大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・希望ヶ丘青春高校有頂天演劇部の鉄火場④戯れに恋はすまじき……

2016-09-27 06:28:27 | 青春高校
希望ヶ丘青春高校有頂天演劇部の
鉄火場④戯れに恋はすまじき…… 



 

 日曜祭日考査中もブログは休んじゃいけないという三好部長の申しつけで、本日は、ぼく由利鎌之が担当します。

 ぼくは性別不明ということでお願いします。


    

 上の左側の写真の四人の一人がぼくです。で右側のアップが楽屋でのぼくです。
「ぼく少女」というわけではありません。あえて性別は伏せております。わが自由が丘青春高校は偏差値もお行儀もいいのですが、制服がありません。だから、その日その時の気分で好きな格好で登校しています。

 だから見かけでは、性別さえ判然としない者が、学校には数人おります。ま、その中の一人と思ってください。

 高校三年間、演劇部をやっていれば恋する役も回って来るかな……というわけでもないんですが、芝居を演るものは恋の一つもできなきゃいけません。

 故森繁久彌先生もおっしゃっておいででした
「役者は人生のピンとキリを知っておかなきゃいけないよ」
 で、試しに……と言っても、最初から企んだわけじゃないんですけど、去年の地区発表会のおりに程よい重さの道具があったので、重くて持てないふりをしたんです。

 てっきり、すぐそばにいるO高校の男子が声を掛けてくれると思ったんです。

 しかし、こいつが度し難い……草食系。有り体にいえば玉無し野郎。すみません、下卑た言葉を使いました。
 この鉄火場ブログは、文法上の間違いが無い限り打ち直しはしないというのが仁義です。
 で、この玉無し野郎の替りにやってきたのがO高校の顧問。ま、即興のエチュードのもっとシビアなものなんで、中断することもできず、ご親切に甘える風にして「ありがとうございます」と言いました。

 言っておきますが、このO高校の先生の対応は間違っています。
 本来ならば、顧問として「女子高生」が困っているのを見過ごしにした玉無し男子生徒を指導すべきです。しかし、こちらも仕掛けた都合、意に反して引っかかった、この顧問を相手にせざるをえません。
 額にうっすらと汗がにじむころ、そっと額の汗を拭くふりをして、うなじとTシャツの袖の中、腋の下が先生に見えるようにしました。
 明らかに男として反応されました。
「ありがとうございました」
 きっちり挨拶するときも、胸の谷間が自然に見えるように工夫もしました。

「おい、鎌の字、初手からやりすぎだぜ」

 三好先輩は、ほとんど姿も見せないのに、部員のわずかな挙動も見逃してはおられません。解散後チクリとご意見されました。
 しかし、三好先輩もなかなかのお方、さりげなく部員名簿を椅子の上に置き、O高校の先生の目に触れるようにし。
「この由利鎌之っての、なんだか男みたいな名前に見えますけど、カマユキじゃなくてカマノって読みましてね。家は古風な置屋で、もちろん今は……あ、穴山さん!」
 ごく自然に、O高校の顧問の先生が写メる間をお作りでした。

 それから……いろんなことがあって、この顧問の先生とは個人的にもお付き合いすることになりました。お付き合いと言っても先生の身分に関わるような一線は越しません。

 ところが、先日劇団〇〇の公演を御一緒させていただいた時には「帰りには迫られるなあ」と予感しました。

 インターミッションの間に化粧室へ行くふりをして、駐車場の先生の車のブレーキオイルを程よく抜いておきました。
 詳しい描写は、個人の特定につながりますので、ほんのさわりを……。
「ん、ブレーキの利きが甘いな……」
 目の前に二トントラックが迫ってきました。

 ぼくは、とっさにシートベルトとドアロックを外し、車の外に転がり出ました。先生の車は、あえなくトラックに衝突。中破といった壊れよう。
「あの時、先生は、わたしの身を案じ、ドアから出してくださったんです。あの機敏な行動がなければ、わたしも無事じゃありませんでした」

 ぼくの怪我? これでもスタントの資格持ってるんで、ほんのかすり傷。まあ、他校の「女生徒」を車に乗せていたことは少し問題になりましたが、勇敢な自己犠牲で救ったことでチャラです。

 戯れに恋はすまじき……それにしても、あのO高校の草食系、今年こそは……。  
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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・45『アンナカレーニナ』

2016-09-27 06:06:55 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評・45
『アンナカレーニナ』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ

 これは悪友の滝川浩一が身内に流している映画評ですが、もったいないので本人の了解を得て転載したものです


 見終わって 陶然てのか 茫然てのか…ボ~ッと歩いてました。

 とは言え 気付くと ちゃんとトンカツ屋の前にいてましたけどね。 トルストイの原作に触れたのは随分昔、以降 読み返してはいませんが、内容は汲み取っていると思とりました……アタシャ この物語の何を読んでたんでしょうねぇ、自分が物語のホンの上っ面だけを素通りしていたんだと、丸太でぶん殴られた気分です。

 その本作ですら、原作の一部をクローズアップしているに過ぎないと断ってあります…げに恐ろしきはトルストイの天才であります。
 この作品が 先日のアカデミー賞で主要外4ノミネート(衣装デザインのみ受賞)だなんぞと…メロドラマは嫌われるってのと、ロシア文学だってのをさっ引いても…納得いかない。
 主演女優賞5作品の内、アムール/インポッシブル/ハッシュパピーの3本を見ていないが、本作のキーラ・ナイトレイが見劣りするとは思えない。ジョー・ライト(プライドと偏見/ハンナ)の監督。トム・ストッパード(恋に落ちたシェイクスピア)の脚本も、メラニー・アン・オリヴァー(レ・ミッズ)の編集も、目を見張るばかりなのに……話の内容は あまりにも有名、なんせ見たことも読んだことも無い人でもご存知……「世界の名作百選」なんてな企画があれば必ず低くとも20位以内に入っている、140年前の作品なのに…
 本作は殆どのシーンが劇場内で演じられる芝居の形に成っている。舞台最奥の搬入口が開くと、その先にリョービンの荘園が現れ そのままロケシーンとなる。劇場の天井が開いて花火が見えたりもする……舞台劇と映画的手法の見事なミクスチャー、敢えて映画の自由な表現法を捨てる事によって、そして舞台劇をアップで見せるテクニックを最大限に駆使して見事な映像をクリエイトしている。人物をアップにする事に拠って、貞淑な妻から人生初の恋に出会って怯える女、滅びを予感しながらも恋に飛び込んだ幸せの絶頂、そして混乱
から死へと至るアンナ。妻の噂を聞いても許そうとし、確信しても包み込もうとし、決定的に裏切られてすら その先に愛を見いだすカレーニンが見事に立ち上がるにとどまらず、リョービンとキティのカップルやオブロンスキーとドリー夫妻……物語の周囲を固める人々が鮮やかに浮かび上がっている。今までに私の知る限り4作の映画化作品があり、そのどれと比較しても本作は“最高”と評価できる。
 
 まさに21世紀の“アンナ・カレーニナ”がここにある。

 アンナの情夫であるヴロンスキーが登場した時には思わず笑いそうになった。あまりにも少女漫画から抜け出したような美男子、これまでの映画では単なるスケコマシ風に描かれる彼とその取り巻きも 皆 人間的な匂いを持って描かれている、この点がもっとも印象的であり、だからアンナの苦悩も肉を持ったリアリティを伴って現出する。衣装が素晴らしいのは、これもわざわざ書く必要無し……まだまだ触れたいシーンは山ほどあるが、これ以上はご覧になる方の感動の邪魔ってもんで もうやめます。メロドラマなんか見ないとおっしゃる方もおいででしょう。どうか、騙されたと思って劇場にお出かけ下さい。世のメロドラマの代表のような内容ですが、そこは大トルストイの代表作の一つ、その魂の物語に触れて下さい。
 最大級の賛辞をもって 心よりお勧めいたします。

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