🍑・MOMOTO・🍑デブだって彼女が欲しい!・3
『桜子・2』
電柱によっかかった桜子は歯を食いしばっていた。
「大丈夫か、桜子?」
絶交されていることなど忘れて、声を掛けてしまった。
「……放っといてよ!」
「強気なのはいいけど、足首腫れてんじゃん」
「あんたには関係ない」
「怪我してる時に強がんなよ」
「うっさい、デブは関わってくんな!」
「……分かったよ」
完璧に嫌われている。市役所の周りを一周して、もう一度だけ声を掛けようと決めた。
電柱一本分行ったところで胸騒ぎがして振り返る。どうやらオッサンに絡まれているようだ。
「大丈夫です、休んだら歩けますから、ほんと、大丈夫ですから」
「早く診てもらったほうがいいよ。わたしが病院まで、車とってくるからさ」
「いえ、ほんとうに……」
親切ごかしのオッサンに、桜子は困り果てている様子。
「桜子! あ、どうもすみません。ぼく、こいつの兄です、電話かかってきたんで迎えに来たところです。さ、兄ちゃんがおんぶしてやるから」
笑顔で、でも目は怒らして、オッサンを睨みつける。
「な、なんだ、お兄さんが来るんなら……そうだよね、じゃ、じゃあね」
オッサンは、ポケットに手を突っ込んで行ってしまった。市役所の喫煙室から好奇心むき出しの幾つもの視線を感じる。
「さ、ほんとにおぶされよ」
「う、うん……」
今度は素直におぶさってきた。
「駅前のクリニック、親父の知り合いだから」
「ちょ、ちょっとあるね」
「車に乗るほどじゃない……どうしてビッコなんだ?」
「くじいた……で、喫煙室で休んでた」
「なんで喫煙室なんだ? 市役所の中に入ればベンチもソファーもあるだろう?」
「そこまで足がもたなかった……でも、喫煙室煙いし、オッサンばっかりだし……」
「でも、なんで……」
「…………」
学校に来ないんだと聞きたかったけど、そこまで桜子はほぐれていないようなので口をつぐんだ。
「……どうして兄なんて言ったの?」
「フラレた元カレですなんて言えるか」
そう答えながら、自分でも違和感があった。オッサンをビビらすだけなら、桜子との関係は言わなくてもいい。それに、オレには実物の妹が……。
「とりあえず、いちおうお礼は言っとく」
「元には戻れないか?」
「無理、デブはきらい」
「そっか……でもさ、腕でツッパラかるのはよさないか。不安定で重い」
「降りようか? 前の信号赤だし」
「降りなくていい、おんぶのし直しの方が堪える……それに、青になった」
「……じゃ」
桜子は背中に上半身を預けた。背中に桜子の胸のふくらみを感じる。瞬間ドッキリ。
「あたし……この三月に引っ越すんだ」
もっとドッキリした。
🍑・主な登場人物
百戸 桃斗……体重110キロの高校生
百戸 佐江……桃斗の母、桃斗を連れて十六年前に信二と再婚
百戸 信二……桃斗の父、母とは再婚なので、桃斗と血の繋がりは無い
百戸 桃 ……信二と佐江の間に生まれた、桃斗の妹
百戸 信子……桃斗の祖母 信二の母
八瀬 竜馬……桃斗の親友
外村 桜子……桃斗の元カノ 桃斗が90キロを超えた時に絶交を言い渡した