大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

宇宙戦艦三笠26[ダススターとヨーダ]

2023-02-14 09:23:07 | 真夏ダイアリー

宇宙戦艦

26[ダススターとヨーダ]  

 

 

 一言で言って、クレーターの中は一見ガランドーだった。

 モニターで拡大すると、ガランドーの中には神経細胞のシナプスのようなものがあって、それぞれがニューロンのような突起を張り出している。突起の先にはゴミのようなものが付いているが、よく分からない。

 なんだ、あのシナプスとニューロンは?

「シナプスはベース(基地)、ニューロンは港の埠頭のようなものよ」

 クレアが冷静に解析してくれる

 ガチーーン

 誘導ビームは――しっかり掴まえたぞ――という感じの牽引ビームに切り替わって、速度は落ちたがレールに載っているような確かさで引っ張られていく。

 三笠は、アルファ星のど真ん中にある巨大シナプスのニューロンの一つに接岸した。

「おお、これは……」

「ニューロンの突起のように見えてたのは、全て戦闘艦や戦闘機だよ……!」

 ニューロンの埠頭を歩きながらトシが、感激の声を上げた。

「いったいどれだけの数なんだ……」

 演習で、レイマが言っていた数字がハッタリでないことがよく分かった。

 いつも、俺の喜怒哀楽に茶々を入れる天音も、それを程よくいなしてくれる樟葉も黙ったままだ。

 クレアは観察と演算のし過ぎで頭に放熱の陽炎が立っている。

 ウレシコワは数歩先の地面だけを見て歩いている。ソ連、ウクライナ、中国と流浪の半生だったので、余計なものは見ないという習慣がついているのかもしれない。

 これだけのベースと戦闘艦艇を持っていても、星として観察するとスカスカ。リアルの星の密度の凄さには及ばない。その星々を数光年、数十光年、数百光年の隔たりをもって、無限に抱えている宇宙というのは、泣きたくなるほどに広大なんだ。

 この旅が終わったら、俺は宗教の一つや二つは起こせるかもかもしれない。

 戦後、真珠湾攻撃体の飛行隊長だった淵田中佐は、戦後キリスト教の伝道者になったし、アポロ計画で月に行った宇宙飛行士の中にも宣教者になった者がいるという。


 埠頭の向こうに人が現れた。


 人型のロボットを二台連れている。ロボットは中学生ぐらいの背丈だが、人間の方は、それよりも低い、いや小さい。

「アルファ星にようこそ。姫には申し訳ありませんが、念のためダススターに寄ってもらいました。お許しを」

「やっぱり、わの考えだげでは頼りねようだね」

「畏れながら、10万機の飽和攻撃のシュミレーションで、船が大破、艦長戦死の結果では、暗黒星団からお出しするわけにはまいりません」

「ハー、やっぱり、あれやるんだが?」

「ベー卿も同意です、殿下」

 レイマ姫は、思い切り嫌な顔(⁎ꈍ﹃ก⁎)をした。

「このアルファ星は、通称ダススターと呼ばれておりましてな。暗黒星雲の中にあるベースの一つです。あなたがたには姫といっしょにフィフスの訓練を受けてもらいます。おお、わたしとしたことが自己紹介を忘れておりましたな」

「この爺っちゃは、暗黒星団一のジョーダンマスターだす。ジョーダンでしゃべっても冗談の通ずるふとでねはんで、そのづもりで」

 レイマが前フリをした。

「わたしは、地球で言えば大統領補佐官兼特殊部隊の指揮官と教官を兼ねたことをやっとります。名前はナンノ・ヨーダ。ナンノが苗字で、ヨーダが名前です」

「で……ナンノ先生、我々が受ける、そのフィフスの訓練とは、どういうものなんだろうか?」

 天音が恐る恐る聞いた。恐る恐るでもタメ口だけどな。ウレシコワは黙ってついてくる。大昔のソ連を擬人化したような沈黙だ。クレアは五感のスイッチを切ったのか、頭に陽炎をたてることもなく、外交的笑顔になり、トシは早くも疲れが出たのか背中が丸い。

 ミカさんは分身を同伴させてくれた。日本の神さまは便利で、分祀という形で、いくらでも分身がきいた。ミカさんは年季の入ったアルカイックスマイルだ。

 埠頭を過ぎると、管制塔のような建物の中に入った。

「このダススターには、君たちが考えているより一桁多い艦艇と作戦機がいる。きたるべきグリンヘルドとシュトルハーヘンとの戦いに備えてのことです」

「この暗黒星団は、グリンヘルドもシュトルハーヘンも敬遠してるんじゃないですか?」

「今の段階ではのう。しかし、将来は分からん。げんにこうして三笠の諸君が、ここにいる。君たちが来られるということは、敵がいつ来てもおかしくない……ですなレイマ姫」

「……んだの、ヨーダ」

 それから、三笠のクルーたちはフィフスの訓練に入った。なんでフィフスというのか不思議だったが、答えは簡単だった。

「フォース(4th)の上をいくものだからです」

「ああ、5th(五番目)」

 簡単に言えば第六感を磨き、その5thにふさわしい魔術を身につけることらしい。

 五番目で第六感……それなら、6th(シクスス)とか言えばいいのに。

―― ヨーダのジョーク ――と、レイマが囁く。

「第六感というのは、閃くもので、人の意思ではコントロールができません。意志によって、自由に操れるのがフィフスなのです。コントロールできる第六感、故に、その手前のフィフスというわけですな」

 えーーほんとかなあ(^_^;) なるほどぉ むむむ  反応はさまざま。

 で、その最初は、ナンノ・ヨーダが連れていた二台のロボットとジャンケンすることから始まった……。

 

☆ 主な登場人物

 修一(東郷修一)    横須賀国際高校二年 艦長
 樟葉(秋野樟葉)    横須賀国際高校二年 航海長
 天音(山本天音)    横須賀国際高校二年 砲術長
 トシ(秋山昭利)    横須賀国際高校一年 機関長
 ミカさん(神さま)   戦艦三笠の船霊
 メイドさんたち     シロメ クロメ チャメ ミケメ
 テキサスジェーン    戦艦テキサスの船霊
 クレア         ボイジャーが擬人化したもの
 ウレシコワ       遼寧=ワリヤーグの船霊
 こうちゃん       ろんりねすの星霊
 レイマ姫        暗黒星団の王女 主計長

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RE・かの世界この世界:009『三つ子ビルのたとえ』

2023-02-14 07:15:55 | 時かける少女

RE・

009『三つ子ビルのたとえ』   

 

 

 落ち着いてくると部室の様子が分かって来た。

 
 教室一つ分ほどの部室は畳敷きで窓が無い。三方が障子と襖で、そこを開けると廊下とか別室に繋がっているのかもしれないけど、なんだか、そこには興味を持たない方がいいような気がする。

 中臣先輩が立ち上がって、つられて首を巡らすと、驚いたことに上段……というのかしら、一段高くなっていて、壁面は全体が床の間みたい。三つも掛け軸が掛かっていて、その横は違い棚で、香炉やら漆塗りの文箱みたいなのが上品に置いてある。

 これって、時代劇とかである……書院だったっけ、お殿様が太刀持ちのお小姓なんかを侍らせて家来と話をしたりするところだ。大河ドラマのセットみたいだ。

 中臣先輩は、襖の向こうへ行ったかと思うと、お盆に茶道で使うようなお茶碗を載せて戻ってきた。

 制服姿なんだけど、お作法に則っているんだろうか、とても和の雰囲気。摺り足で歩くし、畳の縁は踏まないし。

 その黒髪とあいまって、大名屋敷の奥女中さんのような雰囲気だ。

 
「まあ、これをお上がりなさい。気持ちが落ち着くわ」

 
 前回と違って落ち着いているつもりだったけど、一服いただくと、自分でも分かるほどに呼吸も拍動も、春のお花畑のように穏やかになってきた。

「落ち着かないと、これからの話は理解できないからな」

 労いのつもりなんだろうけど、志村先輩が言うと緊張してしまう。

「は、はひ(*°∀°)」

「ほらぁ、寺井さん緊張しちゃったじゃないの」

「すまん、大事な話だから、慎重に説明しなくてはと思ったんだ。それに、ここは雰囲気が重い」

 もっともだ。うちの学校は古いけど、旧校舎とはいえ、こんな部屋があるのは、そぐわないよ。と云うか怪しいよ。

 無駄に広いのは元々は作法室かなんかだったからなのかもしれない。そうだよね、学校で畳敷きって言えば作法室か、今は使われなくなった宿直室くらいしかありえないし、旧校舎の暗い雰囲気からはかけ離れてる。おとぎ話とかで、洞窟の奥を進んだら桃源郷に出くわした的な怪しさ。でも、それを口にしたら全部台無しになるような危うさ。そんな感じ。

「これを見てくれるかしら」

 志村先輩が上段の間を示すと、掛け軸があったところが大型のモニターに替わっていて、どこかアジアの大都市を映している。

「大きな三つ子ビルがあるでしょ」

「あ、ニュースで見たことがあります。東アジア最大のビルとかで、屋上がプールになっていて三つを繋いでいるんですよね」

「ああ、先月から右側のビルが立ち入り禁止になってる」

「え、そうなんですか?」

「ええ、傾き始めているの、いずれ、他の二つも使われなくなるわ」

「そうなんですか?」

「日本の他に三つの国の建設会社が入って出来たビルなんだが、技術の差や手抜き工事のために完成直後から傾き始めてな」

「これを見て」

 中臣先輩が手を動かすと、屋上のプールが3Dの大写しになった。

「あ、あれ?」

 プールの水は片側に寄ってしまって、反対側ではプールの底が露出している。

「東側のビルが沈下し始めてプールが傾いているの」

「主に、某国の手抜きが原因なんだが、いくら他の部分が良くできていても、こういうダメな部分があると、使い物にならなくなる」

「三カ月後には、こうなるわ」

 音は押えられていたけど、東側が崩れ始め、それに連れて他の二つも崩壊し始めた。

 うわ!

 3Dの画像なんだけど、崩壊の風圧が感じられ、中臣先輩の髪を乱暴にかきまわし、先輩は幽霊のようなザンバラ髪になってしまった。

「あ、髪の毛食べちゃった」

「トレードマークなんだろうが、美空は影響を受けやすい。切るかまとめるかしたほうが良くないか?」

「だ、大丈夫よ……さあ、話はここからです……あ、あ~、ペッ、髪が……こんどは絡んで……」

「やっぱ、切ろう」

「あ、いや、それは……」

「覚悟しろ!」

「と、時美さん、それは無体です!」

 志村先輩が中臣先輩を追いかけて、不思議な説明は中断してしまった(^_^;)。

 いったい、なんなんだろうね、ここは?

 

☆ 主な登場人物

  •  寺井光子  二年生
  •  二宮冴子  二年生、不幸な事故で光子に殺される
  •  中臣美空  三年生、セミロングの『かの世部』部長
  •  志村時美  三年生、ポニテの『かの世部』副部長
  •  

 

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