大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・『魔法科高校の優等生・2』

2016-09-16 06:26:05 | ノベル
ライトノベルセレクト№87
『魔法科高校の優等生・2』
       


 麗奈は、がっくり疲れて、魔法の杖を降ろした。これで三人目だ……。

 今の今まで憂い顔の最優等生だった魔岡レオは、タヌキに戻って、学校の裏山に逃げていった。
 ヘブンティーンのスタッフも、呼びに来た先生も、なんのために、こんなところにいるのか分からなくなって戻って行ってしまった。

「ねえ、魔岡レオって、あたしの兄貴のことなんだけどさ」
 麗奈は、最後の望みを託して、優等生美少女のハーアイオニーに聞いてみた。
「魔岡、レオ……だれ、それ?」

 ハーアイオニーの記憶にも残っていないようなら、確実なガセである。

 実は、このデビル魔法科学校の最優等生である生徒がだれであるか、分からなくなってしまったのである。

 さっき、タヌキのレオが悩んでいたように、教職員や生徒の中で、魔法とは何なんだろうかという懐疑論が昔からくすぶっていた。バカをカボチャに出来ても、バカを賢い人間にすることはできない。落ちてくる爆弾を回避はできても、それは別の場所に爆弾をよけるだけで、爆弾そのものを消してしまうことはできない。
 魔法とは、その場しのぎの技術に過ぎず、魔法の無力さは魔法使いや魔女が、気づき始めていた。中には、さっさと、ほとんどの魔法を見限って宅配便の会社を作って大当たりした女の子もいた。

 魔法文部科学省も危機を感じ、官僚らしく特色有る魔法課高校づくりや、学区制の廃止、魔法課教師の教員免許の更新制度をつくってみたりしたが、ほとんど成果はあがらなかった。 

 そこで、教委や学校は、既存のカリキュラムの徹底した反復学習や世界中の魔法と名のつくものは、中国の妖術から、アメリカはオズの魔法、日本の忍法に到まで取り入れた。
 いわば魔法のてんこ盛りで、そこになんの体系性も無かった。
 当然落伍者が一杯出た。しかしベースブリッジ魔法相は、その試行錯誤と競争の原理の中から、真の魔法使いが育つと、強行し、大量の落伍者を出しながらも、一握りの優秀な魔法使いのタマゴを生み出した。
 このデーモン魔法科高校にも、素晴らしい才能の持ち主が発見された。

 しかし、それが誰なのかが分からなくなってしまった。

 訓練の中には、人の心に入ったり、人に化けたりという魔法も含まれている。それをくり返しているうちに、分からなくなってしまったのである。
 学校関係者の記憶からも記録からも消えてしまった。

 いや、存在しているのだろうが、その存在が分からなくなってしまった。

 学校は、その事実をひた隠しにしてきたが、魔法相の知るところとなり、その調査のために送られてきたのが麗奈だった。麗奈は実際レオ(麗悪)の妹だったが、その強い透視能力をかわれて、特別調査員に任命され、その正体は学長にも知られていなかった。今まで五人の優等生にあたってみたが、みんな違った。
 三人目のパリー・ホッタは惜しかったが、みんなが、居て欲しいと願う気持ちが具現化したものであった。

「お願い……」

 ほとんど確信を持ち、個人的にも好意を寄せて、キスをせがんだところでポッターは消えてしまった。
 麗奈は三日間泣き明かした。自分の最愛の彼を失っただけでなく、学校の希望も失ってしまったのだ。ただ、幸いなことに、ガセと分かったものには、忘却の魔法がかけられており、正体が分かるとともに、記録も記憶も、無くなってしまうことであった。

 でも、麗奈の心には残っている。ポッターの時ほどではないとしても、自分の実の兄がガセで、裏山のタヌキであるショックは、けして小さなものではない。

 麗奈は、百ほどもため息をつき、自分の寄宿舎であるブリフィンドールに帰ろうと、ホウキに跨ったときである。

「今日の夕陽は弱いなあ……あっ!?」

 西の空には、夕陽の束を遮るように、魔法国防軍が学校を目指して飛んでくるところだった……。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・36『ベルセルク完結/アウトロー』

2016-09-16 05:57:39 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評・36
『ベルセルク完結/アウトロー』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ

これは、悪友の映画評論家の滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので、本人の了解を得転載したものです。


『ベルセルク黄金時代篇Ⅲ 降臨』

 とうとうこの日が来ちまいましたねぇ。

 本作は三浦健太郎原作、隔週刊アニマル掲載漫画のアニメです。
  内容は、中世ヨーロッパをイメージしている世界で“剣と呪い”の物語を紡いだもの。原作の時系列は後先になっているが、本作はこの物語の起点にあたる。
 大剣の傭兵ガッツと鷹の団を率いるグリフィスは運命の出会いを果たし、戦場を駆け抜ける。やがてガッツは鷹の団と別れ我が道を行くが、ガッツを失ったグリフィスはその心の空白を埋めようとしてミッドランドの姫に手を出し、反逆者として捕らえられる。
 団も国王から的にかけられ、1年余り 逃亡しながらグリフィスの消息を追っていた。  
 ある日、グリフィスの捕らわれ先が解り、ガッツも戻ってグリフィスを救出するが……彼は拷問の末、廃人と化していた。
 全てをあきらめ、死を選ぼうとするグリフィスの手に、無くした筈のベヘリットが戻り、呪われた“蝕”が口を開ける。
 4柱の黒き死の天使が降臨し、グリフィスの嘗ての望みをリフレインさせ“傷ついてなお、望み潰えぬなら…捧げよ”と囁く…グリフィスを案じて追って来た ガッツ以下鷹の団の全てを見ながら、グリフィスは呟いてしまう“捧げる…”と。
 地獄絵図が始まり、隊員達は皆 使徒共の餌食となり、ガッツの子を孕んでいたキャスカはガッツの目の前で グリフィスから再生した第5の黒き天使フェムトに陵辱される。
 絶対絶命の地獄に髑髏の騎士が現れ二人は救われるのだが………。

 といったストーリー。 原作は 現在37巻、以前は年間2冊出ていたのだが、去年は1冊だけ。アシスタントを使わず1人製作のうえ、この映画に関わっているので本編が全く進まない。原作では新たな展開にさしかかっているので ファンとしてはイライラしながら待っている。

 さて、映画の内容だが、本ストーリーは以前(10数年前)深夜枠テレビアニメとして放送されている。前2作が90分、本作が2時間だから 総5時間になるが 駆け足の感は否めない。殊に本作はブッ飛ばしている。作画は丁寧で迫力があるが、ファン・マニア以外は ディスクが3枚揃ってからまとめてレンタルすれば良いだろう。
 どうやら 続編は決定しているようである。大部サーガのどの部分が作られるのかは判らないが、そちらの方が楽しみ! 1日も早い公開が待たれるが、その前に 原作の継続も頼みます。ホンマにホンマに頼みます!!
 風邪気味なので薬を飲んで 見ている。もう、眠いのなんの、もう一本 寝ないで見られるかなぁ? ……と思っていたら やっぱり40%方気を失っとったです。粗方は解ったけど、これで書くわけにいかず。さりとて明日復活の保証もなし……仕方ないんでもう一回見て 今帰宅、ほぼ10時ですわ〓〓〓

『アウトロー』

 本作は“ジャック・リーチャー”という原題で、原作はすでに17巻刊行されており、リー・チャイルドというイギリス人の手になるミステリー……。
 なるほど、それで謎解きのセオリーがホームズ風なんだ。派手なカーアクションや格闘シーンばかりをCMで流しているから、そういう作品かいと思ってしまうが あにはからんやさにあらず、本格推理物映画である。
 こいつは配給元の常套手段“騙し、誤魔化し、詐欺”の類である。しかし、とはいえ全く無い訳でもない、しかも本物である事を追求している。格闘、銃扱い、カースタント総て実際のテクニック その点 嘘偽りは無い。ただ、それがどれだけ訴求力を持ったかってぇと少々お寒い、笑いも盛り込まれてはいるがイギリス風ギャグ、エスプリは効いているが 爆笑には今一歩。 おそらく、アメリカでのCMも同じように組まれたのだろう、失望の口コミが広がり3週間で6位から一気に圏外転落、興行収入も6000万$と振るわない。この程度だと続編は辛いところ。良く出来てはいるが なんか食い足りない、最近のトム・クルーズ作品の典型みたいなもの。 手放しで薦めはしませんが、レアなファンはつきそうですなぁ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする