大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

くノ一その一今のうち・40『甲府城・1』

2023-02-10 11:27:32 | 小説3

くノ一その一今のうち

40『甲府城・1』 

 

 

 二日目は甲府城のロケ。

 

 甲府城って甲府駅のすぐ近くで、つまりは街のど真ん中にある。

 城内にはホテルや明治の大水害の後に建てられた謝恩塔(大きなオベリスク)とかがあって時代劇を撮るのには向いていない。

「こんな風にやります」

 監督が木陰でモニターを指し示す。

 モニターには、カメラが撮っている、ちょっと見上げたアングルで石垣と城門が映っている。

 いかにも、初めてお城に来た者が見上げてため息をつきそうな絵柄で、さすがは監督。

 だけど、後ろには高層のホテルやら電線やらが写り込んでいる。それに、石垣の縁の柵も邪魔。

「こうするとね……」

 監督がクリックすると、ホテルも電線も一瞬で消えて、思わず実際の風景を見てしまう。

 当たり前だけど、実際のホテルも電線も、そこにあり続けている。

「そして、こうやるとね……」

 再び監督がクリックすると、石垣の上に白壁が現れ、白壁の向こうには城内の御殿の屋根やら櫓やらが現れた。

「いやあ、CGって凄いんですねぇ!」

 まあやもビックリ。小さく拍手して喜んでいる。

「まあ、見る奴が見たら、日本中のいろんなお城から集めてきたハメこみって分かっちゃうんだけどね。まあ、お城の前に着いたさな子が見た景色は、こんな感じ。まあ、イメージ持って演ってみてください」

「「「はい」」」

 有るはずの物を隠したり、無いはずの物を出したり、ちょっと忍者の騙し合いに似てると思った。

 

「わざわざ江戸からお越しいただいてありがとうございます。この甲府も風雲急を告げてまいりました、うかうかしていては、御公儀にも日本の国にも為にならぬ者の手に渡るおそれもあります。よろしく探索なさってください」

「はい、及ばずながら、師範からも指名を受けて参りました。千葉さな子、微力を尽くす所存でございます」

「ははは、そんなに畏まらないでください。わたしも成ったばかりの城代です。大きな声ではいえませんが、ほんの去年までは旗本が勤番で務めた名誉職。城代と名前は変わりましたが実質はありません。そんな甲府城代には信玄の埋蔵金など荷が重い。さっさと見つけ出して江戸の金蔵に収めたいというのが本音なんです」

「はい、ご城代さまは道場に通われていたころと変わりませんねえ」

「はは、幕府の人材も払底してきましたかなあ」

「いいえ、ようやく見る目が出てきたのでしょう、軍艦奉行の勝様も八面六臂のご活躍です」

「はは、勝様と比べられては入る穴もありません。では、支配地の見回りもありますので、これにて。ああ、入用のものがありましたら、納戸奉行に申し付けてください、話は通してありますから」

 まあやのさな子に合わせて頭を下げる。ゆっくりと顔をあげると櫓の上には青い空が広がって、トンビがくるりと輪を描いた。

 

 カット!

 

 監督がOKを出して、午前中二つ目の『城代との対面』のシーンが終わる。

 録画を確認したらお昼休み。

 みんなでモニターを見ていると、横に三村紘一。

―― 昼休み城内探索 稲荷櫓の前 ――

 忍び語りは、御城代様のようにくだけてはいなかった……

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者

 

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宇宙戦艦三笠23[暗黒星団 暗黒卿ダースべだ・1・ウレシコワの誕生日]

2023-02-10 09:27:08 | 真夏ダイアリー

宇宙戦艦

23[暗黒星団 暗黒卿ダースべだ・1・ウレシコワの誕生日]      

 


 今日はヴァリヤーグ、つまりウレシコワの誕生日だ。

 数奇な運命をたどったヴァリヤーグは、ソ連の航空母艦として作られたが、建造費の不足から工事がストップ。その後ソ連の崩壊からウクライナの所管になるが、ウクライナは彼女を空母として完成させる気持ちも費用も無かった。


 持て余したウクライナ政府は、スクラップにするのももったいないので、売りに出すことにした。

 しかし建造途中の新古品空母として売り出したもので価格が高く。また、空母としては時代遅れであったっため買い手が付かず、中国海軍の息のかかったペーパーカンパニーがスクラップとして格安で購入。最初はカジノとして使われる予定だったが、中国は、これを本格的な空母として修復したが、エンジンが商船用のディーゼルしか間に合わず、空母としては必須要件の30ノットの発艦速度が20ノットしか出せず。艦載機は武装した重量では発艦ができないというお粗末さだった。


 世界は、彼女のことを「空母の実物大模型」と揶揄した。


 当の中国も、これをもって主力空母にするつもりは無い。「遼寧」と改名し、いかついガタイで東南アジアの国々に睨みをきかせ、空母としてのノウハウを手に入れるだけで充分であった。現に彼女のデータをもとに設計がしなおされ、山東と福建が建造された。

 妹二人は、中国の最新鋭空母としてやる気満々だったが、カジノになるつもりだった彼女は気持ちが乗らず、無理なワープで故障したのを機に船霊のウレシコワは三笠にやってきたのだ。

 しかし不調のウレシコワはロンリネスでは上陸もできず、三笠の居候になった気分であった。そんな彼女を慰めるために、ロンリネスを発ってから三日目に、クルーのみんなでお誕生会を開いた。

 

「お誕生日、おめでとう!」

 

 船霊のミカさんも神棚から出てきて、俺が乾杯の音頭をとってお誕生会が始まった。

「ありがとう、みんな。あたし、今日が自分の進水式の日だってこと忘れてた」

 泣き笑いの顔で、ヴァリヤーグの船霊ウレシコワは乾杯に応えた。

「1988年11月25日。君は立派に生まれたんだ」

「でも、船を離れちゃって、今は三笠の居候……」

「気にすることないわよ。あたしだって元はボイジャー1号だったけど、今はクレアとして三笠のクルーよ」

「そうよ、今を元気に生きていく気持ちがあれば十分よ!」

「ありがとう。ミカさんもみんなも懐が深くて、とても嬉しい」

「もう120年も船霊やってるからねぇ……わたしも、いろいろあったわ。原因不明の爆発で二度沈んじゃったし、記念艦になったあと、終戦直後にはダンスホールにされたり水族館にされたり。でも、いろいろあることが船霊にとっては勲章のようなものよ」

「そうだよ。オレたちのブンケンも解散直前だったし」

「部室だって、三笠に来る前に軽音にとられちゃったし」

「メンバーも、みんなワケ有だし」

「ミカさん、ひょっとして、宿無しばっか集めてるんじゃない?」

 樟葉が鋭い質問をして、みんなの視線がミカさんに集まった。

「理由は簡単よ」

 みんなの視線が、みかさんに集まった。

「元の乗組員は、本人はおろか、孫だって生きていないでしょ……」

「まあ、120歳だもんねぇ……」

 トシが気の毒そうに目を向ける。

「人に言われるとムカつくかも……」

「こら、謝れトシ」

「ご、ごめん(;'∀')」

「アハハ、冗談冗談(´∀`)。海自のOBや自衛艦の船霊さんたちにも声かけたんだけどね、わたしって天照大神でしょ。みんな敬遠するのよね」

「アマテラス時代のミカさん、見てみたいっす(^▽^)!」

 トシが授業のように手を挙げる。

「いや、いまさらお見せするような姿じゃないわよ(n*´ω`*n)」

「アマテラスの画像ならいっぱいあるぞ」

 懐からスマホを取り出す天音。

「スマホ出しても検索できないでしょ」

「保存したのがあるんだ……ほれ」

「「「「「「おお!」」」」」」

「な、なんか神々しい……」

 ウレシコワが感動する。

 天照大神の画像は大昔のから現代のアニメのまであるんだけど、どれも雲の上に乗っていたり、後光を放っていたり、たくさん神さまを従えていたりして神々しい。

「あの……この甲冑姿で怖い顔をなさっているのは?」
 
 ウレシコワは、言葉まで改めて質問する。

「ああ……弟のスサノオが高天原にやってきた時にね、スサノオって、めちゃくちゃ不良だったから……」

「あ、知ってます知ってます!」

「はい、樟葉くん!」

 樟葉が嬉しそうに手を挙げるのを指名してやる。

「天岩戸とかに籠ったりしたんですよね! それで『アマテラスは凄い! かっこいい! 畏れ多い!』ってことになって、最後は、スサノオの爪とか髭とか抜いて追放するんですよね!」

「そうだそうだ、これが、その時の画像だぞ!」

「「「「「「どれどれ(._.)」」」」」」

「おお、テリブル!」「姫騎士!」「女大魔神!」

「ああ、もう恥ずかしいからやめてえええええ(;`O´)o!」

「いやあ、ごめんごめん(^_^;)」

「でも、いまのミカさんは、なんでJK風なんすか?」

 少しだけ空気をもどして聞いてみる。

「あなたたちのせいですよ!」

「俺たちの?」「あたしたちの?」

「あなたたちブンケンの人たちは、小さいころから三笠で遊んでいたでしょ」

「え?」「あ」「ああ」「そういえば」

「小中学生は無料だし!」「高校生でも300円だし!」「お弁当も食べられたし!」

「でも、ミカさんなんて知らなかったよ」

「わたしは知ってたぞ」

「わたしも」

「トシは?」

「アハハ……」

「男子はバチあたりだぞ!」

「ウフフ、神さまっていうのはね、そうやって、みんなが集まって楽しくしてくれたらエネルギーが溜まるものなのよ」

「それで、JK風になっちゃった?」

「まあ、慣れると、とっても具合がいいしね、もう元には戻れないかも(^_^;)……あら、お二人はどうかなさった?」

 気が付くと、クレアもウレシコワも黙ってしまった。

「ウ……なんかいいよね、この雰囲気」

「うん、わたしなんか、太陽系出てからひとりぼっちだったし」

「三笠に出会えてよかった……」

「うんうん」

 ちょっとシンミリしてきた。

「なにしてるニャ!」「めでたい誕生日ニャ!」「楽しくやるニャ!」「乾杯するニャ!」

 ネコメイドたちに元気づけられ、グラスを持ち直したところで、そいつがメインモニターに現れた。


 ジャジャジャジャーーーーン


 黒い鎧兜に黒マント、どこかで見たことがある。


「お楽すみのどごろ申す訳ね。わっきゃ暗黒星雲、暗黒帝国のダースべだ!」

「ダースベーダー!?」

「いんにゃ、ダース……べだ」

 

 暗黒帝国との関わりが始まった……。

 


☆ 主な登場人物

 修一(東郷修一)    横須賀国際高校二年 艦長
 樟葉(秋野樟葉)    横須賀国際高校二年 航海長
 天音(山本天音)    横須賀国際高校二年 砲術長
 トシ(秋山昭利)    横須賀国際高校一年 機関長
 ミカさん(神さま)   戦艦三笠の船霊
 メイドさんたち     シロメ クロメ チャメ ミケメ
 テキサスジェーン    戦艦テキサスの船霊
 クレア         ボイジャーが擬人化したもの
 ウレシコワ       遼寧=ワリヤーグの船霊
 こうちゃん       ろんりねすの星霊

☆ 主な登場人物

 修一(東郷修一)    横須賀国際高校二年 艦長
 樟葉(秋野樟葉)    横須賀国際高校二年 航海長
 天音(山本天音)    横須賀国際高校二年 砲術長
 トシ(秋山昭利)    横須賀国際高校一年 機関長
 ミカさん(神さま)   戦艦三笠の船霊
 メイドさんたち     シロメ クロメ チャメ ミケメ
 テキサスジェーン    戦艦テキサスの船霊
 クレア         ボイジャーが擬人化したもの
 ウレシコワ       遼寧=ワリヤーグの船霊
 こうちゃん       ろんりねすの星霊

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RE・かの世界この世界:005『二日前・2』

2023-02-10 07:21:36 | 時かける少女

RE・

005『二日前・2』   

 

 

 頼まれたら引き受けてしまう。

 

 気の弱さか人の良さか。

『女子二人体調不良で来られなくなった、来てくれないかなあ?』

 メールだったら断ることもできたんだけど、直に電話されては断れない。青年部長の高階さんは困り果てたという声だし。

「分かりました、直ぐに行きます……いいえ、大丈夫です」

 そう応えて後悔はなかった。

 神社に行っても回避する方法はあるだろう。お札は女子十三歳から十六歳の女子でなければ触れない。

 それに、記憶では女子の休みは無かったはずだ。前回とは様子が変わっているし。

 注意さえしていればヤックンの告白を回避できるだろう。

 

「遅くなりました、がんばります!」

 

 勢い込んだ挨拶が、我ながらおかしかった。

 奥のテーブルが女子の仕事場。

 まちがって資格のない者、特に男が入り込まないように赤い毛氈が敷かれている。

 八人の女子が向き合って、せっせとお札を作っている。

 神さまの名号印と朱印を押して、乾いたら裏に祭りの日付、そして熨斗を付けて袋に詰める。

 これだけの事なんだけど数が多いし、字体を始め朱印の押し方熨斗の付け方にも型があって、けっこう面倒なんだ。

 わたしも冴子も今年で四年目の十六歳。

 今年で最後。去年は人が足りずに、普通、最初の十三歳で演る巫女神楽を冴子と一緒にやった。

 今年は、めでたく新人の十三歳の子が演るので、二度も務めた私たちは、ま、先生役だ。

 その神楽のお稽古もあるので、お札は早く片づけなきゃならない。

 

 十分ほどして気づいた。      

 

 座っている所が前回といっしょなのだ。向かいに冴子が居て、端っこの二つが空席だ。

 二人休んでいるから変わっているはずと思っていたんだけど……そうか、前回も二人は休んでいたんだ。

 ベテランのわたしが最初からいたから、前回の高階さんは、二人休みと連絡が入っても、慌てて電話なんかしてこなかったんだ。

 

 ということは……このままだと同じ展開になる、なってしまうよ。

 

 キリがいいのでお茶を飲みに行く。それを潮に座る場所を変えよう。

 お茶を一息で飲み切ると「よし!」と掛け声かけて端っこの空席に回る。

 場所が変わった新鮮さなのか作業は一段とはかどり出した。

 

 あ、ヤバ。

 

 二つ向こうのテーブルで作業をしているヤックンと対面(といめん)になっている。

 正直視線を感じる。視線と言ってもガン見の視線じゃない。作業の合間、視界に入った時にわたしを見ている。時間にしてコンマ何秒……でも分かってしまう。瞬間だけど、籠められた熱量がすごいから分かってしまう。
 
 前回はコクられるまで意識しなかったけど、ヤックンは、こんな視線でわたしを見ていたんだ。

 今さら、元の席に戻るのはあからさまに過ぎる。

 

「ヨッコイショっと……こっち仕事溜まってるね」

 

 ヤックンの視線を遮るように冴子が前に座った……。

 

☆ 主な登場人物

  •  寺井光子  二年生
  •  二宮冴子  二年生、不幸な事故で光子に殺される
  •  中臣美空  三年生、セミロングの『かの世部』部長
  •  志村時美  三年生、ポニテの『かの世部』副部長
  •  


 

 

 

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