大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・🍑・MOMOTO・🍑デブだって彼女が欲しい!・3『桜子・2』

2019-01-09 06:46:28 | ノベル2

🍑・MOMOTO・🍑デブだって彼女が欲しい!・3
『桜子・2』



 電柱によっかかった桜子は歯を食いしばっていた。

「大丈夫か、桜子?」
 絶交されていることなど忘れて、声を掛けてしまった。
「……放っといてよ!」
「強気なのはいいけど、足首腫れてんじゃん」
「あんたには関係ない」
「怪我してる時に強がんなよ」
「うっさい、デブは関わってくんな!」
「……分かったよ」
 完璧に嫌われている。市役所の周りを一周して、もう一度だけ声を掛けようと決めた。
 電柱一本分行ったところで胸騒ぎがして振り返る。どうやらオッサンに絡まれているようだ。
「大丈夫です、休んだら歩けますから、ほんと、大丈夫ですから」
「早く診てもらったほうがいいよ。わたしが病院まで、車とってくるからさ」
「いえ、ほんとうに……」
 親切ごかしのオッサンに、桜子は困り果てている様子。
「桜子! あ、どうもすみません。ぼく、こいつの兄です、電話かかってきたんで迎えに来たところです。さ、兄ちゃんがおんぶしてやるから」
 笑顔で、でも目は怒らして、オッサンを睨みつける。
「な、なんだ、お兄さんが来るんなら……そうだよね、じゃ、じゃあね」
 オッサンは、ポケットに手を突っ込んで行ってしまった。市役所の喫煙室から好奇心むき出しの幾つもの視線を感じる。
「さ、ほんとにおぶされよ」
「う、うん……」

 今度は素直におぶさってきた。

「駅前のクリニック、親父の知り合いだから」
「ちょ、ちょっとあるね」
「車に乗るほどじゃない……どうしてビッコなんだ?」
「くじいた……で、喫煙室で休んでた」
「なんで喫煙室なんだ? 市役所の中に入ればベンチもソファーもあるだろう?」
「そこまで足がもたなかった……でも、喫煙室煙いし、オッサンばっかりだし……」
「でも、なんで……」
「…………」
 学校に来ないんだと聞きたかったけど、そこまで桜子はほぐれていないようなので口をつぐんだ。
「……どうして兄なんて言ったの?」
「フラレた元カレですなんて言えるか」
 そう答えながら、自分でも違和感があった。オッサンをビビらすだけなら、桜子との関係は言わなくてもいい。それに、オレには実物の妹が……。
「とりあえず、いちおうお礼は言っとく」
「元には戻れないか?」
「無理、デブはきらい」
「そっか……でもさ、腕でツッパラかるのはよさないか。不安定で重い」
「降りようか? 前の信号赤だし」
「降りなくていい、おんぶのし直しの方が堪える……それに、青になった」
「……じゃ」
 桜子は背中に上半身を預けた。背中に桜子の胸のふくらみを感じる。瞬間ドッキリ。
「あたし……この三月に引っ越すんだ」

 もっとドッキリした。 


🍑・主な登場人物

  百戸  桃斗……体重110キロの高校生

  百戸  佐江……桃斗の母、桃斗を連れて十六年前に信二と再婚

  百戸  信二……桃斗の父、母とは再婚なので、桃斗と血の繋がりは無い

  百戸  桃 ……信二と佐江の間に生まれた、桃斗の妹

  百戸  信子……桃斗の祖母 信二の母

  八瀬  竜馬……桃斗の親友

  外村  桜子……桃斗の元カノ 桃斗が90キロを超えた時に絶交を言い渡した

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高校ライトノベル・堕天使マヤ 第二章・クオバディス ドミネ・2『海軍鹿屋航空基地・2』

2019-01-09 06:35:54 | ノベル

堕天使マヤ 第二章・クオバディス ドミネ・2
『海軍鹿屋航空基地・2』



 食事が終わると、マヤは100人の女学生を引率して鹿屋航空基地に向かった。

「菊水作戦援護作業のために、空技廠技官マヤ、百名の女子学徒勤労隊を引率してまいりました。命令書と宇垣第五航空艦隊長官の添え状です。基地司令にご伝達ください」
 門衛の兵は事前に何も聞いていなかったので慌てたが、書類は揃っているので、基地司令に取り次いだ。
 基地といっても鉄条網が一重取り巻いているだけで、基地の内からも外からも素通しだった。

「おい、女学生がいっぱい来てるぞ!」

 非番の兵たちが集まり始めた。相互にコチコチだった空気が和やかになりはじめたころ、マヤたちは基地の仮設講堂に集められた。
「仮設で申し訳ない、空襲で既設のものは破壊されたんで、これで辛抱してくれ」
 マヤは中佐相当の技官だったので、司令みずからがやってきて、基地の説明をした。
「これで十分です、ありがとうございます」
「しかし、こんなところで何の作業をやるのかね?」
「今日、天一号作戦が実施されます。その援護が任務です」
「それなら、うちの基地隊にも援護命令がきている。もっとも沖縄まで護衛できるわけじゃないが。で、君たちの任務は具体的にはなんだね?」
「紙飛行機を折ることです」
「え……」
 基地司令はあっけにとられた。

「いい、折り目の誤差は0・2ミリ以下、居り方は黒板に示した通り単純なもの。明日の朝までに、一人当たり百機の紙飛行機を折ります。大したことはないようだけど、飛ばして十秒以内に落下するものは不合格です。飛べる紙飛行機を百機折ってもらいます。夜になるまでは外で試験飛行、夜はこの講堂内で試験飛行を行います。紙は三万枚用意したけど、極力無駄を出さないように。不合格になったものも無駄にせず、伸ばして折直します。では、かかれ!」
 百人の女学生が、一斉にサワサワと紙の折る音をさせて紙飛行機を折りだした。

 紙飛行機というのは案外難しいもので、最初のうちは十機折って、一機も合格の出ない者ばかりだった。
 夕方になると見かねたパイロットや整備兵がやってきて、折り方や飛ばし方を伝授し始めた。紙飛行機とはいえ、空中を飛ぶ理屈は本物の飛行機と同じである。ちょっとした重心の位置や翼のひねりが大きく飛距離や滞空時間に影響する。

 夜明けになって、やっと一万機の紙飛行機を折り終えた。

「それでは、滑走路に出て、九十機ずつ十秒間隔で飛ばします。総員滑走路北端へ!」
 滑走路では、沖縄特攻に向かう戦艦大和以下八隻の艦隊護衛のために、七個編隊二十一機が順じ発進していくところだった。
「見送りみたいな護衛です。二時間ほどで返ってきますよ」
 飛行長が自嘲的に言った。
「あとは、わたしに任せてください」
「ん、あの紙飛行機にかい?」
「ええ、最初の九十機用意!」
 女学生たちが、三列三十人ずつの横隊に並んだ。
「構えて……三、二、一、放て!」

 九十機の紙飛行機が一斉に飛んだ。五秒もたつと、紙飛行機は本物のゼロ戦に変わり、三機ずつ三十の編隊になって南の空に飛んでいった。基地司令も飛行長も息をのんだ。まるで夢を見ているようだ。マヤは、落ち着いた声で次々に紙飛行機を飛ばさせ、一時間後、自分自身で最後の一機を飛ばした。
「あれが、編隊長機です」

 一万機の紙飛行機が変じてゼロ戦になり、大和以下の第二艦隊を追い越して、沖縄を目指した。

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