ライトノベルセレクト№87
『魔法科高校の優等生・2』
麗奈は、がっくり疲れて、魔法の杖を降ろした。これで三人目だ……。
今の今まで憂い顔の最優等生だった魔岡レオは、タヌキに戻って、学校の裏山に逃げていった。
ヘブンティーンのスタッフも、呼びに来た先生も、なんのために、こんなところにいるのか分からなくなって戻って行ってしまった。
「ねえ、魔岡レオって、あたしの兄貴のことなんだけどさ」
麗奈は、最後の望みを託して、優等生美少女のハーアイオニーに聞いてみた。
「魔岡、レオ……だれ、それ?」
ハーアイオニーの記憶にも残っていないようなら、確実なガセである。
実は、このデビル魔法科学校の最優等生である生徒がだれであるか、分からなくなってしまったのである。
さっき、タヌキのレオが悩んでいたように、教職員や生徒の中で、魔法とは何なんだろうかという懐疑論が昔からくすぶっていた。バカをカボチャに出来ても、バカを賢い人間にすることはできない。落ちてくる爆弾を回避はできても、それは別の場所に爆弾をよけるだけで、爆弾そのものを消してしまうことはできない。
魔法とは、その場しのぎの技術に過ぎず、魔法の無力さは魔法使いや魔女が、気づき始めていた。中には、さっさと、ほとんどの魔法を見限って宅配便の会社を作って大当たりした女の子もいた。
魔法文部科学省も危機を感じ、官僚らしく特色有る魔法課高校づくりや、学区制の廃止、魔法課教師の教員免許の更新制度をつくってみたりしたが、ほとんど成果はあがらなかった。
そこで、教委や学校は、既存のカリキュラムの徹底した反復学習や世界中の魔法と名のつくものは、中国の妖術から、アメリカはオズの魔法、日本の忍法に到まで取り入れた。
いわば魔法のてんこ盛りで、そこになんの体系性も無かった。
当然落伍者が一杯出た。しかしベースブリッジ魔法相は、その試行錯誤と競争の原理の中から、真の魔法使いが育つと、強行し、大量の落伍者を出しながらも、一握りの優秀な魔法使いのタマゴを生み出した。
このデーモン魔法科高校にも、素晴らしい才能の持ち主が発見された。
しかし、それが誰なのかが分からなくなってしまった。
訓練の中には、人の心に入ったり、人に化けたりという魔法も含まれている。それをくり返しているうちに、分からなくなってしまったのである。
学校関係者の記憶からも記録からも消えてしまった。
いや、存在しているのだろうが、その存在が分からなくなってしまった。
学校は、その事実をひた隠しにしてきたが、魔法相の知るところとなり、その調査のために送られてきたのが麗奈だった。麗奈は実際レオ(麗悪)の妹だったが、その強い透視能力をかわれて、特別調査員に任命され、その正体は学長にも知られていなかった。今まで五人の優等生にあたってみたが、みんな違った。
三人目のパリー・ホッタは惜しかったが、みんなが、居て欲しいと願う気持ちが具現化したものであった。
「お願い……」
ほとんど確信を持ち、個人的にも好意を寄せて、キスをせがんだところでポッターは消えてしまった。
麗奈は三日間泣き明かした。自分の最愛の彼を失っただけでなく、学校の希望も失ってしまったのだ。ただ、幸いなことに、ガセと分かったものには、忘却の魔法がかけられており、正体が分かるとともに、記録も記憶も、無くなってしまうことであった。
でも、麗奈の心には残っている。ポッターの時ほどではないとしても、自分の実の兄がガセで、裏山のタヌキであるショックは、けして小さなものではない。
麗奈は、百ほどもため息をつき、自分の寄宿舎であるブリフィンドールに帰ろうと、ホウキに跨ったときである。
「今日の夕陽は弱いなあ……あっ!?」
西の空には、夕陽の束を遮るように、魔法国防軍が学校を目指して飛んでくるところだった……。
『魔法科高校の優等生・2』
麗奈は、がっくり疲れて、魔法の杖を降ろした。これで三人目だ……。
今の今まで憂い顔の最優等生だった魔岡レオは、タヌキに戻って、学校の裏山に逃げていった。
ヘブンティーンのスタッフも、呼びに来た先生も、なんのために、こんなところにいるのか分からなくなって戻って行ってしまった。
「ねえ、魔岡レオって、あたしの兄貴のことなんだけどさ」
麗奈は、最後の望みを託して、優等生美少女のハーアイオニーに聞いてみた。
「魔岡、レオ……だれ、それ?」
ハーアイオニーの記憶にも残っていないようなら、確実なガセである。
実は、このデビル魔法科学校の最優等生である生徒がだれであるか、分からなくなってしまったのである。
さっき、タヌキのレオが悩んでいたように、教職員や生徒の中で、魔法とは何なんだろうかという懐疑論が昔からくすぶっていた。バカをカボチャに出来ても、バカを賢い人間にすることはできない。落ちてくる爆弾を回避はできても、それは別の場所に爆弾をよけるだけで、爆弾そのものを消してしまうことはできない。
魔法とは、その場しのぎの技術に過ぎず、魔法の無力さは魔法使いや魔女が、気づき始めていた。中には、さっさと、ほとんどの魔法を見限って宅配便の会社を作って大当たりした女の子もいた。
魔法文部科学省も危機を感じ、官僚らしく特色有る魔法課高校づくりや、学区制の廃止、魔法課教師の教員免許の更新制度をつくってみたりしたが、ほとんど成果はあがらなかった。
そこで、教委や学校は、既存のカリキュラムの徹底した反復学習や世界中の魔法と名のつくものは、中国の妖術から、アメリカはオズの魔法、日本の忍法に到まで取り入れた。
いわば魔法のてんこ盛りで、そこになんの体系性も無かった。
当然落伍者が一杯出た。しかしベースブリッジ魔法相は、その試行錯誤と競争の原理の中から、真の魔法使いが育つと、強行し、大量の落伍者を出しながらも、一握りの優秀な魔法使いのタマゴを生み出した。
このデーモン魔法科高校にも、素晴らしい才能の持ち主が発見された。
しかし、それが誰なのかが分からなくなってしまった。
訓練の中には、人の心に入ったり、人に化けたりという魔法も含まれている。それをくり返しているうちに、分からなくなってしまったのである。
学校関係者の記憶からも記録からも消えてしまった。
いや、存在しているのだろうが、その存在が分からなくなってしまった。
学校は、その事実をひた隠しにしてきたが、魔法相の知るところとなり、その調査のために送られてきたのが麗奈だった。麗奈は実際レオ(麗悪)の妹だったが、その強い透視能力をかわれて、特別調査員に任命され、その正体は学長にも知られていなかった。今まで五人の優等生にあたってみたが、みんな違った。
三人目のパリー・ホッタは惜しかったが、みんなが、居て欲しいと願う気持ちが具現化したものであった。
「お願い……」
ほとんど確信を持ち、個人的にも好意を寄せて、キスをせがんだところでポッターは消えてしまった。
麗奈は三日間泣き明かした。自分の最愛の彼を失っただけでなく、学校の希望も失ってしまったのだ。ただ、幸いなことに、ガセと分かったものには、忘却の魔法がかけられており、正体が分かるとともに、記録も記憶も、無くなってしまうことであった。
でも、麗奈の心には残っている。ポッターの時ほどではないとしても、自分の実の兄がガセで、裏山のタヌキであるショックは、けして小さなものではない。
麗奈は、百ほどもため息をつき、自分の寄宿舎であるブリフィンドールに帰ろうと、ホウキに跨ったときである。
「今日の夕陽は弱いなあ……あっ!?」
西の空には、夕陽の束を遮るように、魔法国防軍が学校を目指して飛んでくるところだった……。