◎ボールト指揮フィルハーモニック・プロムナード管弦楽団(LPOの変名)(NIXA/PYEほか)モノラル・CD
<遠くから、幽かに響くオーボエ。前期シベリウスを思わせる神秘的で壮大な開始部は、しかしシベリウスよりもロ マンティックで「世俗的」だ。シベリウスの影響下にネオ・ロマンティックな交響曲を書いた音楽的辺境の作曲家は数多いが、ウォルトンのそれはとりわけリズムの多彩さと旋律のわかりやすさ、さらに新ウィーン楽派の洗礼を受けた作曲家であることを窺わせる冷たい響きによって明確に記憶に残る。やや長大なきらいもあり、終楽章など弦の一部パートを細分化しすぎてアンサンブルがまとまりづらくなっているところもあるし、ヴァイオリン協奏曲や弦楽四重奏曲(2番)といった曲とほぼ同じ曲想構成の中で、同じ事を言おうとしているのだから、芸が無いといえば芸が無い(但し本作はそれら一連の作品の嚆矢に近い)。音楽としての質でいえば「至高」と言うわけにはいかないだろうし、シベリウスの高みとは比ぶべくもない。わかりやすいのか難解なのかわからないところもある。一番特徴的なのは2楽章で、最もウォルトンらしい嗜虐的スケルツオだが、人を惹きつけるのはやはり畳み掛けるような息の長い旋律を繰り返す1楽章、3楽章印象的な深みある音楽から再び立ち上がり終結へ向かって轟進する4楽章だろう。結部において、大団円を打ち切るようなティンパニの連打があるが、皮肉屋のウォルトンらしいアイロニーであり、戦争の影でもある。(1995記)>
BBCのクリアさも良いが、愛着あるのは古いスタジオ盤だ。LPでもレーベルによって音が違い、CDでも多分そうなのだろうけど(LPしか持ってません)、フルートを始めとする木管ソロ楽器の巧さ、音色の懐かしさ、ボールトの直截でも熱く鋭くはっきりと迫る音作り(1楽章、終楽章など複雑な管弦楽構造をビシッと仕切って、全ての音をはっきり聞かせてしまうのには脱帽・・・ここまで各細分パートしっかり弾かせて、堅固なリズムの上に整え、中低音からバランス良く(良すぎてあまりに”ドイツ的”に)響かせている演奏はそう無い)はどの盤でも聞き取れる。揺れないテンポや感情の起伏を見せない(無感情ではない。全て「怒っている」!)オケに、野暮も感じられるものの、表現主義的なまでの強烈なリズム表現は曲にマッチしている。50年代ボールトの金属質な棒と、曲の性向がしっかり噛み合った良い演奏。もっとも、ウォルトンの曲に重厚な音響、淡い色彩感というのは、違和感がなくはない。
※2004年以前の記事です
<遠くから、幽かに響くオーボエ。前期シベリウスを思わせる神秘的で壮大な開始部は、しかしシベリウスよりもロ マンティックで「世俗的」だ。シベリウスの影響下にネオ・ロマンティックな交響曲を書いた音楽的辺境の作曲家は数多いが、ウォルトンのそれはとりわけリズムの多彩さと旋律のわかりやすさ、さらに新ウィーン楽派の洗礼を受けた作曲家であることを窺わせる冷たい響きによって明確に記憶に残る。やや長大なきらいもあり、終楽章など弦の一部パートを細分化しすぎてアンサンブルがまとまりづらくなっているところもあるし、ヴァイオリン協奏曲や弦楽四重奏曲(2番)といった曲とほぼ同じ曲想構成の中で、同じ事を言おうとしているのだから、芸が無いといえば芸が無い(但し本作はそれら一連の作品の嚆矢に近い)。音楽としての質でいえば「至高」と言うわけにはいかないだろうし、シベリウスの高みとは比ぶべくもない。わかりやすいのか難解なのかわからないところもある。一番特徴的なのは2楽章で、最もウォルトンらしい嗜虐的スケルツオだが、人を惹きつけるのはやはり畳み掛けるような息の長い旋律を繰り返す1楽章、3楽章印象的な深みある音楽から再び立ち上がり終結へ向かって轟進する4楽章だろう。結部において、大団円を打ち切るようなティンパニの連打があるが、皮肉屋のウォルトンらしいアイロニーであり、戦争の影でもある。(1995記)>
BBCのクリアさも良いが、愛着あるのは古いスタジオ盤だ。LPでもレーベルによって音が違い、CDでも多分そうなのだろうけど(LPしか持ってません)、フルートを始めとする木管ソロ楽器の巧さ、音色の懐かしさ、ボールトの直截でも熱く鋭くはっきりと迫る音作り(1楽章、終楽章など複雑な管弦楽構造をビシッと仕切って、全ての音をはっきり聞かせてしまうのには脱帽・・・ここまで各細分パートしっかり弾かせて、堅固なリズムの上に整え、中低音からバランス良く(良すぎてあまりに”ドイツ的”に)響かせている演奏はそう無い)はどの盤でも聞き取れる。揺れないテンポや感情の起伏を見せない(無感情ではない。全て「怒っている」!)オケに、野暮も感じられるものの、表現主義的なまでの強烈なリズム表現は曲にマッチしている。50年代ボールトの金属質な棒と、曲の性向がしっかり噛み合った良い演奏。もっとも、ウォルトンの曲に重厚な音響、淡い色彩感というのは、違和感がなくはない。
※2004年以前の記事です