タキさんの押しつけ映画評
『ゲキ×シネ髑髏城の七人/ルーパー』
この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ
この映画評は、我が悪友の映画評論家、滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので。本人の了解を得て転載したものです
☆髑髏城の七人
ゲキ×シネ、訂正!
学生・身障者のみ1000円、一般2200円(それでも300円安くなりました)でした。その他の割引は無しです。ごめんなさい。
今回のドクロは“ワカドクロ”を名乗って、その名の通り ドド~ンと若返りました。初演から97年版の『得体の知れない熱気』が戻って来ました。
メインキャラの捨之介/天魔王は従来一人二役(古田新太が出とちりしたため、懲罰的配役で始まったが、これが見所になってました)が、今回 小栗旬・捨之介/森山未來・天魔王に別れた。この線に沿って、メインストーリーは残しつつ脚本を大幅に書き直した。作者・中島/演出・いのうえ 共に大興奮しているのが伝わって来る。
役者達は終始 苦しみ悩んで演じたようだが、その試行錯誤は大正解だった。
まず、早乙女太一が相変わらず汗一つかかず高速殺陣を見せると共に凄みを見せつける。何なんだ この貫禄は…恐れ入りました。
勝地涼も橋本淳の嵌り役“抜かずの兵庫”を大熱演公演中もムードメーカーだったようで、そんな所まで橋じゅんの役割を担ったらしい。
小池栄子の“極楽太夫”にも新設定…これが泣かせる、この設定 面白いんだけど 今までには入り込む隙間が無かった。
仲里依紗はもっとあばれるかと思ったが、それほどでも無かった。あまり乗っていなかったように見受けられる。
全体のイメージとして、髑髏城の持つ熱気が戻っており、古田新太/橋本淳の大御所がいない分、ギャグの量が減って、その分 感動作になっている。特に後半、劇場中がグスグスいっている。泣かせる演出がことさらにある訳ではないが、勢いで感動に飲み込んで行く。生え抜きの劇団員の肩の力の抜けたサポートが抜群で、若い客演陣の熱演を支えている。
劇団員の中では高田聖子が アッと驚く役どころ……するってぇとクライマックスの百人斬りで……と思っていたら、そこはサラッと身をかわしてましたけどね。
久し振りにリピートしたい舞台です(今更〓) 絶対毎日どこかしら大きく変化が有った筈で、リピーターの楽しみ満載間違い無しです。実は、古田新太/橋本淳のいない髑髏城ってどないよってんで 舞台は見てないんですよね…いやぁ、惜しい事しました。
☆ROOPER
なぁ~~んも 考えんと見る分には、役者は揃っている(E・ブラント最高!)し、雰囲気もあって面白い映画ではあります。……しっかぁ~~し、アカン!こんな設定認められまへん。
ご存知でしょうが「時間テーマSF」です。基本的にターミネーターと同じなんですが……時間旅行が可能な未来、一般には禁じられており 犯罪組織のみが ある目的の為に時間旅行を利用している。まず、その利用目的が?????…何をいうとるやら、説得力無し。
30年過去に殺し屋が待ち構えており、送られてきた人間を即座に殺して処分する。この殺し屋、30年後には自らも過去に送られ処刑される決まりになっており…つまり、過去の自分が未来の自分を処刑しなければならない。B・ウイルスはこの決まりを作ったボスを殺す為に確信犯として過去に戻る……ここまで書いただけで、SFファンなら「そらぁ アカンがね」とお気づきの筈、タイムパラドックスの法則から そんな事は絶対出来ない。
ターミネーターは同じ設定ながらシリーズ5作を持ってしても結論を出さない事によってギリギリリアルを保っているが、本作には ハッキリした結末が付けてある……この結末も有り得ない。 リアルを保つ為、アクシデントがあると ブルースの記憶が曖昧になる(バック・トゥ・ザ・フューチャーで写真の人物が薄くなって行くのと同じと思えば良い)なんてな仕掛けが有ったりするが、彼は あるものを見る事によって克服する(あり得ない)。 まぁ、役者が巧いのと ストーリーテリングがテンポ良く運ぶので見続けさせられる。
私も あり得る設定をあれこれ考えながら見続けていましたが…あっきまへん、J・G・レヴィッツ(30年前のブルース)のラストの選択で総てがオシャカ! これが通るのは“ディアボリス”(キアヌとパチーノの「悪魔物語」)みたいな作品で、しかも この選択が有効なのは未来においてに限られる。
SFファン以外にはチンプンカンプンかも……ですが もう少しお付き合いを、過去の改変で 同一時間軸上の未来を変える事は出来ません(これを言っちゃうとお仕舞いですけどね)。
それは事象が変化したのではなく、 無数に有る「在りうる別な時間軸上の未来」に移るだけなので なんの解決にも成らない。結局 「なぁんでぇ」っちゅうのが結論です。この映画を楽しみたければ 一切の理屈に蓋をして、映っているママを受け入れる以外無し。 SFファンとしては辛い選択になってしまいます。
怒り狂うか ニッコリほくそ笑むかは、見る方にお任せいたします。私は…?
『ゲキ×シネ髑髏城の七人/ルーパー』
この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ
この映画評は、我が悪友の映画評論家、滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので。本人の了解を得て転載したものです
☆髑髏城の七人
ゲキ×シネ、訂正!
学生・身障者のみ1000円、一般2200円(それでも300円安くなりました)でした。その他の割引は無しです。ごめんなさい。
今回のドクロは“ワカドクロ”を名乗って、その名の通り ドド~ンと若返りました。初演から97年版の『得体の知れない熱気』が戻って来ました。
メインキャラの捨之介/天魔王は従来一人二役(古田新太が出とちりしたため、懲罰的配役で始まったが、これが見所になってました)が、今回 小栗旬・捨之介/森山未來・天魔王に別れた。この線に沿って、メインストーリーは残しつつ脚本を大幅に書き直した。作者・中島/演出・いのうえ 共に大興奮しているのが伝わって来る。
役者達は終始 苦しみ悩んで演じたようだが、その試行錯誤は大正解だった。
まず、早乙女太一が相変わらず汗一つかかず高速殺陣を見せると共に凄みを見せつける。何なんだ この貫禄は…恐れ入りました。
勝地涼も橋本淳の嵌り役“抜かずの兵庫”を大熱演公演中もムードメーカーだったようで、そんな所まで橋じゅんの役割を担ったらしい。
小池栄子の“極楽太夫”にも新設定…これが泣かせる、この設定 面白いんだけど 今までには入り込む隙間が無かった。
仲里依紗はもっとあばれるかと思ったが、それほどでも無かった。あまり乗っていなかったように見受けられる。
全体のイメージとして、髑髏城の持つ熱気が戻っており、古田新太/橋本淳の大御所がいない分、ギャグの量が減って、その分 感動作になっている。特に後半、劇場中がグスグスいっている。泣かせる演出がことさらにある訳ではないが、勢いで感動に飲み込んで行く。生え抜きの劇団員の肩の力の抜けたサポートが抜群で、若い客演陣の熱演を支えている。
劇団員の中では高田聖子が アッと驚く役どころ……するってぇとクライマックスの百人斬りで……と思っていたら、そこはサラッと身をかわしてましたけどね。
久し振りにリピートしたい舞台です(今更〓) 絶対毎日どこかしら大きく変化が有った筈で、リピーターの楽しみ満載間違い無しです。実は、古田新太/橋本淳のいない髑髏城ってどないよってんで 舞台は見てないんですよね…いやぁ、惜しい事しました。
☆ROOPER
なぁ~~んも 考えんと見る分には、役者は揃っている(E・ブラント最高!)し、雰囲気もあって面白い映画ではあります。……しっかぁ~~し、アカン!こんな設定認められまへん。
ご存知でしょうが「時間テーマSF」です。基本的にターミネーターと同じなんですが……時間旅行が可能な未来、一般には禁じられており 犯罪組織のみが ある目的の為に時間旅行を利用している。まず、その利用目的が?????…何をいうとるやら、説得力無し。
30年過去に殺し屋が待ち構えており、送られてきた人間を即座に殺して処分する。この殺し屋、30年後には自らも過去に送られ処刑される決まりになっており…つまり、過去の自分が未来の自分を処刑しなければならない。B・ウイルスはこの決まりを作ったボスを殺す為に確信犯として過去に戻る……ここまで書いただけで、SFファンなら「そらぁ アカンがね」とお気づきの筈、タイムパラドックスの法則から そんな事は絶対出来ない。
ターミネーターは同じ設定ながらシリーズ5作を持ってしても結論を出さない事によってギリギリリアルを保っているが、本作には ハッキリした結末が付けてある……この結末も有り得ない。 リアルを保つ為、アクシデントがあると ブルースの記憶が曖昧になる(バック・トゥ・ザ・フューチャーで写真の人物が薄くなって行くのと同じと思えば良い)なんてな仕掛けが有ったりするが、彼は あるものを見る事によって克服する(あり得ない)。 まぁ、役者が巧いのと ストーリーテリングがテンポ良く運ぶので見続けさせられる。
私も あり得る設定をあれこれ考えながら見続けていましたが…あっきまへん、J・G・レヴィッツ(30年前のブルース)のラストの選択で総てがオシャカ! これが通るのは“ディアボリス”(キアヌとパチーノの「悪魔物語」)みたいな作品で、しかも この選択が有効なのは未来においてに限られる。
SFファン以外にはチンプンカンプンかも……ですが もう少しお付き合いを、過去の改変で 同一時間軸上の未来を変える事は出来ません(これを言っちゃうとお仕舞いですけどね)。
それは事象が変化したのではなく、 無数に有る「在りうる別な時間軸上の未来」に移るだけなので なんの解決にも成らない。結局 「なぁんでぇ」っちゅうのが結論です。この映画を楽しみたければ 一切の理屈に蓋をして、映っているママを受け入れる以外無し。 SFファンとしては辛い選択になってしまいます。
怒り狂うか ニッコリほくそ笑むかは、見る方にお任せいたします。私は…?