大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 107『ご飯会』

2023-02-09 17:31:21 | ノベル2

ら 信長転生記

107『ご飯会』信長 

 

 

 リビングが盛り上がっている。

 

 転生学園の乙女生徒会長が、持ち前の明るさでもてなしてくれたのが、よほど嬉しかったと見える。

 茶姫の喜びは市の喜び。市が喜んでいれば……まあ、俺もまんざらではない。

 学園では皿鉢料理でもてなしてもらったというので、今日は、そのお返しのご飯会だ。

「満漢全席でもてなしたい!」

 茶姫は、見かけよりも逞しい腕に力こぶをつくった。

「気持ちは分かるがな、うちのリビングでは、料理の半分も並べられんぞ」

 そう言うと、しみじみとリビングを見渡して「満漢十席ぐらいにしておこうか」と、それでも朝早くから市とキッチンに立って、「これで十席か!?」と驚くほどの料理を並べた。

 俺も久々に食欲と意欲が湧いて、料理に見合った器のあれこれが浮かんでくる。

「それって、ぜんぶ現世に置いてきたやつでしょ!」

 市に怒られる。

「しかしなあ、こんなに旨そうな料理を百均の器に盛るというのか?」

「あ、百均バカにしたなあ! っていうか、あんた、百均だったの知ってたの?」

「これでも、天下の織田信長だ!」

「仕方ないでしょ、あんた、すぐにお茶碗握りつぶしたりたたき割ったりするじゃない『是非に及ばず!』とか叫んでさ」

「それはデフォルトだ! お約束の決めポーズだ! 是非に及ばなかったら、次の展開に結びつかんだろーが!」

「それにさあ、三国志からこっち、わたしも疲れちゃってさ、創立記念の休校日にビルトインの食洗器付けちゃったのよ」

「しょ、食洗器だと!?」

「だって、あんた、お酒も飲まないのにご飯食べるの時間かかるでしょ。洗い物大変なのよ。お風呂あがったら、もう水仕事なんかしたくないしい」

「この横着者め! 食洗器は食器が痛むんだぞ!」

「だーかーらー百均なの!」

「だいたい、洗いものをかって出たのは市のほうだろーが」

「それは、お料理作んのは苦手だしぃ……いや、だから、それも含めて、今度は茶姫といっしょに作るからあ」

「だから、せめて食器をだなあ」

「食洗器」

「グヌヌ」

 

 まあまあまあ(^_^;)

 

 あっちゃん(熱田大神)が仲裁に入ってくれた。

「じゃあ、一晩だけ前世の食器貸してあげるからあ」

「え、食器を?」

「わたし、神さまだから」

 考えてみれば、茶姫を出迎えた時も鎧兜をいっぱい出しておったな。

「洗い物は、高校生のご飯会なんだから、みんなで手洗いでいきましょうね」

 

 と、まあ、ご飯会は盛り上がった。

 

 信玄と謙信は、高校生のご飯会だというのに、酒樽を持ち込んで飲みっぱなし。

 武蔵は、料理が取りにくい(満漢十席でも、リビングいっぱい)ので、紐をつけた小柄で料理を引き寄せて喝采を受ける。

 宗易はニコニコと聞き役にまわり、織部は、予想通り器の美しさにため息ばかりついている。

 孫市は鉄砲と日の丸の扇子を取り出して、雑賀鉄砲衆の囃し歌。元は、むくつけき男どもの戯れ歌、それを美少女になった自覚もへったくれもなしにやるもんだから、危ないやら面白いやら。ただ、興がのる度に鉄砲をぶっ放すのには困った。

 乙女さんは、盛り上げながらもバランスのとり方は上手いものだ。さすがは龍馬の姉、飲んでも食べても、人をからかっても、慰めても、怒っても、乙女さんの周囲は日の当たったように明るい。さすがは、理事長から学園の経営を任されているだけのことはある。

 それに引き換え、うちの副会長の石田三成は暗い。暗いから無視。三成と光秀をセットにしたら、きっとブラックホールができると思うぞ。

 元康は、生徒会長の今川義元の機嫌ばかりとってやがる。

 その義元は、初めて見るんだが、薄化粧が気持ち悪い。前世と違って、いまは女、それも美少女なんだから化粧ぐらいしてもおかしくはないんだが、頭の中に(今川義元=キモイ!)という公式ができあがっているのだから仕方がない。

 

 さすがに人あたりしたようで、ちょっとだけ自分の部屋に戻る。

 

 最後は―― 人間五十年~ 下天の内に比べれば~ ――と敦盛の一指し舞って締めくくってやらねばならない。

 コンディションを整えておかねばな。

 

 フト思った。今回の三国志探索は不首尾に終わっている。

 型通りの報告は生徒会にあげてあるが……いいのか?

 今川義元と石田三成だぞ……それに、このご飯会、それぞれの個性が出ていて面白くはある。

 茶姫もみんなの善意に応えられて嬉しそうにはしている。もし、茶姫が望むなら、一生この扶桑の国で過ごすのもいいだろう。

 でも、三国志という問題は放置したままだ。リュドミラ一人をあちらに残して……いいのか?

 本能寺の前夜ほどでは無いが、将軍足利義昭を放置していた時のようにおさまりが悪い。

 

 トントン

 

 その収まりの悪さをピン止めするかのようにドアがノックされた。

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

宇宙戦艦三笠22[暗黒星団 惑星ろんりねす・2]

2023-02-09 08:51:03 | 真夏ダイアリー

宇宙戦艦

22[暗黒星団 惑星ろんりねす・2]   

 

 

 予想はしていたがスカイツリーは無かった。

 公衆電話がやたらに多く、当然歩きスマホをしている人もいない。ただ、今はほとんど見かけなくなった歩きたばこはそこここに。
 よく見ると、自販機の飲み物が110円。車のデザインとかは良く分からないけど、シートベルトも無いし、なんとなく古臭い感じがした。

「ファッション古い……」

 天音が後部座席で呟いた。

 俺もトシもファッションには疎かったが、渋谷や原宿を通ってもガングロ茶髪にルーズソックスとか腰パンとかは、さすがに古く感じる。日本によく似た外国に来た感じだった。


「いやあ、よく来られましたね。東京を代表して歓迎しますよ」


 鈴木という知事さんだそうで、この人のことはよくわからない。

―― 石原さんの二代前の都知事 ――

 クレアが、三笠のCPに照会してくれたようで、レシーバーにクレアの声がした。

 俺たちには、石原さんより前の知事は、ほとんど歴史上の人物だ。鈴木さんは、見かけはとっつきにくい重役タイプだったが、進んでいろんな話をしてくれた。

 東京に、もう一度オリンピックを誘致したいことを強調していた。24年後に実現しますよ……と言ってみたかったが、なにか過去に干渉するようではばかられた。

 都庁で昼食をごちそうになり、展望台から下界の新宿を見ていた樟葉が耳もとで囁いた。

「街を行く人たち、なんだか変……」

「なにが……」

「5分間隔ぐらいで、同じパターンが……ほら、あの修学旅行の一団、さっきも通ったんだけどね……ほら、あの子またこけた」

「そうなの?」

―― みんな、この星はバーチャルだよ! ――

 クレアが、興奮して言ってきた。

―― 昨日から、この星の主だったことメモリーにしてるんだけどね、人工的なことは信号から人の動きまで、昨日といっしょ。よくできたバーチャルの3DCGみたいなもんだよ…… ――

「ほんとだ、いま飛んでったジェエット機、10分前と機体番号までいっしょだ」

 俺は大胆な行動に出た。

 給仕にきてくれた女の人のスカートを派手にまくってみた!

 なんと、太ももから上は、荒いポリゴンのようにカクカクしていて、真っ黒だった。別に黒いカクカクパンツを穿いているわけじゃない。太ももから上が存在しないのだ。

 そして、その女の人は、何事もなく、そのまま用事を済ますと行ってしまった。

「普通、叫ぶとかするよな……」

 三笠のクルーの疑問は決定的になった。

 そして、あたりの風景が急速にあやふやになり、数秒後には消えてしまった。

 星は荒涼として、荒れた大地が広がっているばかりだった。驚きとやっぱりという気持ちが一度にやってきた。

 三笠のクルーの前に、白いワンピースの少女が現れた。


「ごめんなさい。やっぱり分かってしまったようね」

 

 セミロングの髪を緩い風になぶらせながら詫びる少女。

―― この子はバーチャルじゃないわ ――

「そう、でも人間というわけでもないの」

 え?

「あ、わたしもクレアさんの声聞こえてるから」

 レシーバーもして無いのにクレアの声が聞こえてる。

 不思議に警戒心はおこらなかった。かわいい子だし、なんだか申し訳なさそうな顔してるし。

「あなたは……」

「こうちゃん」

 ちょっと微笑ましい。自分の名前にちゃん付けだ。

「おねえちゃんがいるんだけど、今はくたびれて寝てるから、わたしひとりでお礼を言いに来たの。
わざわざ立ち寄ってくれてありがとう。そして、十分なおもてなしもできなくてごめんなさい」

「そ、そんなことないよ(;'∀')」

 トシがワタワタと手を振る。

 ほんの一瞬だけど、こうちゃんの表情が、いや、顔が変わったような気がした。

―― この星に唯一の生命反応。さっきまであったのは、全てバーチャルよ。あ、裏側にも微弱な生命反応があるわ ――

「それはおねえちゃんです。わたしとおねえちゃんは、この星の星霊なんです。自分で言うのもなんだけど、できのいい星で、がんばれば地球のように生命が生まれていたわ」

 そうだろ、水と大気と適当な気温がある。荒れた半球はともかく、生命どころか人類文明が存在していても不思議じゃない。

「おねえちゃんと二人、いつも地球を見ていて『あんなふうになれたらいいね』と思って……でも、時々大災害とか大戦争とか起こるのを見て、それは、とても怖くって……それで、時どき地球の真似っこして遊んでいたんです……」

 なんだか、臆病な高校生みたいで、ちょっと親近感だ。

「でも、わたしたちが想うほど、地球の人たちはわたしたちには関心が無くて、ずっと見ていてくれたのは中国の天文学者の人だけです」

 ああ、安告正のことだな。

「あ、ああ、ごめんなさい。なんか愚痴っぽくなっちゃって(^_^;)。とにかく、立ち寄ってくれてありがとうございます! また、お帰りの時でも、よかったらお立ち寄りください(≧∇≦)!」

 ポン

 いっしゅん真っ赤な顔になったかと思うと、可愛い煙を残して消えてしまった。

 

 三笠に戻ると、クレアがネコメイドたちを助手にして、せわしなく星の解析をやっていた。


「99.999999%地球と同じ……」

「違いを解析……」 

 ミケメがエンターキーを押そうとしたら、ミカさんが現れた。

「止しましょう、あんなに恥ずかしがり屋さんなんだから」

「ああ、それがいいと思う」

 俺が声を掛けると、みんなビックリしたように振り返った。どこまで熱中してるんだ(^_^;)

「あら、お帰りなさい」「「「「お帰りなさいませ!」」」」

「わたしたち、お夕飯の用意をいたします!」

 ピュー

 ネコメイドたちは逃げるように行ってしまう。

「さっき、お礼を言ってた時、こうちゃんの顔が一瞬だけ妹の顔になったような気がした」

「そうか……」「そうなんだ……」「…………」
 
 天音と樟葉がしみじみし、ウレシコワは黙って微笑んだ。

「あ、星の表側からメール!」

 クレアがメインモニターを切り替えると、お袋が高校生の頃に書いていたような丸文字が現れた。

―― ありがとうございました、今度はお目にかかれればと思います。あん(こうちゃんの姉)――

 名前の由来に思い当たり、みんなでクスクス笑って三笠は発進した。


 みかさんは、星に『ろんりねす』と名付けてやった。

 


☆ 主な登場人物

 修一(東郷修一)    横須賀国際高校二年 艦長
 樟葉(秋野樟葉)    横須賀国際高校二年 航海長
 天音(山本天音)    横須賀国際高校二年 砲術長
 トシ(秋山昭利)    横須賀国際高校一年 機関長
 ミカさん(神さま)   戦艦三笠の船霊
 メイドさんたち     シロメ クロメ チャメ ミケメ
 テキサスジェーン    戦艦テキサスの船霊
 クレア         ボイジャーが擬人化したもの
 ウレシコワ       遼寧=ワリヤーグの船霊
 こうちゃん       ろんりねすの星霊

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

RE・かの世界この世界:004『二日前・1』

2023-02-09 07:23:24 | 時かける少女

RE・

004『二日前・1』   

 

 

 電話一本するだけでいい。

 眩しい……思わずつぶった目を開くと、「また徹夜……」お母さんが部屋の電気を点けたところだ。めったに完結しない小説のプロット書いているうちに寝落ちしたんだ。

 ブリュンヒルデのキャラ決定で揺れていたんだ。姫騎士属性だけじゃつまらない、くだけすぎたら、ただのドタバタのギャグラノベ。いっそブリュンヒルデの子ども時代から書き起こして、姫騎士としての自覚が生まれる中でキャラが変わっていく……でも大河ドラマになっちゃうし……一人称は「わたし」? いや「自分」? 「姫」? ブリュンヒルデ……ちょっと長い。縮めて「ブリュ」?「ヒルデ」? 旅をさせよう、お供はトール……トールと言えばミョルニルハンマー……あ、ヒルデに持たせたら可愛いかも……そうだ、ハンマーじゃ普通だからトンカチと呼ばせよう! うん、ちょっとトンカチなキャラ、「ヒルデのトンカチぃ!」……可愛いけど、トンカチ少女……ちょっとバカっぽい。

 わたしも冴子も部活で群れたりはしないけど、ラノベが好き。今は、投稿サイトで腕を磨いてる。大学に入ったらサークルに入って同人誌作るつもり。オタクはいいけど腐女子はごめん。そっちには行かない。高校の間は帰宅部で知見と普通女子の属性を高める。だから、昼間は普通に夜はドップリの双極性を心がける。双極性って、躁うつ病に使う言葉だ……ああ、まだまだボキャ貧だ。勉強しよう!

 冴子は和風だ。記紀神話から大正浪漫まで守備範囲は広い。ジャンルが被らないので、お互いをリスペクトできるし、評論しあっても、へたに傷つけあうことも無くていい。

 

 あ……ええ!?

 

 パソコンの右下を見て日付が二日もどったと分かって狼狽える。

 だって、あの時、ああしておけばよかったという後悔はしょっちゅうだけど、実際に戻れることなんてありえない。

 ……かの世部のことは本当?。

 胸から顎にかけての傷も消えていた。ブチギレた冴子の爪にひっかけられて、制服のブラウスを血に染めた傷が。

 テレビは日曜朝のワイドショーをやっている。なんでもかんでも総理大臣のせいにする野党の国対委員長が七面鳥を思わせる表情で与党を批判している。

 でも、明日には野党議員が文科省高級官僚の娘の不正入学に関与していたことが公になって、釈明に追われることになる。

 アジア某国のダムが決壊寸前……これも、明日には決壊して犠牲者が出る。

 日本とK国と某国の合同事業で、それぞれの国の威信をかけたプロジェクト。それが完成寸前の豪雨によってあっさり決壊。

 某国政府とK国は『決壊にいたることはありえない』と発表しているが、日本の企業は沈黙を持って暗に警告している。

 
 一瞬頭をよぎる。

 
 これは壮大なドッキリで、テレビに流れているのは録画したもの。

 だって、時間を巻き戻して有ったことを無かったことにするなんてあり得ない。

 学校で起こった忌まわしいことは、全て暗示をかけられたりして思いこまされているだけなんじゃないか。

 
 以前アイドルグループの番組でこんなのがあった。

 
 体験コーナーで高校の授業を受けさせられたアイドルが――1+1はいくら?――と先生に質問され「2です」と答えて――ええ!?――と、驚かれたり不思議がられたりするというもの。スタッフやスタジオ見学のオーディエンスまでもが――ええ?――という表情になり、1+1=1が正しいと言い出すんだ。

 つまり大掛かりにやられると、常識では考えられないことでも信じてしまうということなんだ。

 テレビを操作して録画を流すなんて、そんなに難しいことじゃない。

 すると、かすかに爆音がして、上空からアナウンスが聞こえてきた。

―― ……本日新装開店のスーパーワンダイでございます、店舗改装のためお休みを頂いておりましたが、本日よりの新装開店。開店セールの特売といたしまして…… ――

 今時めずらしい宣伝飛行だったので鮮明に覚えている。

 それで、家を出るのをニ十分早めてワンダイでお弁当を買っていったんだ。

 ドッキリの為に飛行機までは飛ばさないだろう……いや、今どきの放送局ならそれくらいは。

 どっちつかずのまま、わたしは駅前へ急いだ。

 まさか新装開店のやり直しまではやらないだろう。中学のブラスバンドまで呼んで、紅白の幕に薬玉、それに、あのオバチャンたちの行列……

 ドーーーン! パチパチパチ!

 花火が爆ぜる音がして、通りの向こうに花火の爆炎が三つ四つと花開き、キンキラキンの花吹雪にたくさんのミニパラシュート……その二つが屋上看板のマスコットの鼻の下に引っかかり、鼻血みたいになった。まさか、それまでは再現できないだろう……いや、キチンと鼻血になった!

 パラシュートは五色あって、そのうちの赤が同じように引っかかるなんてあり得ないだろう。

 店の前は同じようにオバチャンたちの大行列。

 開店の薬玉が割られ、ファンファーレと共にワンダイが新装開店した。

 まだ、どこか半信半疑のわたしは行列に近づく。

 オバチャンパワーは凄い! あれよあれよの間に列に組み込まれ「おねーーちゃんも!」と、前のオバサンがカゴを渡してくれる。一昨日と同じだ……冷凍食品のところでは「ねえ、あのウィンナーとってよ!」、オバチャンに言われて、完全に二日前の流れになってしまう。

 そして、一昨日同様にお弁当用にお握りやお惣菜を買ってしまう。

「そうだ、電話して断らなきゃ」

 スマホを出して、夏祭り実行委員会青年部長さんに電話する……いや、電話じゃ押し切られたら断れない。

 メールにしよう。

―― 急用で行けなくなりました。申し訳ありません ――

 よし、これで行かなくて済む。

 したがって、ヤックンの告白を受けることもなく、ヤックンを想っていた冴子を狂わせることもない……。

 

☆ 主な登場人物

  •  寺井光子  二年生
  •  二宮冴子  二年生、不幸な事故で光子に殺される
  •  中臣美空  三年生、セミロングの『かの世部』部長
  •  志村時美  三年生、ポニテの『かの世部』副部長
  •  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする