大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・ライトノベルベスト:『The Exchange Vacation』

2019-01-20 16:58:31 | ライトノベルベスト

ライトノベルセレクト
『The Exchange Vacation』
    


 わたしは、三つある内の「休み」で春休みが一番好きだ。

 それも、一二年生のそれに限る!

 夏休み・冬休み、それに対する春休みは全然違う。そうは思わない?
 だってさ、夏休みと冬休みっていうのは、単なる休み。
 休みが終わると、また同じ教室で、同じクラスメートで、時間割とか先生とか完全にいっしょで変化がない。せいぜい席替えがあるくらい。基本的に同じ事が始まるだけ。

 でしょ?

 だけど、春休みは違う。

 だってそうでしょ。学年が一個上がって、クラスも教室も先生もクラスメートもほとんど変わっちゃう。教科書だって、最初手にしたときは、なんだか新鮮。
「今年こそ、がんばるぞ!」って気持ちになる。もっともこの気持ちは連休ごろには無くなってしまうけど。年に一度の身体測定なんかもあって、背が伸びた、体重がどうなったとか、なんかウキウキじゃん。それでいて、学校はいっしょ。勝手知ったる校舎、四時間目のチャイムのどの瞬間までにいけば食堂は並ばずに済むか。合点承知之助!

 三年生は事情が違う。だって、完全に環境が変わってしまう。でしょ?
 中学にいく前の春休みは、それほどじゃなかった。だって公立の中学だから、半分は同じ学校の仲間。学校そのものも、ガキンチョのころから、よく側を通っていたし、お姉ちゃんが三年生でいたから心強くもあった。
 高校にいく前の春休みは、最初は開放感。でもって、入学式が近づくにしたがって、つのる緊張感。二年生になろうとしている今、思い返せば、良い思い出になっている。
 だけど、高三になったら、きっと緊張はハンパじゃないんだろうなあ。だって大学だよ、大学。でもって十八歳。アルコール以外は大人といっしょ。アルコールだって、十八を超えてしまえば飲酒運転でもしないかぎり、大目に見てくれる。そう、車の免許だって取れちゃう! 恋の免許も、なんちゃって……これは、こないだお姉ちゃんに言ったら、怖い顔して睨まれた。
 お姉ちゃんは、この四月から大学生だ。最初は地方の大学を受け独立するとか言ってたけど、お父さんもお母さんも大反対。で、結局、地元の四大で、自宅通学。ここんとこの緊張したお姉ちゃんをみていると、正解だったと思う。

「ねえ、お姉ちゃん、ま~だ!?」
 あまりの長風呂にわたしはシビレを切らし、脱衣所のカーテンをハラリと開けた。
「なにすんのよ!」
 乱暴にカーテンを閉め直した拍子に、カーテン越しに右のコメカミをぶん殴られた。
 お姉ちゃんの裸を見たのは、スキー旅行で、いっしょに温泉に入って以来だ。湯上がりに、肌が桜色。出るところは出て、引っ込むところは、キチンとくびれて、同性のわたしが見てもどっきりした。
「高校最後の、お風呂だからね、いろいろ考え事してたの」
「卒業式、とうに終わってんのに……案外……」
「案外、なによ!?」
「いやはや、大人に近づくというのは、大変なもんだなあって。同情よ、同情」
「余計なお世話。さっさと入っといで」

 そんなに長風呂した訳じゃないのに、お風呂から上がって、少しグラリときて、脱衣場でへたり込んでしまった。一瞬頭の線が切れたのかと思った。
 時間にすれば、ほんの二三秒なんだろうけど、わたしの頭の中で十七年間の人生が流れていった。そして小学校の終わり頃に、なにかスパークするような思い出があったんだけど、言葉では表現できない。
「どうかした?」
「ううん、ちょっと立ちくらみ」
 お母さんの心配を軽くいなして、リビングへ行った。
 テレビが、どこかの春スキー帰りに高速で事故が起こったニュースを流していた。
「あ~あ、二人亡くなったって……」
 お姉ちゃんが、ドライヤーで髪を乾かしながら言った。

 お父さんは、仕事の都合で、会社のワゴン車で帰ってきた。かわりに自分の車は会社の駐車場。
 代わりに残業がお流れになったので、夜食用のフライドチキンを一杯持って帰ってきてくれた。
「また歯の磨き直しだ」
 そう言いながら、わたしも、お姉ちゃんもたらふく頂いた。
「わたしね、春休みは『 Exchange Vacation』だと思ってるの」
「なに、ヴアケーション交換て?」
 お姉ちゃんが、紙ナプキンで、口を拭きながら聞いてきた。
「なんか、全てが新しくなるようで、夏休みとか冬休みとかじゃない、特別な印象」
「それなら、Vacation for Exchangeでしょうが」
「イメージよ、イメージ!」
「ハハ、美保、英語はしっかりやらないと、大学はきびしいぞ」
「もう、うるさいなあ」

 
 その夜、わたしは寝付けなかった……正確に言えば意識は冴えているのに、体が動かない。金縛り……いや、それ以上。目も動かせなければ、呼吸さえしていない。でも意識だけは、どんどん冴えてくる。お父さんが、何かをしょって部屋に入ってきた。お母さんが、大容量のハードディスクみたいなのを持って続いてくる。
 お父さんは、しょっていた物を横のベッドで寝ているお姉ちゃんの横に寝かした……それは、もう一人のお姉ちゃんだった。
「いつも辛いわね、この作業……」
「真保は、これで終わりだ。あとは義体の調整でなんとかなる」
 お母さんは、ハードディスクみたいなのを中継にして、二人のお姉ちゃんの右耳の後ろをコードで繋いだ。古い方のお姉ちゃんの目が開いて、赤く光った。それは、しだいに黄色くなり、五分ほどで緑に変わると、光を失った。
「起動は五時間後ね」
「ああ、それで熟睡していたことになる。着替えさせるのは、お母さん、頼むよ」
「年頃の女の子ですもんね」
 お母さんは、古いお姉さんを裸にして、新しいお姉さんに着替えさせた。
「じゃ、美保の番だな……」
「真保、きれいに体を洗ってますよ。分かってたんじゃないかしら?」
「まさか、そんなことは……」
「そうですよね。ただ、三月の末日と重なっただけ……明日は入学式ですもんね」
 お父さんは、右耳の後ろとハードディスクみたいなのをケーブルに繋いで、いろいろ数値を入力していった。
「右の記憶野に……」
「なにか、異常ですか!?」
「いや……単純なバグだ。回復したよ」
「来年は、美保の義体も交換ですねえ……あの事故さえ無ければ」
「それは、もう言うな。スキーに行こうと言ったのは、オレなんだから」
「せめて、母星のメカニックにでも来てもらっていたなら……」
「言うなって。もう、真保はシュラフに入れたか」
「はい……」
 お父さんが、シュラフに入った古いお姉さんを担ぎ、お母さんが、跡を確認して出て行った。

 わたしは、全てを理解した……お姉ちゃんが、わたしの右のこめかみを叩いたのは、無意識の意思があった。それは、自分の境遇を知った上での感謝の気持ちだった。
 そして、目が覚めると、夕べの事は全て忘れていた。
「もう、どうして早く起きないかな。入学式でしょうが」
 歯ブラシを加えながら、お姉ちゃんが何か言った。
「訳分かんないよ!」
「美保は春休みなんだから、時間関係無いでしょうが!」
「あ、そか……」

 わたしは大事なものが頭に詰まっているようで、半分ぼけていた。でも、今の遣り取りで飛んでしまった。

 でも、このことは人生の大事な時に思い出しそうな予感もしていた……。

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高校ライトノベル・堕天使マヤ・第三章 遍路歴程・8『「く」ちびる議会・1』

2019-01-20 06:57:38 | ノベル

堕天使マヤ・第三章 遍路歴程・8
『「く」ちびる議会・1』
        
   

 デモ隊の若者たちは大汗をかきながら「く」ちびる議会をめざした。

 ひとりひとりがかく汗はしれているが、千人も集まるとけっこうな量になる。デモ隊が通ったあとの道にはてんてんと黒いしみがアスファルトに染みついていく。
 しかし、アスファルトの表面温度は六十度を超えており、汗のしみは二十秒ほどで消えていく。
「なんだか暗示的だな……」
「え、なにが?」
 恵美の質問には答えず、マヤは別のことを言った。
「何人か子連れの人がいる、気を付けてあげて」
「うん。あ、なんだか景色の見え方が変だ」
「温度変化が見えるように白魔法をかけたの、白く光って見えるところが一番温度が高い。あとは黄色、赤、緑、青の順。しっかり見ていて」
 若い親たちは、子どもの変化に気づかず、マヤと恵美に言われて初めて分かり、六人ほど熱中症の子どもが救われた。

 デモ隊のシュプレヒコールは、子どもたちが暑さにやられる前にネタ切れになっていた。
「戦争法案反対!」
「AP法案をつぶせ!」
「人に殺されたくない! 人を殺したくない!」
「徴兵制反対!」
 信号三ついくころには、この四つの言葉のくりかえしになり、七ついくころには、その単調さに飽きてしまった。
「歌を唄おう!」
 にわかリーダーの青年が場違いの提案をしたが、シュプレヒコールに飽きたデモ隊には、すんなり受け入れられた。

「今日の日はさようなら」「FLY ME TO THE MOON」「 翼をください」「Beautiful World」「THANATOS(タナトス)-IF I CAN'T BE YOURS」まできて恵美がピンときた。
「これって、エヴァンゲリオンに出てくる歌ばっかだ」
「え、まさか」
 まさかはほんとだった。リーダーの歌は、エヴァの挿入歌のベストテンを十位からなぞっている。歌は続く。

「魂のルフラン」「残酷な天使のテーゼ」「桜流し」と続き「Komm, süsser Tod~甘き死よ、来たれ」で議会前に着いた。

「AP法案の反対デモで、甘き死よ、来たれってのは、どうかなあ」
 マヤは違和感を感じたが、恵美は抵抗がないようだ。
「エヴァならOKよ」
 しかし、次の歌からおかしくなった。
「あ、ビギナーだ……」
「え、AKBの?」
 歌は「ビギナー」から「リバー」に替わったが、デモ隊自身には違和感はないようだった。
「まあ、プロテストの心が籠っていりゃOKか……」
 AKBの歌になってからは、最初にメールを回した女の子がのってきた。
「I want you! I need you! I love you!……」
 と、やり出し「ヘビーローテーション」で、一同は歌って踊るデモ隊になってしまった。
「プロテストの心が籠っていればいいんだよね」
「……」
 マヤは、それには答えず、新しい白魔法をかける。

 二人は蝉しぐれとAKBの歌の会に別れを告げ、チョウチョになって議会に潜入した……。

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高校ライトノベル・🍑・MOMOTO・🍑デブだって彼女が欲しい!・14『努力なあ……』

2019-01-20 06:43:36 | ノベル2

🍑・MOMOTO・🍑デブだって彼女が欲しい!

14『努力なあ……』  

 

 ネットオークションで買いました♪(*^^)v

 女の子みたいな絵文字付きで返事が来た。
 野呂がオレの古いブレザーを着ていたので――なんで、オレの古いブレザーを?――とメールを打っておいたのだ。

 では、なぜ着古して捨てたブレザーがネットオークションなんかに出てるのか? 

 女子高生が制服をブルセラショップに売ることは知っている。
 ネットで検索するとゾロゾロ出てくる。まさかと思ったけど、うちの国富高校のも出ていた。

 女子冬服一式で……なんと7万円もする!

 クリーニング済で、名前の刺繍などは取られている。で、当然のことながら男子の制服は、どこのネット通販にも無かった。
 いったいどこのネットオークションなんだ!?
 聞いてみたかったが、なんだか恐ろしい気もして止した。

――百戸さんのものを身に着けるのは、デブのステータスシンボルなんです!――

 ダメ押しに、気持ちの悪いメールが野呂から返って来た。
 オレを「デブの希望の星」と崇めること自体が気持ち悪い。沙紀がデブの危機と弊害について色々教えてもくれた。だけど、オレを「希望の星」にしているという一点で同調することはできない。
 オレは、蔑まれたり、シカトされるべき存在なのだ。癪だけど、90キロを超えた時点で絶交を申し渡した桜子の態度こそが健全だ。

 でも、ただの友だちでいいから、桜子とヨリを戻したいと思うのは本音。デブ……いや、青春というのは矛盾に満ちたものだ。

「桃斗、もう起きなさいよ……」
 その一言で起きてしまった。
 寝床の中で春の兆しを感じる昨日今日、生半可なことでは目覚めることは無い。それがLEDの照明が点くように目覚めたのは、夢の中で見たあいつの声だったからだ。
「ん……桜子?」
「こんな風に、目覚めたかったのよね」
 スプリングセーターにエプロンという新婚の嫁のスタイルで、なんとニ十センチほどの近さに顔を寄せているではないか!
 ホンワリと良い匂いがする。シャンプーと微かな香水、それに桜子自身から発するフェロモン。これを嗅いで目覚めない男はいない。
「おはよ、ダーリン」
「桜子……!」
 瞬間的に欲情して、腕を伸ばし、桜子を抱きしめようとした。
 とたんに、スッと桜子が天井まで飛び上がってしまった。
「え……?」
「リビドー高すぎ」
 天井にへばり付いたまま、桜子は別人の声。
「え、ええ?」
「あたしよ」
 髪をなびかせ、フワリと降りた姿は妹の桃だった。
「声で、あたしだって分からなかったの?」
「そりゃ無理だ、姿かたちに匂いまで桜子なんだからな!」
「あのね……」
「幽霊だからって、桜子に化けてイタズラすることはないだろ」
「化けてないわよ、声だけ桜子さんぽくやってみただけ」
「うそだ、完全に桜子そのものだったぞ!」
「あのね、お兄ちゃんは、それだけ桜子さんのことが好きだってことだよ。でしょ?」
「うう……それは認める」
「だったら、桜子さんが、もう一度振り向いてくれるように努力しなさいよ。お友だちぐらいには戻ってもいいって言ってくれてるんでしょ?」
「う、うん……」
「デブの希望の星……なんだよね」
「野呂とか沙紀が言ってるだけだ」
「うん、あの子たちはデブを否定しすぎる。けど、お兄ちゃんはデブの上に胡坐をかきすぎ。少しは努力しなよ」
「努力なあ……」

 想いを巡らしているうちに二度寝をしてしまった……。 

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