大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・🍑・MOMOTO・🍑デブだって彼女が欲しい!・16『これは間違いだ!』

2019-01-22 07:15:21 | ノベル2

 🍑・MOMOTO・🍑デブだって彼女が欲しい!

16『これは間違いだ!』  

 階段下の旧演劇部の部室は、軽のワンボックスカーほどの広さしかない。

 隠れ家にして二週間余り、自分に適うように整理してみようと思った。
 部室は、発見した時のままで、床には古い衣装やら台本やらがグチャグチャになっていて、元々の床も見えない。
 なにより、持久走で三好紀香を救けたあとに、ひっくり返って、思わず手に触れた縞柄のショーツが気になっていた。

 こんなものを放置していたら、万一見つかった時に、あらぬ疑いがかけられる。

「ゲ……こんなにあるのか!?」
 グチャグチャの上には、舞台に使う幕の切れ端みたいなのが掛けられていたが、それを取り払うと、いくつか段ボールの箱が潰れていて、中身がはみ出ている。雑多な中味の半分ほどが女物の下着だった。以前オレが手に握ったのは、そこからはみ出した、ほんの一部のようだ。
 とにかく、まとめて袋にでも詰めよう。

 ところが、まとめて入れるべき袋が見当たらない。

 教室の教卓の中にゴミ袋があることを思い出す。ようし、こういうことはサッサとやったほうがいい。
 放課後で人気のない階段を上がって、右に折れると教室。
「あった、あった」
 黒いゴミ袋を掴んで教室を出ると、腰のところに違和感。なんだか、ポケットが外れたような感じがした。
「……え、どうして?」
 足許には、薄桃色のブラが落ちている。ブラのカップにはガムテープの切れ端……どうやら、潰れた段ボール箱のガムテープがブラに貼りつき、その上に乗っけた尻に付いてきたもののようだ。オレは、直ぐに掴んでゴミ袋に入れようとした。
「ゲ、桃斗……!」
 憶えのある声が目の前でした。なんというタイミングの悪さ……階段を上って来た桜子が、廊下に足を踏み出したところで出くわしてしまったのだ! その距離、わずかに2メートル足らず。

 パシーン!

「ちょっと見直したら、桃斗ってデブの上に変態だったんだ!」
 そう言うと、桜子は踵を返して階段を駆け下りた。
「ち、違うんだって、桜子!」
 この誤解は解いておかなければ取り返しがつかない。張り倒された頬の痛みもどこへやら、オレは桜子を追いかけた。
「寄るな、触るな、変態デブ!」
「違う、これは!」
「キャ!!」
 一階の廊下を10メートルほど走ったところで、桜子が転倒した。
「う、うわ!」
 オレもつんのめって、桜子に覆いかぶさるように転倒!

 勢いとは恐ろしいもので、桜子に激突することを避けようとした右手が、桜子のスカートを派手に捲り上げてしまった。
 おまけに、右手には、さっきのブラが握られたまま。
「す、すまん。こんなつもりじゃ!」
「イヤー!!!!」
「お、おまえら!?」
 不幸は重なるもので、廊下の向こうに聞きなれた声。
「や、八瀬、これは間違いだ!」

 バレンタイン明けのオレは、とっても不幸なところから始まった。


🍑・主な登場人物

  百戸  桃斗……体重110キロの高校生

  百戸  佐江……桃斗の母、桃斗を連れて十六年前に信二と再婚

  百戸  信二……桃斗の父、母とは再婚なので、桃斗と血の繋がりは無い

  百戸  桃 ……信二と佐江の間に生まれた、桃斗の妹 去年の春に死んでいる

  百戸  信子……桃斗の祖母 信二の母

  八瀬  竜馬……桃斗の親友

  外村  桜子……桃斗の元カノ 桃斗が90キロを超えた時に絶交を言い渡した

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高校ライトノベル・堕天使マヤ・第三章 遍路歴程・10『「け」の町行進曲』

2019-01-22 06:55:13 | ノベル

堕天使マヤ・第三章 遍路歴程・10
『「け」の町行進曲』
        


 パレードの行進曲で目が覚めた。

「あれ……?」
 マヤは混乱して時計を見た。腕時計は七月三十日午前八時過ぎを指している。
「やっぱり一晩たってる……恵美起きなよ」
 自分の肩に頭を寄せて眠っている恵美を起こした。
「う~ん……」
 恵美は思い切り腕を伸ばして大あくび。
「このお祭り騒ぎの中でよく眠れるわね」
「ちょっと居眠りしただけでしょ、だってパレードはまだ続いてるもの」
「ちがう、また一晩たってしまったのよ」
「え……だって、広場の時計は五時半……この町に着いて、まだ二時間ほどだよ」

 そう、記憶は二日前の七月二十八日。

 時空のゲートを超えて「け」の町に入ると、ちょうどパレードが出てお祭り騒ぎだった。珍しさもあって、ほんの三十分ほど見ているつもりだった。パレードはディズニーランドのそれの三倍くらい楽しいもので思わず時間が過ぎるのも忘れてのめりこんでしまった。
 途中で二回眠くなった。
 一度目は恵美のように居ねむりだと思った。パレードは続いていたし、見物客の顔ぶれもほとんど変わっていない、日差しも変わらないし、なによりも時計の時間が進んでいなかった。

 昨日(恵美は、ついさっき)眠りに落ちる寸前に「起きたら自分の腕時計で時間を確認」と自分自身に魔法をかけておいた。

「恵美、行くよ」
「もうちょっと……」
「あっちに、もっと楽しいものがあるから」

 二人は、人目をさけ町はずれの時空ゲートの丘までたどり着いた。白魔法でゲートを開けようとすると声がした。

「わたしも連れて行ってください」
 振り向くと、パレードの衣装を着た女の子が、すがり付くような目で二人を見ている。
「あなたは?」
「「け」の町のパレードガールです。この町はおかしいんで逃げ出したいんです」
「……やっぱり」
 風がかわったのか、パレードのさんざめきが聞こえなくなった。
「「け」の町の「け」は普段通りという意味なんです」
「ハレとケね。それにしても賑やかな「け」だこと」
「ここは賑やかなのが「け」なんです、一年中パレードなんですから」
「一年中パレード……いけないの?」
 恵美が素朴な質問をする。
「この町では時間がたちません。いつまでたっても七月二十八日、見物客の人たちは一日一回眠ってはいるんですけど、ほんの居眠りにしか感じません。時計は進みませんし、目覚めた時にはパレードが始まっていますから」
「で、あなたはどうして逃げ出したいの?」
「お気づきになったでしょ。目覚めると、まわりの見物客の何人かが消えているのを」
 マヤは思い当たった。目覚めた時、まわりの見物客のほとんどは替わっていなかったけど、わずかに新旧の入れ替わりがあった。
「その人たちは?」
「原子分解されて食糧や町を動かすエネルギーに使われます……パレードは賑やかで楽しいですけど、パレードだけでは人も町も生きてはいけませんから」
「ハレをケにしてしまったツケね」

 そのとき襲いかかるようなパレードの行進曲がすぐそばでおこった。

「見つかった、すぐそばにパレードが!」
「早くこっちに!」
 マヤと恵美は、パレードガールをかばうようにして時空のゲートに飛び込んだ。

 気づくと懐かしい列車の中にいた、どうやら間一髪のところで間に合ったようだ。

「時間が早く過ぎていく……」
 車内の時計を見て、恵美がホッとしたように言った。トンネルに入ると時計の回転は、さらに速くなった。
「あ、あの子!?」

 トンネルを抜けると、向かいの席に座っていたパレードガールはミイラになっていた。

「この子の時間を考えていなかった……名前もまだ聞いてなかったのに」
 マヤは、ギロチン式の窓を開けてやった。
 すると、風が吹き込んできて、パレードガールを一握りのダストに変え、窓の外に連れ去っていく。

 列車が弔うように汽笛を鳴らした……。

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