大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・堕天使マヤ・第三章 遍路歴程・16『「し」んだいしゃ・2』

2019-01-31 15:22:17 | ノベル

堕天使マヤ・第三章 遍路歴程・16
『「し」んだいしゃ・2』
        

 

 

 閉じ込められてしまった。

 

 寝台車なのだから寝ていればいいのだろうが、一方的に閉じ込められるのは面白くない。

 マヤ一人だけなら抜けられないことも無いのだが、閉じ込めるということは出て来て欲しくない事情があるのだろう。

 わざわざ出て行ってもめ事に巻き込まれるのもご免だし、恵美の顔を見てため息一つついてシートに腰掛ける。

「次の駅までこのままなのかなあ」

 上目遣いに恵美がこぼす。

「さっさと寝ようか」

「なんだかつまらない。高級そうな寝台車だからさ、ちょっと探検とかしてみたくない?」

 ちょっと意外な気がした。

 出会ってからこっち、マヤの言う通りに付いてきた恵美、自分の意思を言うのは珍しい。少し突っ込んでみたくなった。

「どんなところを探検したい?」

「そりゃ、寝台特急なんだからさ、特等車とかあるんじゃない? お客さんが起きてるようなら『ちょっと見せてください』とかさ。展望デッキとか付いてりかもしれないし」

「なるほど」

 探検というから、あのことに気づいているのかと思ったが、そうではないようだ。

 

「スマホのCMでやってたじゃん、オリエント急行みたいに豪華な寝台車でさ。そうそう、食堂車とかもゴージャスそうじゃない!」

 食堂車と言ったとたんに恵美のお腹が鳴った。健康なやつだ。

「あ~~~~「こ」の寺町でお味噌汁頂いてからなにも食べてないよう……」

 驚いた、恵美と旅をするようになって食べ物を口にしたのは「こ」の寺町の味噌汁だけなのだ。マヤと旅をしている限り進んで食べる必要は無いのだ。

「食堂車でどんなものが食べたい?」

「そりゃ、おしゃれなものでしょ。フレンチとかイタリアンとか! ああ、でもさ、焼き魚にとかもいいかも……」

 ピ

 電子音がしたかと思うと、進行方向の壁にオレンジ色のランプが灯った。

「なんだろ?」

「ランプに触れてごらん」

 恵美が指先で触れると、ランプの下がテレビの画面ほどに開いて二人分の食事が出てきた。

 フレンチとイタリアンと焼き魚という注文通りのメニューだ。

「わー、すごいすごい!」

「思い浮かべたものが出てくるようだな」

「あ、でも、オデンが付いてない」

 すると取り出し口の所にテロップが現れた。

――オーバーカロリーになりますのでオデンは割愛しました――

「健康にも気をつかってくれるようだな」

 一口食べて恵美は、とても嬉しそうな顔になった。恵美にあう味付けになっているようで、瞬くうちに平らげた。

「……食後に言うのもなんだけど、閉じ込められたということは……お手洗いにもいけないんだよね」

「どうだろ? お手洗いって言ってみたらどうだ」

「あ、えと……お手洗い」

 すると、窓側の壁に『Water Closet』の表示が現れた。

「なにこれ?」

「ちょっと古風な表示だな」

 すると「restroom」に変わった、恵美がキョトンとしていると「化粧室」に変わって、やっと恵美も納得した。

「ちょっと行ってくる」

 恵美は「化粧室」の中に入っていった……。

 

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高校ライトノベル・🍑・MOMOTO・🍑デブだって彼女が欲しい!・25『災難だ!』

2019-01-31 06:57:09 | ノベル2

🍑・MOMOTO・🍑デブだって彼女が欲しい! 

25『災難だ!』


 災難だ!

 面と向かって「でも、この次こんなことがあったら、放っといて。一緒に走ってる女子もいるから、百戸くんに救けてもらわなくても……ね」 
 陰に回って「デブって……キモ……」とまで言った三好紀香を救けてしまったのだ。
 お地蔵様の後ろで死んだようにへばっている姿を見ては放ってはおけない。
 そいで背中にオンブして、とたんにゲロをぶちまけられた。
 首筋にはダイレクトに、背中はジャージの上からだけど、直ぐにジャージを通して冷えたゲロのジトジトが伝わる。

 しかし、放り出すわけにはいかない。

 校舎裏の角で時間を食ったので、持久走のドンケツは三好を背負ったオレだ。要保護者を遺棄することはできない。
 で、オレも災難だけど、救けてもらったデブの背中にゲロをぶちまけた無様な姿を、クラスメートたちの目に晒されることは、三好にとっても屈辱だろう。
 オレは正門に入ると、折よく学校に入ろうとしていた業者のボックスカーの後ろ、続いて、すぐ脇の守衛室の裏にまわり、すでにゴールした奴らの視線を受けないようにして保健室に向かった。

「あら、百戸君また……ウ!?」

 ドアを開けると、養護教諭の春奈先生が目を剥いた。背中の三好もオンブしているオレも、すさまじい姿のようだ。
「あとは任せて……と言っても、百戸君もジャージ脱いで、これに着替えて」
 オレの惨状を見かねて、春奈先生は保健室にある予備のジャージを渡してくれた。
「あの……こんな状態になったのは、秘密にしてやってもらえませんか。三好もいちおう女子ですから」
「うん、そのつもりでジャージ渡したの。さ、三好さんも着替えさせるから行ってちょうだい」

 体育の先生に報告した。

 三好を救助したことで、少しはオマケしてもらえるかと思ったが、着順表にはドンケツを意味する70という数字が書かれた。

 持久走が終わって、オレが三好を救けたことが広まった。
「百戸のやつ、紀香を狙ってたんじゃない?」
「そうだよ、二回目だしね」
「キモイよね」
「「「「「「「キモイ!キモイ!」」」」」」」
 などと女子たちがかまびすしかった。

 くそ、災難だ!!

 救けたのを後悔したが、女子たちのヒソヒソ話は、終礼が終わるころにはピタっと止んだ。止んでしまうと、災難と思っていた気持ちも冷めて、まあ、このことは忘れてしまおうと思った。
「「先輩、すごいですよ! 先輩はやっぱりデブの鑑です!」」
 野呂と沙紀が口をそろえて誉めそやすのを、這う這うの体で逃げ帰った。

――三好さんを救けたんだね  桜子――

 論評抜きのメールが桜子から来た。お友だちのカテゴリーぐらいには戻してくれるんだろうか?

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