学校時代 15『ごめんね……美優』
☆ 今回は小説です
この春も定員を割っていたので覚悟はしていた。
でも、現実に廃校が決定してしまうと凹んでしまう。
そのせいじゃないだろうけど、補導委員会は、どこか力が抜けていたような気がする。
終わったのが六時半を超えていたこともあり「電話でもええんちゃいますか」と生指部長は言ってくれた。
でも、あたしはMの家に家庭訪問に行ってきた。生活指導上の家庭訪問は時間を置いてはいけないのがセオリーだ。
「きびしい懲戒になるでしょうけど、退学にはなりませんから」
いろいろ話したけど、M本人も保護者も安心したことは確かだ。なんといっても三回目の喫煙、それも三回目の今日は、逃げる途中でOLに衝突して怪我をさせている。私学なら立派な退学の理由になる。それにMの兄時に懲戒を巡ってこじれたことがあるので、一晩置いておくわけにはいかない。ちょっとしたことが疑心暗鬼になり、場合によっては弁護士が乗り出してくることもあるのだ。
さすがに疲れて、阪急電車が淀川を渡るころには舟をこいでしまった。
カタンカタン、カタンカタン、カタンカタン、カタンカタン、カタンカタン、カタンカタン……。
鉄橋を渡る音が小気味よくて、いっそうの睡魔が襲ってくる。
膝の上……というよりは胸に抱きかかえていたバッグの中でスマホが振動した。
あ……Mから? え……美優?
スマホは、妹の美優からメールが入っていることを示していた。
――お姉ちゃん、今から会えないかなあ、話があるんだ――
Mと同い年の妹はこらえ性が無い。思いついたら自分の都合であれこれ言ってくる。
美優の年齢やここしばらくの状況を考えれば話し相手になってやらなきゃならないんだけど……さすがに今夜は辛い。
――明日の午後、年休とっていくから――
鉄橋を渡り切るころには返事を打ち終えて、自分ちの最寄りの茨木駅に着くまで眠ることにした。
あくる日は母の電話で起こされた。
「もしもし、お母さん?」
疲れが取れていないので、我ながら声に棘がある。
「……ついさっき、美優が息を引き取ったの」
「え…………………」
暗い後悔がみるみる胸を満たしていった。
ごめんね……美優。
☆ 今回は小説です
この春も定員を割っていたので覚悟はしていた。
でも、現実に廃校が決定してしまうと凹んでしまう。
そのせいじゃないだろうけど、補導委員会は、どこか力が抜けていたような気がする。
終わったのが六時半を超えていたこともあり「電話でもええんちゃいますか」と生指部長は言ってくれた。
でも、あたしはMの家に家庭訪問に行ってきた。生活指導上の家庭訪問は時間を置いてはいけないのがセオリーだ。
「きびしい懲戒になるでしょうけど、退学にはなりませんから」
いろいろ話したけど、M本人も保護者も安心したことは確かだ。なんといっても三回目の喫煙、それも三回目の今日は、逃げる途中でOLに衝突して怪我をさせている。私学なら立派な退学の理由になる。それにMの兄時に懲戒を巡ってこじれたことがあるので、一晩置いておくわけにはいかない。ちょっとしたことが疑心暗鬼になり、場合によっては弁護士が乗り出してくることもあるのだ。
さすがに疲れて、阪急電車が淀川を渡るころには舟をこいでしまった。
カタンカタン、カタンカタン、カタンカタン、カタンカタン、カタンカタン、カタンカタン……。
鉄橋を渡る音が小気味よくて、いっそうの睡魔が襲ってくる。
膝の上……というよりは胸に抱きかかえていたバッグの中でスマホが振動した。
あ……Mから? え……美優?
スマホは、妹の美優からメールが入っていることを示していた。
――お姉ちゃん、今から会えないかなあ、話があるんだ――
Mと同い年の妹はこらえ性が無い。思いついたら自分の都合であれこれ言ってくる。
美優の年齢やここしばらくの状況を考えれば話し相手になってやらなきゃならないんだけど……さすがに今夜は辛い。
――明日の午後、年休とっていくから――
鉄橋を渡り切るころには返事を打ち終えて、自分ちの最寄りの茨木駅に着くまで眠ることにした。
あくる日は母の電話で起こされた。
「もしもし、お母さん?」
疲れが取れていないので、我ながら声に棘がある。
「……ついさっき、美優が息を引き取ったの」
「え…………………」
暗い後悔がみるみる胸を満たしていった。
ごめんね……美優。