた」と感慨深く語るごく短い私的映像が入る。冒頭のみでほとんど全容はわからないが、娘マリ・クレールを通しての依頼に駆け付け指揮してくれたブーレーズへの尊敬と感謝の言葉が97歳の老教師から語られる、連綿と確かに繋がっているフランス楽派の結束に羨ましさを覚えたりした。短いが素晴らしい記録映画で英語字幕あり、機会があればぜひ。但し演奏は見えないので無印。
○グランジャーニ(hrp)ハリウッド四重奏団ほか(CAPITOL/EMI)
ハープ独奏のためのアンサンブル集は録音当時としては珍しかったことでしょう。ラヴェルの序奏とアレグロ、グランジャーニ自身の作を含むソロ曲が併録されています。線が太くて耳に迫る音。ギター並みの迫力は、アメリカ録音のせいだけでもないでしょうね。はっきりした表現ですから好き嫌いはあるでしょうが、ラスキーヌのように透徹したアプローチとは異なるドビュッシーが妙に真に迫っています。この人については余り調べていないので、このレコード以外知りませんが、面白そうですね。ハープのイメージが少し変わりました。ドビュッシーと個人的に親交もあったとのことです。
○グランジャーニ(hrp)シルバン・レビン指揮ビクター弦楽合奏団(ANDANTE)1945/3/12・CD
作曲家ゆかりの男性ハーピスト、グランジャーニの旧録。野太く力強い音はやや悪い録音のせいか幾分後退し、寧ろロマンティックなニュアンスの微妙な揺らぎさえ感じさせる雰囲気あるものに仕上がっている。テンポは幾分速く爽やかさに拍車をかける。なかなか普通に聞ける佳演。
○グランジャーニ(hrp)F.スラットキン指揮コンサートアーツ弦楽合奏団(CAPITOL他)
しっかりした演奏、といってもドイツ風の重い堅牢な演奏ということではなくて骨組みのしっかりした緩くならない演奏という意味である。グランジャーニのまったく安定した表現は曲と時代と作曲家そのものを知り尽くした人ならではというものか。バックオケもしっかりしている。スラットキン父のおかげだ(自分も弾いているみたい)。グランジャーニは指がしっかりしていて、とにかくパキパキいうのが心地いい。品性の溢れるセンスあるエスプリに満ちた音色にも惹かれる。技術的にはずいぶんと余裕があり、もっとバリバリ技巧をひけらかしてもいいくらいなのに、ここが品格というものなのだろう。世俗的な舞曲の最後はちょっとテンポを落としてスケールを大きめに表現しているが、最後まで品は失わない。素晴らしい。録音マイナスで○。ハリウッド四重奏団共演盤と同一の可能性あり(スラットキンはハリウッド四重奏団のファーストヴァイオリン)。(2005以前)
同じ音盤を何度書くんだって話だが、こんかいは再生機器によって印象がこうも変わるかという話。ギタリスティックで男らしい演奏と書いていたけれども、わりと自然な環境で聴くと気にならない。音色が比較的モノトーンではあるのだが音楽が音楽だけに、それそのものの色は明らかに聴こえてくるし、野太さというのはマイクセッティングの問題のようだ、聴取環境によって不自然さは十分吸収できた。ラスキーヌらのような女性ハーピストならではの軽やかな幻想は無い。しかし、律動と緊密さの中に香気が程よく漂う細やかさで、アングロサクソン的なアンサンブルの中にあるからか、英国の演奏を聴いているような、穏やかで、サロン的過ぎない純音楽的感興をおぼえる。技巧的には完璧。○。 (2009/10/8)
○グランジャーニ(hrp)ブダペスト弦楽四重奏団(BRIDGE)CD
いかんせん古くて音が悪いがこのハーピストの芯の通ったリリシズムを存分に味わえる佳録だ。完全にハープを前面に押し出した録音となっており、グランジャーニの同曲の記録中でも最も細かいところまで聴くことが出来るものになっている。全く素晴らしい技巧と音楽性のバランスで、どこにも淀みも重さもなく、かといって軽く透明感だけしかない類の演奏とも違う。改めてドビュッシーの現代ハープの書法の素晴らしさにも感銘を受ける。また雰囲気がいい。ブダペストも表立ってはこないが完璧な音響を響かせている。世俗的な舞曲における彼らの急くように煽るテンポと、それに応えてハープの魅力を存分に振り撒くグランジャーニの極めて自然でなおかつ覇気のある演奏ぶりにかつてないカタルシスをおぼえた。録音マイナスで○にしておくが、今まで聞いた中でも第一級の演奏である。古い録音に慣れているかたには是非お勧めする。
○メイソン・ストックトン(hrp)F.スラットキン指揮コンサート・アーツ弦楽合奏団(CAPITOL)LP
遅めのテンポで確かめるように進むが決して表現が強くはならず比較的繊細にできているほうである。金属的な音がやや耳につくが(ハープ)ストレートに楽しめるものとは言えるだろう。とつとつとした印象すらあたえるソリストではあるが決して技術が無いわけではないと思う。味が無いだけだ。○。
○バートレット(HRP)バルビローリ指揮NGS室内管弦楽団(NGS)1927/1/3・SP
バルビローリ指揮活動初期の録音群のうちのひとつで、前にCD化していたと思うのだが・・・別記したWEB配信元によればバートレットはピアノとの表記があるがハープ。演奏は時代なりの纏綿としたフレージングを多用しそうなものだがそれは世俗的な舞曲の最後だけで、それ以外はテンポ設定もそれほど遅くは無く、音色はいいのだが解釈的には寧ろ無個性にも感じる。特に後年有名となった弦楽器の連綿と繋がるボウイングはここでは聴かれない。SP期ならではのやり直しのきかない、そのあたりの多少のアバウトさは仕方あるまい。全般私は普通に楽しめた。○。
サバレタ(HRP)フリッチャイ指揮ベルリン放送交響楽団(DG)1957/1
明瞭な輪郭の音楽は少しあからさますぎる感もあるが、サバレタのハープは一つの個性を示していて面白い。ラスキーヌのような完璧さはないし、グランジャーニのような表現力もないが、古代楽器のような、太鼓に弦をつけたような響きや実直な演奏ぶりは面白い。ともあれちょっと繊細さが足りない(オケ含め)からここでは無印としておきます。
ハリウッド四重奏団他(CAPITOL他)CD
やっぱり繊細さが欲しい、ドビュッシーには。まばゆく柔らかく儚いひびきが必要だ。舞曲表現も優等生的で確かに正確だが音楽を浮き立たせるような「揺らし」がない。いいんだけれども、私はよくある演奏、という聴後感。無印。
フィリップス(HRP)ストコフスキ指揮フィラデルフィア管弦楽団(ANDANTE)1931/4/4
変な演奏。なんだか妙に分厚い。雰囲気は悪くないし、音楽も流れて聴き易いのだが、録音の悪さもあって幻想が足りない。典雅な雰囲気の無い独特の演奏。
○ドゥローワ(Hrp)ガウク指揮ソヴィエト国立放送交響楽団のメンバー(MELODIYA/brilliant)CD
輪郭が明確な演奏だ。しかしガウクとは思えないほど表情付けが巧い。フランス的というか、少なくともハリウッド四重奏団あたりがやっていたくらいのレベルには達しているのである。ラスキーヌを思わせる力強いハープの音にドライヴされ、楽曲は至極まっとうに気持ちをドビュッシーの旋律と響きの「はっきりとした美しさ」を浮き彫りにされていく。そう、この曲は印象派でもなんでもない、まったく明確な旋律と構造をもった不明瞭のかけらもない曲なのであり、プロがまとめれば失敗しようがないのである。◎でもいいくらいだが、○にしておこう。何しろ、ガウクとは思えないくらいアメリカ的なニュートラルさがあったのだから。うますぎます。。
○ピエール・ジャメ(Hrp)キャプドヴィエル指揮室内楽協会管弦楽団(TIMPANI/ducretet thomson)1952/6/16・CD
P.ジャメの演奏はどこか地味である。だから逆に静かな曲には調和して美しくやわらかい光彩をはなつ。ただ・・・録音が悪すぎる。悪録音の場合よほどの個性を発揮していないと「ぱっとしない」以外の印象が残らないものである。けして悪演奏ではあるまい、しかし静かで穏やかという以外の感想はまったく出なかった。○にはしておく。
~断片
ピエール・ジャメ(Hrp)ブーレーズ指揮アンサンブル・アンテルコンタンポラン(AIH)LIVE、DVD
死の一年前のインタビュー映像をまとめた回顧的な企画で、私的な弟子の演奏会風景をまじえた最後に、「これで私は音楽人生を終えた」と感慨深く語るごく短い私的映像が入る。冒頭のみでほとんど全容はわからないが、娘マリ・クレールを通しての依頼に駆け付け指揮してくれたブーレーズへの尊敬と感謝の言葉が97歳の老教師から語られる、連綿と確かに繋がっているフランス楽派の結束に羨ましさを覚えたりした。短いが素晴らしい記録映画で英語字幕あり、機会があればぜひ。但し演奏は見えないので無印。