イスカ 真説邪気眼電波伝・29
『通学路のパワースポット』
「オレにはかけてくれないの?」
三叉路で佐伯さんを見送ってイスカに聞いた。
「……ごめん、なに?」
「その守護魔法みたいなの……」
「あれ掛けると、キミからエネルギーをチャージできなくなる」
「え、そうなの?」
「魔法攻撃って、いろんなバリエーションがあるけど、結果的には相手の生命エネルギーを奪うこと。だから守護魔法というのは生命エネルギーにロックをかけるようなものなの。ロックした相手から都合のいいエネルギーだけチャージさせてもらうなんてできないわよ」
「そうなんだ」
「大丈夫よ、勇馬がいなけりゃ、わたしもこの世界に留まれないから全力でガードしてあげるわよ」
「今日は近道通らないのか?」
まだ二日目なんだけど、イスカに勉強をみてもらうのがカスタムになってきている。
「うん、こっちの方が雰囲気だからね」
そう言うと、イスカは立ち止まった。
「オーーーーー」
間の抜けた声を上げてオレも立ち止まる。
ちょっとした切通になっていて、右側が古い石垣が連なって、その上に民家が並んでいる。石垣だというのも気が付かなかった。けして見えないわけじゃないんだけど、石垣の前に列をなしている自販機やら看板の自己主張ために意識に上らないんだ。
反対側には家が並んでいたはずなんだけど、それが取り壊され、向こうの見晴らしが良くなっている。
切通と思っていたのは、そこだけで、実は全体で大きな斜面になっていて、下に広々と街が広がっている。思いのほか大きな景色で、それが、斜面の中腹に佇んでいるオレたちごと夕陽に染め上げられ、ちょっと息をのむほどの景色になっている。
「二年も通っていて気づかなかった」
「家が立ち並んでいたからね、先週から取り壊し始めて、今朝終了したばかりみたい」
「ああ、でもイスカが言ってくれなきゃ気づかないところだった」
「わずかなもんだけど、こういうところじゃエネルギーチャージができるのよ」
「そうなのか?」
「うん、俗に言うパワースポット。昔の人は、こういうところに神さまを感じて神社なんかにしたのよ」
悪魔が、そんなこと言っていいの……思ったけど、雰囲気壊しそうなので止す。
「さ、いこうか」
ホッと一息ついて歩き出す。
角を曲がると向こうから優姫が歩いてくる。めずらしく下校時間が合ったみたいだ。
「あ、どうも、いつも兄がお世話になってます!」
元気と愛想のいい挨拶をする。我が妹ながら外面の良さは天下一品だ。
「ごめんなさい、今日もお邪魔するわね。あ、クラスメートの西田佐知子です。こないだからいっしょに勉強するようになって」
「はい、分かってます。出来の悪い兄ですけどよろしくお願いします。わたし、先に戻ってお茶の用意とかしとくね」
「あ、おかまいなく」
「じゃ、二人はゆっくり帰って……あ、勉強だからゆっくりってのも変か? ハハ、じゃ、ほどよく」
そう言うと、軽い足取りで家に向かう優姫。
「優姫さん!」
家の前に差し掛かった優姫をイスカが手を上げて呼び止めた。
「はい、なんでしょう?」
「セイ!」
勢いよくイスカの手が振り下ろされる。
すると、電柱一本分向こうの優姫の首が吹っ飛び、切り口から噴水のような血しぶきが吹き出した!