星を読む猫

猫は、星が読める。
ある家で、住み着いてしまった野良猫を捨てようと、自動車で１５分くらい離れた人家のまばらな畑の脇に猫を置いてきた。
３日後、何事もなかったようにその猫は、お気に入りの場所にうずくまっていた。
置いてくる所が近かったのかと、今度は自動車で３０分の雑木林に猫を置いてきた。
すると、１ヶ月経ってから、また猫はいつもの場所に何事もなかったかのように寝転んでいた。
いったい、どうやって戻ってきたのだろう。
猫は、夜が好きだ。
夜になると、どこからともなく申し合わせたように、ある場所に集まり「ネコの集会」を持つ。
ただ、居合わせるだけのように見えるけれど、ここが情報交換の場所でもあり、互いの安否を確認し、ときには新入りの品定めをする場にもなる。
そんな活動時間帯の夜の空には、月と星がかかっている。
猫は、古来より身についた知恵でもって、星と月を読めるのだろう。
そうでなくては、遠く離れたところから、ただ一点に過ぎない家に戻れるはずはない。
猫は、特に雌猫は家に付くといわれている。
雄は出会いを求めてさすらうが、雌は子を産み育てる為に安定した場所を求めるからだ。
さて、猫はそれからまた捨てられたのだろうか。
よほどその家が気に入ったのであろう猫に哀れみを感じ、その家の人は仕方なくその場所を提供したとのこと。
そもそも、捨て猫をする人がいなくなれば、そんな気苦労を双方しなくてもよかったものを。
いや、「その家の人だって猫を捨てようとしたではないか」とおっしゃる方、生き物を飼うには覚悟がいるし、病人やなにやらで飼えない事情がある人もいる、捨て猫野良猫を気軽に飼うことは、心ある人ならそうそう出来ません。
更なる飼い主を探す為に奔走するのは、普通出来ないでしょう。
そして、自らの意思でなくやってくるものに、責任を問われても戸惑うばかり。
星を読める猫、実は悲しく、人のエゴが招いた切ない猫の話。