高校ライトノベル
『魔法科高校の優等生・3』
西の空には、夕陽の束を遮るように、魔法国防軍が学校を目指して飛んでくるところだった……。
「国防軍は、学校ごと最優等生を始末しにきたんだ!?」
麗奈は、正確に悪魔政府の意思を感じた。
自分たちの掌握できない、その力のほども正体も分からない者の存在を危険と感じ、調査から抹殺の方向に舵を切ったのだ。
――調査員麗奈、ただちに現場から離脱せよ。攻撃を開始する――
国防軍から、暗号化された思念が送られてきた。
麗奈は激怒した。
自分たちの都合と思いつきで、悪魔教育を歪め、その結果正体さえ掴めない最優等生をつくりだした。それを発見も出来ず、制御の見通しもつかないと最悪の事態を考えた政府は、学校もろともに、全てを無かったことにしようとしたのである。
学校のディフェンダーたちはよくがんばった。自らにヘイストをかけ攻撃速度を速くし、互いにシェルをかけ、保健委員の主だった者は、ヒーラーにまわりディフェンダー達のHPの補充に回った。
さすがに、特別養成校に指定されただけのことはあり、国防軍の突撃兵器であるギガントまで無力化した。
「矛を収めて下さい。我々は攻撃が目的ではないのです。強制調査にやってきただけなのです。危害は加えません。ひとまず学校の敷地に入れてください」
司令官が、公式思念で、学校関係者全体に訴えかけた。
「ここは、ひとまず話し合ってみましょうか?」
日和った教頭が校長の意思をぐらつかせた。
「わかった、シェルとプロテス、ヘイストを解きなさい」
シェルとプロテスは外からの攻撃には強いが、校内からの解除魔法には弱かった。
「だめです、校長……」
センターディフェンダーのジェフが言い切る前に、三つの魔法は解除され、国防軍がなだれ込んだ。
迎えに出た校長以下の管理職はクリスタルにされ、身柄を確保された。
「ユニオン(組合)のヤツラから始末しろ!」
司令官が命ずると、隊員たちは、数を頼んで魔法を無効にし、ゼンキョーユニオンの教職員たちにデスをかけていった。デスをかけられると、HPがどんどん減っていき、数十秒から数分後には存在共々、命を奪われる。もともとユニオンの教職員は管理職によって勤務成績が下げられてMPもHPも低いので、二三分で抹殺されてしまった。残りの多少骨のある教職員は生徒と共に戦ったが、HP10000の隊員数十人に取り囲まれては、ヒーラーのHP回復も間に合わない。ヒーラーはディフェンス能力が低いので、初期の攻撃で抹殺されてしまい、もう間に合うほどの数が残っていなかった。
降伏は許されなかった。教師も生徒もカーズをかけられ、能力回復が出来なくなったところを見計らって、デスをかけられ、戦闘開始後三十分立って残っているのは、美人優等生のハーアイオニーと麗奈だけになってしまった。
ハーアイオニーは召喚魔法を使い、召喚獣で、かなりの国防軍を撃破したが、もう、召喚能力全てを使い果たした。最後の力を振り絞ってデシェルをかけ、国防軍のディフェンス能力を落とした後、彼女の属性魔法で最強のファイガをかけ、国防軍の半数の戦闘力を奪ったが、そこまでだった。
魔力を全て失った、ハーアイオニーは普通の少女になってしまったが、国防軍は容赦しなかった。
「ただの人間にもどったのなら……いや、それさえ哀れみを乞う擬態かもしれん。一気に片づけろ!」
司令官の命令と共に、パルスレーザー銃が撃ちまくられ、ハーアイオニーは四肢をばらばらにされ、血や内臓をまき散らし、それさえ数秒後には灰にされてしまった。
皮肉なことに、そのことによって、彼女がポッターのように、みんなの共同幻想ではなく、実在であったことが証明された。
気づくと、麗奈は裏山の向こう側に居た。
「これって……ハーアイオニーが、死ぬ寸前に、わたしにかけたテレポ……」
麗奈は、そのとき始めて気づいた。自分のHPとMPが、ほとんど∞(無限大)になっていることを……!
デビル魔法学校の最優等生は……自分自身だった。
いや、ちがう。
だれかが、最優等生になり、そのちからの桁外れの大きさに自分自身を危険と思い、その力を、全校生徒に分けて、自分は物理的に姿を消滅させた。その正体不明の優等生が、その力だけ麗奈に預けたのだ。
むろん麗奈に、こんな力をコントロールすることはできない。力の大きさのために発狂するだろう。
ロックされていることに気づいた。麗奈が、この力を使いこなせる時まで。
その日を境に麗奈の姿はきえた。公式には戦死ということにされている。
麗奈の復活には数十年の歳月がいるかもしれない。あるいは永遠に……。
魔法科高校の優等生 第一部 完
『魔法科高校の優等生・3』
西の空には、夕陽の束を遮るように、魔法国防軍が学校を目指して飛んでくるところだった……。
「国防軍は、学校ごと最優等生を始末しにきたんだ!?」
麗奈は、正確に悪魔政府の意思を感じた。
自分たちの掌握できない、その力のほども正体も分からない者の存在を危険と感じ、調査から抹殺の方向に舵を切ったのだ。
――調査員麗奈、ただちに現場から離脱せよ。攻撃を開始する――
国防軍から、暗号化された思念が送られてきた。
麗奈は激怒した。
自分たちの都合と思いつきで、悪魔教育を歪め、その結果正体さえ掴めない最優等生をつくりだした。それを発見も出来ず、制御の見通しもつかないと最悪の事態を考えた政府は、学校もろともに、全てを無かったことにしようとしたのである。
学校のディフェンダーたちはよくがんばった。自らにヘイストをかけ攻撃速度を速くし、互いにシェルをかけ、保健委員の主だった者は、ヒーラーにまわりディフェンダー達のHPの補充に回った。
さすがに、特別養成校に指定されただけのことはあり、国防軍の突撃兵器であるギガントまで無力化した。
「矛を収めて下さい。我々は攻撃が目的ではないのです。強制調査にやってきただけなのです。危害は加えません。ひとまず学校の敷地に入れてください」
司令官が、公式思念で、学校関係者全体に訴えかけた。
「ここは、ひとまず話し合ってみましょうか?」
日和った教頭が校長の意思をぐらつかせた。
「わかった、シェルとプロテス、ヘイストを解きなさい」
シェルとプロテスは外からの攻撃には強いが、校内からの解除魔法には弱かった。
「だめです、校長……」
センターディフェンダーのジェフが言い切る前に、三つの魔法は解除され、国防軍がなだれ込んだ。
迎えに出た校長以下の管理職はクリスタルにされ、身柄を確保された。
「ユニオン(組合)のヤツラから始末しろ!」
司令官が命ずると、隊員たちは、数を頼んで魔法を無効にし、ゼンキョーユニオンの教職員たちにデスをかけていった。デスをかけられると、HPがどんどん減っていき、数十秒から数分後には存在共々、命を奪われる。もともとユニオンの教職員は管理職によって勤務成績が下げられてMPもHPも低いので、二三分で抹殺されてしまった。残りの多少骨のある教職員は生徒と共に戦ったが、HP10000の隊員数十人に取り囲まれては、ヒーラーのHP回復も間に合わない。ヒーラーはディフェンス能力が低いので、初期の攻撃で抹殺されてしまい、もう間に合うほどの数が残っていなかった。
降伏は許されなかった。教師も生徒もカーズをかけられ、能力回復が出来なくなったところを見計らって、デスをかけられ、戦闘開始後三十分立って残っているのは、美人優等生のハーアイオニーと麗奈だけになってしまった。
ハーアイオニーは召喚魔法を使い、召喚獣で、かなりの国防軍を撃破したが、もう、召喚能力全てを使い果たした。最後の力を振り絞ってデシェルをかけ、国防軍のディフェンス能力を落とした後、彼女の属性魔法で最強のファイガをかけ、国防軍の半数の戦闘力を奪ったが、そこまでだった。
魔力を全て失った、ハーアイオニーは普通の少女になってしまったが、国防軍は容赦しなかった。
「ただの人間にもどったのなら……いや、それさえ哀れみを乞う擬態かもしれん。一気に片づけろ!」
司令官の命令と共に、パルスレーザー銃が撃ちまくられ、ハーアイオニーは四肢をばらばらにされ、血や内臓をまき散らし、それさえ数秒後には灰にされてしまった。
皮肉なことに、そのことによって、彼女がポッターのように、みんなの共同幻想ではなく、実在であったことが証明された。
気づくと、麗奈は裏山の向こう側に居た。
「これって……ハーアイオニーが、死ぬ寸前に、わたしにかけたテレポ……」
麗奈は、そのとき始めて気づいた。自分のHPとMPが、ほとんど∞(無限大)になっていることを……!
デビル魔法学校の最優等生は……自分自身だった。
いや、ちがう。
だれかが、最優等生になり、そのちからの桁外れの大きさに自分自身を危険と思い、その力を、全校生徒に分けて、自分は物理的に姿を消滅させた。その正体不明の優等生が、その力だけ麗奈に預けたのだ。
むろん麗奈に、こんな力をコントロールすることはできない。力の大きさのために発狂するだろう。
ロックされていることに気づいた。麗奈が、この力を使いこなせる時まで。
その日を境に麗奈の姿はきえた。公式には戦死ということにされている。
麗奈の復活には数十年の歳月がいるかもしれない。あるいは永遠に……。
魔法科高校の優等生 第一部 完