今日のお昼。
仕事の休憩中に、会社の近所の本屋へ行った。
その本屋は郊外型の大型書店で、ボクは店に着くとすぐに店に入らず、
書店の端にある自動販売機に直行し、缶コーヒーを買い、横の備え付けの
ベンチに座って缶を開けた。
1分ほどでグビグビっと缶コーヒーを飲み干し、さて、店に入って音楽雑誌
でも立ち読みするか、いやいや、たまにはビジネスコーナーの逆立ちしても
理解できない文字ばっかりの本を読んで“日本もこれから大変だなぁ~”と
分かったふりでもすっかぁ~、と立ち上がろうとした瞬間、前方から一人の
男性がこちらに向かってやって来ようとしているのが視界に入った。
え
その男性がハッキリと目に映った瞬間、思わずボクは両目を見開いてしまった。
ヘルメットのようにカッチリとしたオールバック。
漆塗りのようなテカテカポマード。
しかも微妙にアイパーもかけてらっしゃる。
お肌は小麦色のマーメイド。
両目にはトノサマバッタの生まれ変わりのようなサングラス。
上着は、和紙で編んだような薄~~い生地の白のジャンバー。
ズボンは、“パンツ”ではなく、あくまでも“ズボン
”という感じの、
ダブダブの黒のボンタンズボン。
お腹のあたりには、仮面ライダーに変身しそうな金のバックルのベルト。
足下は、キックをされたら頸動脈が一発でブチ切れそうなほど尖った、
トランプのジョーカーが穿いているような革靴。
そしてそしてそして、左の小脇には、もはや身体と一体化した、いったい
何が入っているのか死ぬまでに一度は中身を見てみたい、黒のショルダーバッグ。
まだ、生き残っていたんだ・・・
まるで僕らが10代の頃の世界からタイムスリップしてきたような風貌のおじさん。
ボクは、このレッドデータブックに絶滅危惧種としてきっと登録してあるおじさんに
見とれてしまったために、不覚にもベンチから立ち上がるタイミングを逃してしまい、
ベンチに座ったままおじさんを迎えることになった。

ようこそ
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おじさんはボクの前まで来ると、胸の内ポケットをゴソゴソさせ煙草を取り出した。
ラッキー・ストライクだった。
惜しい
あなたのような風貌の人が、洋モクなんぞ吸ってはダメだ
そんな紙漉き職人が作った工芸品のようなジャンパーの下に収まっている煙草は
国産煙草でないとサマにならないじゃないか
そうだ、あなたに最も似合う煙草は、エコーだ
パッケージのオレンジ色が眩しい
あのエコー以外には、ない
・・・ということを面と向かって言えるはずもなく、おじさんはボクの眼前で煙草に
火を点けると、モクモクと紫煙をくゆらせた。
しばらくすると、おじさんはボクに背を向け、あさっての方向に向けて煙草の煙を
吐き出しはじめた。
すると、ボクも悪い癖がはじまる。
この人、本当にタイムスリップして来た人だったら、どうしよう
りきるの妄想劇場のはじまりはじまりぃ~~
今が西暦何年か分かっているのかな?
今が昭和じゃないって教えたら、驚くだろうな。
新しいお札、持ってるのかな?
目の前で携帯電話で話しはじめたら、どんなリアクションするだろう?
“何な、そりゃ?”って訊いてくるかな?それとも“トランシーバーなんか使わんでも、
そこらへんに公衆電話があるだろうがっ
”なんて言われちゃうかな?
「ディアゴスティーニ」のシリーズ本を見て“なんでこの本はこんなに中途半端な内容なんな
”って
無理難題を言わないかな?
自動車雑誌コーナーの本を開いて、“なんでワシのクラウンが旧車扱いなんじゃ
オゥ
”なんて
ブチ切れないかな?
芸能雑誌コーナーの本を見て“どうしたんな?日本は韓国の領土になったんか?
”と戸惑わないかな?
・・・そんなことを思っていたら、突然おじさんが振り向いた。
ベンチの横にあった灰皿に煙草を捨てようとしたのだ。
反射的にボクは、ヘッタクソな背伸びをして、“あぁ、肩こりがひどくて困ったもんだぁ~”的に首を
コキコキと左右に動かした直後に、半分お尻と一体化しそうになっていたベンチから素早く腰を上げ、
そのまま店の中へと入った。
その後、店内でおじさんと会うことはなかった。
あの後、おじさんは店に入らなかったのだろうか?
もしかしたら。
もしかしたら、あのおじさん、本当にタイムスリップしてきたのかも・・・
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仕事の休憩中に、会社の近所の本屋へ行った。
その本屋は郊外型の大型書店で、ボクは店に着くとすぐに店に入らず、
書店の端にある自動販売機に直行し、缶コーヒーを買い、横の備え付けの
ベンチに座って缶を開けた。
1分ほどでグビグビっと缶コーヒーを飲み干し、さて、店に入って音楽雑誌
でも立ち読みするか、いやいや、たまにはビジネスコーナーの逆立ちしても
理解できない文字ばっかりの本を読んで“日本もこれから大変だなぁ~”と
分かったふりでもすっかぁ~、と立ち上がろうとした瞬間、前方から一人の
男性がこちらに向かってやって来ようとしているのが視界に入った。
え

その男性がハッキリと目に映った瞬間、思わずボクは両目を見開いてしまった。
ヘルメットのようにカッチリとしたオールバック。
漆塗りのようなテカテカポマード。
しかも微妙にアイパーもかけてらっしゃる。
お肌は小麦色のマーメイド。
両目にはトノサマバッタの生まれ変わりのようなサングラス。
上着は、和紙で編んだような薄~~い生地の白のジャンバー。
ズボンは、“パンツ”ではなく、あくまでも“ズボン
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ダブダブの黒のボンタンズボン。
お腹のあたりには、仮面ライダーに変身しそうな金のバックルのベルト。
足下は、キックをされたら頸動脈が一発でブチ切れそうなほど尖った、
トランプのジョーカーが穿いているような革靴。
そしてそしてそして、左の小脇には、もはや身体と一体化した、いったい
何が入っているのか死ぬまでに一度は中身を見てみたい、黒のショルダーバッグ。
まだ、生き残っていたんだ・・・
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まるで僕らが10代の頃の世界からタイムスリップしてきたような風貌のおじさん。
ボクは、このレッドデータブックに絶滅危惧種としてきっと登録してあるおじさんに
見とれてしまったために、不覚にもベンチから立ち上がるタイミングを逃してしまい、
ベンチに座ったままおじさんを迎えることになった。
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おじさんはボクの前まで来ると、胸の内ポケットをゴソゴソさせ煙草を取り出した。
ラッキー・ストライクだった。
惜しい
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あなたのような風貌の人が、洋モクなんぞ吸ってはダメだ
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そんな紙漉き職人が作った工芸品のようなジャンパーの下に収まっている煙草は
国産煙草でないとサマにならないじゃないか
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そうだ、あなたに最も似合う煙草は、エコーだ
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あのエコー以外には、ない
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・・・ということを面と向かって言えるはずもなく、おじさんはボクの眼前で煙草に
火を点けると、モクモクと紫煙をくゆらせた。
しばらくすると、おじさんはボクに背を向け、あさっての方向に向けて煙草の煙を
吐き出しはじめた。
すると、ボクも悪い癖がはじまる。
この人、本当にタイムスリップして来た人だったら、どうしよう
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りきるの妄想劇場のはじまりはじまりぃ~~
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今が西暦何年か分かっているのかな?
今が昭和じゃないって教えたら、驚くだろうな。
新しいお札、持ってるのかな?
目の前で携帯電話で話しはじめたら、どんなリアクションするだろう?
“何な、そりゃ?”って訊いてくるかな?それとも“トランシーバーなんか使わんでも、
そこらへんに公衆電話があるだろうがっ
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「ディアゴスティーニ」のシリーズ本を見て“なんでこの本はこんなに中途半端な内容なんな
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無理難題を言わないかな?
自動車雑誌コーナーの本を開いて、“なんでワシのクラウンが旧車扱いなんじゃ
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ブチ切れないかな?
芸能雑誌コーナーの本を見て“どうしたんな?日本は韓国の領土になったんか?
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・・・そんなことを思っていたら、突然おじさんが振り向いた。
ベンチの横にあった灰皿に煙草を捨てようとしたのだ。
反射的にボクは、ヘッタクソな背伸びをして、“あぁ、肩こりがひどくて困ったもんだぁ~”的に首を
コキコキと左右に動かした直後に、半分お尻と一体化しそうになっていたベンチから素早く腰を上げ、
そのまま店の中へと入った。
その後、店内でおじさんと会うことはなかった。
あの後、おじさんは店に入らなかったのだろうか?
もしかしたら。
もしかしたら、あのおじさん、本当にタイムスリップしてきたのかも・・・
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