湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

※旧ブログの一部コラム・記事、全画像は移植していません。こちらのコンテンツとして残します。

ヴォーン・ウィリアムズ:弦楽四重奏曲第1番

2010年12月13日 | ヴォーン・ウィリアムズ
○マッジーニ四重奏団(naxos)CD

イギリスの生んだ最も美しい弦楽四重奏曲と思う。マッジーニはそれを恐らく最も美しく演奏した団体である。しかし、余りに隙の無い100%の演奏をしてしまったがために、若きRVWの持ち込んだ借り物のような構造性や不協和音が不要に強調されて聴こえてしまい、そこまで精度を上げると不恰好だ、と思う箇所がいくつかある。また、両端楽章は基本遅いインテンポでハーモニーの調和を重視したやり方をとっているため、もっともっと盛り上がりを演じて欲しい、と思うところもある。もっとも終楽章のコーダは異様な緊張感とスピードで(ファーストがやや弱いが)カタルシスを与えてくれる。譜面には忠実な演奏だと思うので、参考にするにはいいと思う。これを聴いて自分の読みの誤りに今さら気づいたりもした。メディチ盤では気づかなかった。○。
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ウォルトン:ピアノ四重奏曲

2010年12月11日 | イギリス
○マッケイブ(P)イギリス四重奏団(Meridian)CD

イギリス音楽のスペシャリストと言うべき組み合わせだろうか。明瞭な音符の表現(音符自体の少ない曲だけれども)が生硬なテンポにつながってしまうクセもあるが、若書きのロマンティックな部分が目立つ曲で、ウォルトンにありがちな焦燥感に満ちた曲でもないので、割と落ち着いた音楽となって安心して聞ける。若書きといってもシニカルで硬質な響きへの志向ははっきりあらわれており、英国貴族の気取った風ではなく、いかにも現代人の気取ったふうである。その点でも変に揺らしたり音色を工夫したりしていないのでそのまま素直に聞ける。いい演奏とまではいかないが、聞いてそつのない演奏か。○。
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ヴォーン・ウィリアムズ:幻想曲「あげひばり」

2010年12月11日 | ヴォーン・ウィリアムズ
○グリッフィツ(Vn)プレヴィン指揮ロイヤル・フィル(TELARC)CD

やや技巧的に生硬で不安定なところもあるがさすがRPOのコンサートマスターだけあってオケと融合して柔らかな世界を作り上げていく。この曲はけして協奏曲ではなくヴァイオリンと管弦楽のための幻想曲なのだ。印象的なアルペジオの連続をかなり極端にデフォルメして弾いているところなど面白い。まさに舞い上がり静止し急降下する雲雀の気まぐれな動きである。なかなかいい演奏。○。
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ヴォーン・ウィリアムズ:幻想曲「あげひばり」

2010年12月11日 | ヴォーン・ウィリアムズ
ケネディ(Vn)ラトル指揮バーミンガム市立交響楽団(EMI)CD

面白くない。音色がまったく変わらずただ野太いまま、少しの綾も演出せずに楽譜を音にしていくだけ。この「幻想曲」は音色勝負。RVWはそもそも金属質の細い音で正確な音程を明瞭に示しながらも木の楽器の醸す包み込むような柔らかい響きを一貫して保っていく必要がある作曲家で、しょうじき楽譜に見えているよりも遥かに難しい楽曲を書いた人だ。そこをまるで理解しないかのように、まるで若手ヴィルツオーソにありがちな芸風で、「棒弾き」するだけではガッカリしてしまう。しかも強いパセージでは荒さが目立ち細かいミスのようなものが聞こえる。雲雀が舞い上がり急降下する情景は浮かばない。譜面がかなり自由に書かれているソロの場面でも、印象的な分散和音を揺らすことも張り詰める長い音符をじっと保つこともなく、ただ譜面のままに豪快に弾いてみせる。確かに若さゆえの面白みを感じる人もいるだろうが、私はひたすら残念だった。無印。
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シベリウス:交響曲第7番

2010年12月10日 | シベリウス
○セル指揮クリーヴランド管弦楽団(CO)1965live・CD

録音状態がよく、セルのヨーロッパ的な側面もよく聴き取れるというか、意外と重みある響きとスケールの大きな盛り上がり、そこにライヴ的前進力の加わる程よいマッチングを楽しむことができる。シベ7の演奏にはバルビローリのようにいわゆる作曲家晩年スタイルに沿った形で遅いテンポと透明感を保ちアンサンブルの妙を繊細に示していくやり方が適していると思うが、ここでは2番や5番を思わせる「まっとうな交響曲のやり方」に近い、力強さを示すような表現が通されている。しかし不自然さはもちろんない。もっと古い指揮者の大づかみにまっすぐ突進するような解釈ではなく、音符を緊張感の中すべて表現し尽くすようにしっかりと、なおかつ力感の不自然さや不恰好さを排除し、結果深く印象的な聴感をのこす。結構な名演であり、客席反応は穏やかだが、もっと聴かれていい。○。
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シベリウス:交響曲第4番

2010年12月10日 | シベリウス
○ロジンスキ指揮NYP(columbia)1946/3・LP

力強い演奏ぶりでオケの技量も最大限に引き出されている。この曲がけしてシベリウスの特異点ではなく5番の前、7番の前に位置づけられる「交響曲」であることを強く印象付ける演奏。ロジンスキはライヴにおいては解れも辞さない前進力をもって押し通す傾向がみられるが、スタジオではその特質のみ残し弱点を解消したスケールの大きな響きの感覚も味わうことができる。録音状態はけしてよくはないが、ぎりぎり鑑賞に堪えうるレベル。○。
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フランセ:弦楽三重奏曲

2010年12月08日 | フランス
○シベリウス三重奏団(INTEGRAL)CD

こういう軽い曲の演奏は如何に遊ぶかで(もちろん「名技性において」)決まってくるものだが、実にまっすぐに、譜面に忠実に、若干控えめに演じている。しかし、聴きなれた同曲が実はこういう構造をしていたんだ、とか、技巧派フランセの仕組んだからくり時計のような仕掛けにはっとさせられることしきりで、とくに終楽章展開部やコーダでは現代的な硬質な響きが精妙に組み合わされているところがはっきりとききとれ、古いヴィルツオーソらのただ弾きまくるような演奏にくらべ内容的に勝っていると感じられるところがある。私など譜面も持っていて弾いたりしていたのに、終楽章にカットがあることがあることに(この演奏ではカットはない)初めて気が付いた次第でもある。フランセが軽音楽作曲家兼ピアニストだと思っていたら大間違い、ナディア・ブーランジェの秘蔵子、アンファン・テリブルだったことを実感できる。○。
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メレディス・ウィルソン:交響曲第2番「カリフォルニアの伝道」

2010年12月07日 | アメリカ
コーツ指揮ロス・フィル(放送)初演live・web音源

チャップリンの映画音楽で有名なウィルソンの表題交響曲。後期ロマン派交響曲の範疇にあり、霊感の薄い印象がある。とくに前半楽章が聴くにたえない。動機が単なる動機のままメロディを形成せず進行する1楽章など掴み感がゼロ、こけおどしのような大きな響きは半世紀前のロシア国民楽派の凡作のようだ。表題性を含め帝政ロシア時代のグリエール、イリヤ・ムーロメッツを彷彿とさせるが、より単純で洗練された響きと動きはラフマニノフ後期を思わせる。後半楽章になると突然民族性があらわになり、チャールストンのリズムなど唐突に聴かれる。オリンピック音楽のような楽しさで多彩な書法にやっと耳を惹かれるようになる。そのままフィナーレは盛り上がりをみせる。コーツは力強くはあるが決して強引さがない。こういう新作は多少の強引さをもって意思的に表現することが肝要なようにも思う。オケは上手い。なかなかバランスのとれた技術を持っている。だが特に弦楽器、譜面で戸惑うような箇所が散見されるのは残念。客席反応もやや控えめに感じた。作曲家を含むスピーチが前後に入る放送録音。無印。
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フランツ・シュミット:クラリネット五重奏曲ハ長調

2010年12月07日 | ドイツ・オーストリア
○ヤノスカ(Cl)ルソ(P)他(marcopolo)CD

正式名称は「クラリネット、ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのための五重奏曲」であり、内容的には寧ろピアノ五重奏曲と言ったほうがいい。クラリネットは中音域で他の弦楽器同様平易なフレーズをユニゾンで吹き継いでいくなど余り目立たず、かたやピアノは最初から最後まで弾き通しである。2楽章間奏曲などピアノソロのみによるものでロマンティックで美しい。とにかくフランツはウィーンの作曲家としてブルックナーの影響以上にブラームスの影響を受けているようで、それほど構造性を擁せずいわばブラームス弦楽五重奏曲のようなあからさまな後期ロマン派的語法を引用しつつ、レーガーを薄めたようなかんじの和声の適度な新鮮味によって、腐臭がわくのを避けている。時間上はブルックナー的で全曲の演奏に1時間を要するものの、時間を感じさせない「薄さ」があり、環境音楽的に「邪魔しない音楽」という役割をよく果たしてくれる。フランツの室内楽はいくつかあり、クインテットは三曲あるがこの曲が旋律の魅力もアンサンブルのこなれ具合も丁度よく、またこの盤の演奏が室内楽としてとてもうまくできており、ソリストの妙な突出も技術上の弛緩もなく楽しめる。○。現在はamazonでもmp3配信されている。
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ウォルトン:交響曲第1番

2010年12月06日 | イギリス
○コリン・デイヴィス指揮LSO(LSO)CD

この曲はスコアリングに問題があるといわれ、細かい仕掛けをきっちり組み立てていこうとすると妙にがっしりしすぎてしまったり・・・曲自体はシベリウスよりも軽いくらいなのに・・・リズムが重くなってしまったり、だいたい過去の録音はそのようなものが多い。新しい自作自演ライブや、たとえばスラットキンの有名な録音などは逆に明るい色調が浅はかな曲であるかのような印象を与えてしまっている、これは恐らくスコアを綺麗に整理しようとする意思が過剰になってしまったのか、単にオケのせいなのか・・・コリン・デイヴィスの演奏はそれらに比べ非常にバランスがよい。決して重過ぎず、明るすぎもしない。一つにはオケの力量があると思う。ヴァイオリンの細かいポルタメントがその気合を裏付けているとおり、演奏に一切の弛緩がなく、技術も十分であるからそれが音になって現れている、更にプラスして音響に適度の重さが加えられ整えられている。ファーストチョイスには素晴らしく向いているし、逆にこれだけでいいという向きもあっていいだろう。3楽章のような冷えた響きの緩徐楽章に旋律のぬくもりを加えて独特の感傷をかもすところ、これはコリン・デイヴィスの得意とする世界だろうか。かなりの満足度。○。
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ストラヴィンスキー:「兵士の物語」組曲

2010年12月03日 | ストラヴィンスキー
○ロジェストヴェンスキー指揮ソ連国立交響楽団アンサンブルのソリスト達(venezia/melodiya)1963/9/12・CD

ちょっと珍しい正規録音の復刻で、演奏的にも充実したロジェスト60年代の覇気溢れる演奏の一つ。音響が重く、音符をきちんと確かめていくようなテンポ取りが特徴的だが、ストラヴィンスキーを正しく表現しようというやり方だろうし気になるほどではない。それより気になるのはヴァイオリンの無駄な派手さ。ニュアンスがなくひたすら大音で弾きまくる。倍音が出なくてもいいところまで出していて主張が過ぎる。ストラヴィンスキーの設定したハーモニーが単色で塗りつぶされるようなところはちょっと気になった。ロシア的というべきだろう。○。
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