高校ライトノベル
『魔法科高校の優等生・1』
放課後、中庭の木漏れ日の下を、隠せぬ憂い顔で魔岡レオが歩いている……。
他の生徒や先生たちでさえ、このデビル魔法科高校の最優等生である魔岡レオの思索を邪魔することはできなかった。
ふと藤棚の下のハーアイオニーと目があった。ハーアイオニーは、このデビル魔法科高校の優等生であると共に、最高の美少女と言われている。そのハーアイオニーにはレオの苦しみが分かっているつもりだった。
――そう、魔法を極めると、誰でも悩むのよ。誰のために、何のために魔法を学んでいるのかと――
でも、そのハーアイオニーでさえ、レオに寄り添い、悩みを共にすることは憚られた。それほどに、最優等生のレオの悩みは深かった。
ぼく達は、いったい何のために魔法を学んでいるんだろう?
こないだ、バカな人間をドテカボチャに変える魔法を習った。ためしに、この学校がある街の半グレ共を全員かぼちゃにしてやった。その手際の良さを、生徒達は驚嘆し、先生達は賞賛してくれた。市長からは感謝状さえもらった。
でも、それが何になるんだろう。バカの数だけカボチャを増やしただけだ。
その前は、街に落ちてくる爆弾を除ける魔法だった。アラブのある街で実習をやった。レオの魔法は完ぺきだった。その街には一発の爆弾も落ちなかった。
でも、落ちなかった爆弾は、みんな他の街に落ちて犠牲者を出してしまった。先生達は「大したできだ! ハウル以来の天才だ!」と誉めてくれた。
日本政府からは、専属の魔法使いになってくれないかと、非公式に依頼があった。自分の国さえ良ければいいという、日本人らしい考え方だった。
「あなたたちは、すでに日本国憲法という魔法を持っているじゃありませんか」ぼくは、そうシニカルに答えておいた。
レオは、違うと思った。魔法とは、そんなマヤカシモノではなくて、もっと根本的に解決できる手段でなければならないと、一人孤独に悩んだ。
この学校が、魔法そのものが、ひょっとしたら根本的に間違っているのかも知れないと悲観的にさえなった。
で、その憂い顔が、とてもクールでイカシテいると評判になり、学校で一番の美少女ハーアイオニーさえ、振り向くようになってきた。
「レオ、ヘブンティーンが写真と、インタビューに来てるぞ」
広報部の、インガソル先生が職員室の窓から呼んでいる。レオは、いまや、単なる優等生ではなく、この学校、この街のシンボル、いや、広告塔と言ってもいい存在だった。
そして、そんな他愛ないマスコミの取材や撮影に、魔法では味わえない、自己解放の喜びを感じていた。
「分かりました、いま行きます」
レオは、まるで歯磨きのCMのように白い歯をこぼれさせながら手を振った。女生徒達が、ネコジャラシを見るような目で見ている。
その魔法科高校の最優等生であるレオの姿が、手を振ったまま姿が薄くなり、消えてしまった……。
『魔法科高校の優等生・1』
放課後、中庭の木漏れ日の下を、隠せぬ憂い顔で魔岡レオが歩いている……。
他の生徒や先生たちでさえ、このデビル魔法科高校の最優等生である魔岡レオの思索を邪魔することはできなかった。
ふと藤棚の下のハーアイオニーと目があった。ハーアイオニーは、このデビル魔法科高校の優等生であると共に、最高の美少女と言われている。そのハーアイオニーにはレオの苦しみが分かっているつもりだった。
――そう、魔法を極めると、誰でも悩むのよ。誰のために、何のために魔法を学んでいるのかと――
でも、そのハーアイオニーでさえ、レオに寄り添い、悩みを共にすることは憚られた。それほどに、最優等生のレオの悩みは深かった。
ぼく達は、いったい何のために魔法を学んでいるんだろう?
こないだ、バカな人間をドテカボチャに変える魔法を習った。ためしに、この学校がある街の半グレ共を全員かぼちゃにしてやった。その手際の良さを、生徒達は驚嘆し、先生達は賞賛してくれた。市長からは感謝状さえもらった。
でも、それが何になるんだろう。バカの数だけカボチャを増やしただけだ。
その前は、街に落ちてくる爆弾を除ける魔法だった。アラブのある街で実習をやった。レオの魔法は完ぺきだった。その街には一発の爆弾も落ちなかった。
でも、落ちなかった爆弾は、みんな他の街に落ちて犠牲者を出してしまった。先生達は「大したできだ! ハウル以来の天才だ!」と誉めてくれた。
日本政府からは、専属の魔法使いになってくれないかと、非公式に依頼があった。自分の国さえ良ければいいという、日本人らしい考え方だった。
「あなたたちは、すでに日本国憲法という魔法を持っているじゃありませんか」ぼくは、そうシニカルに答えておいた。
レオは、違うと思った。魔法とは、そんなマヤカシモノではなくて、もっと根本的に解決できる手段でなければならないと、一人孤独に悩んだ。
この学校が、魔法そのものが、ひょっとしたら根本的に間違っているのかも知れないと悲観的にさえなった。
で、その憂い顔が、とてもクールでイカシテいると評判になり、学校で一番の美少女ハーアイオニーさえ、振り向くようになってきた。
「レオ、ヘブンティーンが写真と、インタビューに来てるぞ」
広報部の、インガソル先生が職員室の窓から呼んでいる。レオは、いまや、単なる優等生ではなく、この学校、この街のシンボル、いや、広告塔と言ってもいい存在だった。
そして、そんな他愛ないマスコミの取材や撮影に、魔法では味わえない、自己解放の喜びを感じていた。
「分かりました、いま行きます」
レオは、まるで歯磨きのCMのように白い歯をこぼれさせながら手を振った。女生徒達が、ネコジャラシを見るような目で見ている。
その魔法科高校の最優等生であるレオの姿が、手を振ったまま姿が薄くなり、消えてしまった……。