大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・005『1970年のこんにちは』

2023-02-01 17:08:51 | 小説

(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

005『1970年のこんにちは』   

 

 

 ガックン……ガックン……ガックン、もひとつオマケにガックン。

 

 ガックンを数回やって電車は宮之森駅についた。

 運転手がヘタッピーなのか、電車がポンコツなのか、はたまた、その両方なのか、ガックンガックンしながら停車した。

 二回目の停車なので慣れたって言えば慣れたけど、ちょっと不愉快。微妙に足を突っ張ってショックをいなす。

 ほかの乗客は平気な顔してるから、まあ、1970年代の電車って、みんなこうなんだろうね。

 

 降りた宮之森駅は、やっぱり平場の駅。

 電車を降りて、すぐに改札が見えるって、なんだか田舎っぽい。

 改札の駅員は、やっぱ不愛想で「ご乗車ありがとうございました」の一言もない。

 ちょっと(ꐦ°᷄д°᷅)! ビク(◎o◎)!

 駅員が呼び止めた……と思ったら、後ろの男子。

 料金が10円足りないとかで糾弾されてる……「うい」……男子は、他の人の邪魔にならないようにして、10円玉を出すと、改札のステンレスの縁のとこにピシャンと置いて、わたしのことをジャマ!って感じで避けながら行ってしまう。

 おっかねえ。

 自動改札に通せんぼされるのもムカつくけど、あんな風に糾弾されたら、一か月は立ち直れないかも(-_-;)。

 

 チャンチャンチャッチャラチャンチャン♪ チャチャチャチャ~ン♪

 

 陽気な軍艦マーチ! ここへきて右翼の街宣車かと思ったらパチンコ屋!

 ドアが開いて、不景気そうなオッサンが店から出てくるところ。軍艦マーチの裏にはチーンジャラジャラと分かりやすいエフェクトも入っていてパチンコ屋丸出し。

 ネオンサインとかノボリだとかのディスプレーも、エレクトリカルパレードかっちゅうくらいにド派手!

 こんなとこにパチンコ屋あったけ?

 願書持ってく時と、今朝の合格発表と、さっきの合格者説明会の時に、ここを通ったけど……スーパーだったんじゃ……ワ、自転車だらけ!

 駅前は放置自転車でいっぱい!

 四車線の道路が二車線しか通れないんですけど……交通監視員のオジサンも居なければ、お巡りさんも居ない。

 え、信号機のとこにゴミ箱と灰皿!? それも、どっちも満杯だし!

 たばこクサ~イ……街の中で鼻をつまむわけもいかず、ちょうど青になったのを幸いに横断歩道を渡る。

 渡ったところに交番、令和の時代と違って『KOBAN』の文字は無い。あれは普通に読んだら『小判』だもんね。なんか子どもじみてるし。木の看板に『宮之森駅前派出所』とあって、わたし的にはグッド。

 でも、中にお巡りさんの姿はない。貼ってある警察官募集のポスターのお巡りさんは、ドラマとかでしか見たことない制服。自衛隊の制服を紺色にしてベルト締めましたっ!的。

 学校に着くまでは、まず商店街を抜ける……さっきよりもお店が多い。

 お祖母ちゃんと来たときも同じ商店街なんだけど、こんなにお店は開いて無かった。

 

 こんにちは~こんにちは~西ぃの国から~♪ こんにちは~こんにちは~東のぉ国から~(^^♪

 

 ちょっとダサイけど、ご陽気な演歌っぽい歌がアーケードの中から聞こえてくる。

 なんだ、このこんにちはの大安売りは?

 1970年のこんにちは~(^^♪

 

 あ、あああああ、そうだ! そうだよ!! 1970てば、万博があった年だ!!

 そうだよ、あの伝説の日本万国博がリアルで見られる年だよ!

 細々と凹むこと見てきたけど、こいつはラッキーかも!

 

 こんにちは~こんにちは~ 握手をしよ~お(^^♪

 

 気が付いたら、何年かぶりでスキップなんかしてしまって、ちょっと恥ずかしかった(^_^;)

 

 ちょうどお昼時なので商店街を出るまで、あちこちから美味しそうな匂い。

 食べ物屋さんも、さっきよりずっと多い。でも、マックもケンタも吉牛も無い。

 おお、今川焼のいい匂い! ちかごろ今川焼は大きなショッピングモールとかに行かなきゃお目に掛かれない。

 

 で、一個20円(⊙ꇴ⊙)!

 

 この時代は消費税とかも無いから、100円で五個買える! 帰りに買って帰ろう!

 一個だけでも買って食べたかったけど、合格者説明会なんだ。がまんがまん。

 ここで曲がって学校への道というところに、なんと映画館!

 昔は、商店街に映画館は付き物だったらしいけど、リアル『街の映画館』だよ。

『ブラボー若大将』と『男はつらいよ フーテンの寅』の二本立てだって……加山雄三も寅さんも、めっちゃ若い!

 路地を挟んで、もう一つ映画館……『おさな妻』……Z指定?

 

 映画館を尻目にアーケードを出る。ちょっとお日様が眩しい。

 

 あれ?

 電線がおかしい……なんかサッパリしてる……あ、光ファイバーの線が無いんだ。

 電線に並んで、グルグルの螺旋のところに何本も通ってる黒いケーブル。

 そうか、ここは完全無欠のデジタル世界なんだ。

 見れば、タバコ屋の公衆電話も伝説の赤電話! 郵便ポストもトトロの世界かっていうような円筒形!

 ここから学校までは、おおむね住宅街。

 ム……家の前にゴミ箱がある。

 水色のバケツに蓋が付いたようなのが多いんだけど、中には、木製やらコンクリートのもチラホラ。

 まあ、みんな蓋があるしゴミ袋よりはうんと頑丈そうだから、ハトやカラスにやられることはないんだろうけど、清掃局の人は大変じゃない?

 いちいち、ゴミ箱開けるの? それとも回収の日に出すのかなあ?

 

 学校が見えてきた。

 

 体育館は古い一階建てだけど、他の校舎は、さっき見たのといっしょ。ソテツや桜とか、植栽は大きくなってない。

 梅は、まだほんの蕾。やっぱ、令和は、ちょっと温暖化?

 さて。

 しまった! 合格者説明会って保護者同伴だよ!

 

☆彡 主な登場人物

  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
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RE・乃木坂学院高校演劇部物語・102『二つのサプライズ』

2023-02-01 07:24:32 | 青春高校

RE.乃木坂学院高校演劇部物語    

102『二つのサプライズ』 

 


 それは、ラストシーンの撮影が終わった直後におこった。

 監督さんがOKを出したあと、ディレクターとおぼしき(あとでNOZOMIプロの白羽さんだって分かる)人が、ADさんに軽くうなづく。

 ドドーン

 バサリ

 ロケバスの上から花火があがって、カメラ載っけたクレーンから垂れ幕!

――『春の足音』ロケ開始! 主演坂東はるか!――

「え、ええ……ちょっと、これってCMのロケじゃないんですか!?」

 驚きと、喜びのあまり、はるかちゃんはその場に泣き崩れてしまった。

「おどかしちゃって申し訳ない。むろんCMのロケだよ。でもカメラテストも兼ねていんだ。僕はせっかちでね、早くはるかちゃんのことを出したくって、スポンサーの了解を得て、CMそのものがドラマの冒頭になるようにしてもらったんだ。監督以下、スポンサーの方も文句なし、で、こういう次第。ほんと、おどかしてごめんねぇ(^_^;)」

 白羽さんの言葉の間に高橋さんが優しく抱き起こしていた。さすが名優、おいしいとこはご存じでありました。

「月に三回ほど東京に通ってもらわなきゃならないけど、学校を休むようなスケジュ-ルはたてないからね。それに相手役は堀西くんだ、きちんとサポートしてくれるよ」

「わたしも、この手で、この世界に入ったの。大丈夫よ。わたしも、きちんとプロになったのは高校出てからだったんだから」

 と、堀西さんから花束。うまいもんです、この業界は……と、思ったら、ほんとうに大した気配り。とてもこの物語には書ききれないけど。

 で、まだ、サプライズがある。

「ハイ、分かりました! ありがとうございました! わたしみたいなハンチクな者を、そこまでかっていただいて。あの……」

「なんですか?」

 このプロデューサーさんは、とことん優しい人なのだ。

「周り中偉い人だらけで、わたし見かけよりずっと気が小さいんです。人生で一等賞なんかとったことなんかありませんし。よかったら、交代でもいいですから、そこの仲間と先輩に、ロケのときなんか付いててもらっちゃいけませんか……?」

「いいよ……そうだ、そうだよ! ほんとうの仲間なんだからクラスメートの役で出てもらおう。きみたち、かまわないかな?」

 え……(*°∀°)!?

 というわけで、その場でカメラテスト。

 笑ったり、振り返ったり、反っくり返ったり……はなかったけど。歩いたり、走って振り返ったり。最後は音声さんが持っていたアイドルグループの音源で盛り上がったり。

「監督、変なものが写ってます!」

 編集のスタッフさんが叫んだ。みんなが小さなモニターに集中した。

 それは、わたしたちが一番盛り上がっているところに写りこんでいた。

「兵隊ですかね……」

「兵隊に黒い服はないよ……これは、学生だな……たぶん旧制中学だ」

 と、衣装さん。

「この顔色は、メイクじゃ出ませんよ」

 と、メイクさん。

「今年も、そろそろ大空襲の日が近くなってきたからなあ……」

 と、白羽ディレクター。

「これ、夏の怪奇特集に使えるなあ」

 と、監督。

 わたしたちはカメラの反対方向を向いてゴメンナサイをしている乃木坂さんを睨みつけておりました。

「「どうかした?」」

 潤香先輩と、堀西さんが同時に聞くので、ごまかすのにアセアセの三人でした(^_^;)。

 

☆ 主な登場人物

  • 仲 まどか       乃木坂学院高校一年生 演劇部
  • 坂東はるか       真田山学院高校二年生 演劇部 まどかの幼なじみ
  • 芹沢 潤香       乃木坂学院高校三年生 演劇部
  • 芹沢 紀香       潤香の姉
  • 貴崎 マリ       乃木坂学院高校 演劇部顧問
  • 貴崎 サキ       貴崎マリの妹
  • 大久保忠知       青山学園一年生 まどかの男友達
  • 武藤 里沙       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 南  夏鈴       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 山崎先輩        乃木坂学院高校二年生 演劇部部長
  • 峰岸先輩        乃木坂学院高校三年生 演劇部前部長
  • 高橋 誠司       城中地区予選の審査員 貴崎マリの先輩
  • 柚木先生        乃木坂学院高校 演劇部副顧問
  • 乃木坂さん       談話室の幽霊
  • まどかの家族      父 母(恭子) 兄 祖父 祖母
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