大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・🍑・MOMOTO・🍑デブだって彼女が欲しい!・2『桜子・1』

2019-01-08 06:58:25 | ノベル2

🍑・MOMOTO・🍑デブだって彼女が欲しい!・2
『桜子・1』


 この二日、桜子は学校を休んでいる。

 一昨日は、登校途中に追い越され「お、久々の桜子じゃん!」と八瀬が声をかけて、怖い顔で睨まれた。
 あの時は制服を着ていたけど、学校には来ていない。
 昨日は私服で、学校に行くのとは反対のホームに居たのを目撃されている。

 正直気になる。

 桜子は真っ当な奴だ。保守的って言ってもいい。小学校からアナウンサーになりたいという夢を持ち続け、所属している放送部のコンテストでは、二年連続県大会で個人優勝している。もちろん、それなりの大学に進む準備もしていて、成績はトップクラスだ。
 よく似合っているツインテールも、オシャレという感覚じゃなくて、子どもの時のスタイルを変えられないでいると言った方がいい。
 桜子の欠席は昼には分かる。この一年、昼休みの放送は、桜子がアナウンスしているからだ。

「お、今日も桜子のアナウンスじゃないぞ」

 八瀬がデザートのラーメンをすすりながら言う。
「一年生を訓練のためにやらせてるのかもな」
 デザートの大盛りラーメンのスープをすすりながら答える。
「いいのか、ずっと付き合ってたのに?」
 八瀬はスープは飲まない。程々ということをよく分かっている。
「元カノって、思っただけで目が三角なんだぜ」
「でも、お前の気持ちは……」
「男の値打ちを目方で測る奴は、オレから願い下げだ」

 去年の夏、体重が90キロを超えた時に、桜子には絶好宣言をされている。

「自分の健康管理もできない男なんてサイテー」
 ニベも無かった。
 もっとも、いきなりの絶好宣言だったわけじゃない。3キロ増えた時に気づかれ、2キロごとに注意され、10キロ増えたときには、いっしょにジョギングまでしてくれた。ライザップのパンフを渡されたのが最後通牒だった。
「でもさ、体力とか運動能力に衰えはないんだぜ」
「なによ、開き直って。ジムで計測したわけでもないでしょ! 気休めとか誤魔化しとかは言わないで! 90超えたら絶交だからね!」 で、二学期の始業式にオレの姿を見て、桜子に保健室に連れていかれ、体重計に載せられ、針が90を超えた時に宣告された。
「自分の健康管理もできない男なんてサイテー……絶交ね」

 あれから20キロも増えたんだ、何をかいわんやだ。

 終礼のチャイムが鳴るのを待って教室を飛び出した。
 世界史の授業で手をあげたら、バツッ! と音がしてブレザーの脇が破れた。オフクロも修復を諦めたので、入学以来4着目の制服を買いに行く。
「いやあ……百戸君は3着目ね」
「いえ、4着目です」
 制服屋の小母さんの記憶を正直に正してしまう。正直という美点も、時にはみじめだ。
 採寸を終わって駅に向かう。
 昨日よりはましだけど、寒いので、市役所の構内をショートカット。玄関わきの喫煙コーナーが目に入る。
「あれ……?」
 腰から上をスモークされたガラスの下、見覚えのあるハイカットスニーカーが目に留まった。
「桜子のスニーカー……」
 そう気が付くと、ドアが開き、桜子がビッコを引きながら煙と一緒に出てきた……。 
 

🍑・主な登場人物

  百戸  桃斗……体重110キロの高校生

  百戸  佐江……桃斗の母、桃斗を連れて十六年前に信二と再婚

  百戸  信二……桃斗の父、母とは再婚なので、桃斗と血の繋がりは無い

  百戸  桃 ……信二と佐江の間に生まれた、桃斗の腹違いの妹

  百戸  信子……桃斗の祖母 信二の母

  八瀬  竜馬……桃斗の親友

  外村  桜子……桃斗の元カノ 桃斗が90キロを超えた時に絶交を言い渡した

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高校ライトノベル・堕天使マヤ 第二章・クオバディス ドミネ『海軍鹿屋航空基地・1』

2019-01-08 06:40:50 | ノベル

堕天使マヤ 第二章・クオバディス ドミネ・1
『海軍鹿屋航空基地・1』



 マヤはZ駅に降り立った。名前からして、終着駅のように思われた。

 線路自体は、トンネルを過ぎ、まだ先があり、行って行けないこともないように見えたが、感覚としては終着駅である。
――この町で、またドジやるのかなあ……――
 そう思いながら改札を出た。
 出てから気づいた、今のは自動改札じゃない。振り返ると、木造平屋の古ぼけた駅で、人の気配もなかった。

――サタンの罠だろうか――

 そんな思いが唐突にした。

 S駅から始まり、いつかは異教の親鸞に会ったりした。堕天使とは言え脈絡のないまま、これという成果も上げられず、ここまで来てしまっているのだ。
 佇んでいると、一人の光り輝く人が自分を追い越し、トンネルの方に歩いていく。
 暑さのせいだろうか、その光り輝く人は、ほとんど裸だった。

 数十秒立って気づいた……その人は神であった!

「クオバディス、ドミネ!?」

 お里言葉が出てしまった。神は立ち止まると、ニッコリと笑った。駆け寄るにしたがって、渥美清のようにも見えた、ジョンレノンのようにもなったし、直前まで近づくとブルース・ウィルスのようにもなり、はっきり見た時には、眩しさでお顔がわからなかった。
「まだ、わたしの言葉を覚えていたんだね、マヤ」
「主よ、いずこに行かれます?」
「……トンネルの向こうへ」
「トンネルの向こうには何が、どこに続いているんですか?」
「ローマへ……などと言ったらペテロみたいにのこのこ行っちゃうんだろ」
「それが、わたしの行くべき道なら」
 神はため息をつかれた。
「わたしにも分からんのだよ。ただネロみたいに分かりやすいバカが暴君やって単純に人を苦しめているようなところではないようだ。テルマエロマエみたいに温泉大好きなオッサンでもいればいいんだけどね、アハハハ」

 そう力なく笑うと、主は光となってトンネルの中に消えていかれた……。

「マヤ技官殿、お待ち申し上げていました!」

 甲高い声に振り返ると、そこにはセーラー服にモンペ姿の女学生が百人ほども直立不動で居並んでいた。
 瞬間、行くべき場所と役割が分かった。

「わたしたちは、これから第五航空艦隊鹿屋基地に向かいます。任務内容は基地についてから知らせます。その……カチコチの姿勢は止めましょう。今夜は徹夜の仕事になります。体力を温存するために、まずは食事にします」
 マヤがそう言うと市原悦子によく似た小母さんがモンペにかっぽう着姿の同僚を十人ばかり連れて現れた。うち四人は大きなお櫃十個ほどと、みそ汁とお茶の入ったヤカンを積んだ大八車を曳いていた。

「さあ、そこの小川で手を洗って、半分は小母さんたちと一緒にお握りを作ります。残りの半分は、ありがたくいただきます。お腹がくちくなったら適宜交代していただきます。総員かかれ!」
 それまでの緊張が一度にほぐれ、女学生たちはキャッキャ言いながら、食事という任務をこなした。
「技官殿、あのトンネルの向こうには、何があるのですか?」
 お腹がおさまると、目端の効きそうな子が聞いてきた。
「分からない、小母さんたち、ご存じですか?」
「いや、分からないね。空襲のとき入って少しのところは防空壕代わりに使うんだけど、奥の方は……行って帰ってきた者はいないよ」

 主は、あのトンネルの向こうで、何を見て何をされているのだろう。

 クオバディス ドミネ(主よ、いずこへ)……また、お里言葉が出てしまったマヤであった。

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