イスカ 真説邪気眼電波伝・34
『ブスのクラブサンドイッチ・1』
目が覚めると、お日様は真上に来ていた。
川辺の広葉樹の下で寝っ転がっていたので、日差しが半分も無く目が覚めなかったようだ。
「あ、あち!」
起き上がる時にレガースに手を当てると、火傷しそうなくらいに熱い。
膝から下が木陰から出ていて、金属製のレガースが焼けていたのだ。
お日様が南中して、木陰が動いて、脚が日向に飛び出してしまったようだ。
期せずして頭寒足熱になったようで、我ながら健康的な昼寝をになった。
「オーーーイ!」
橋の上から声が掛かる。首を巡らせるとブスが左手を振っている。右手は石の欄干に隠れて見えないが、どうやら何かを持っているようだ。
石段を下りる時も器用にマントで隠しているので、なにを持っているのかよく分からないけど、ひどく楽しそうなので、姿を消していたのは、そいつのためだったと思える。
「ウフフフ」
「変なやつ、なに持ってきたんだよ?」
「な~んだ?」
「ハハ、なんだよ?」
「当ててみそ(^^♪」
ブスは目をへの字にしてピョンピョン撥ねる。すると、かすかにいい匂いが立ち込める。
ビネガー混じりのドレッシング……揚げ物……それにスパイシーななにか……要はおいしそうな匂いだ!
近ごろのゲームのグラフィックは驚異的で、視覚を通していろんな疑似感覚を覚える。
日差しの温かさや頬を撫でる風、ご馳走を観たら、なんとなく匂いを感じることもある。VRで女の子の家庭教師をするゲームがあるが、女の子が落としたシャーペンを拾おうとして、そのうなじが迫ってくると、吐息や女の子の匂いを感じたりするそうで。それは、視覚が他の五感に影響して錯覚させるらしい。こういう錯覚には積極的に没入したした方がいい。
「なにか食べ物だな!」
「さすがナンシー、ジャーーン!」
差し出したのは乙女チックなランチバスケットだ。
手際よくランチシートを広げ、腰を下ろすと、自分の横をポムポム叩く。座れということだ。
「え、え、ま、いいけど」
こういうシチュには慣れていないので、どうも不貞腐れた物言いになる。そんなことは気にせずにバスケットを開帳するブス。
「はい、召し上がれ🎵」
「ウワ~~~~~」
クラブサンドイッチというのか、三枚の食パンの間にレタスやチーズやベーコンやタマゴやハムやフライなどが挟んであって、その隙間には手作りらしいソースが頃合いにはみ出ていて、見るからに美味しそうなのだ! それが、バスケットいっぱいにギッチリと詰まっている。
「いっただきまーす!」
さっそく一つ掴んでハムハムと頬張るオレ様だった!